2014年04月号掲載 | 文・写真/小杉晶子
涼しい気候のノースウエストで日本の野菜が育つの?
苗はどこで手に入れるの?種は買えるの?
この春、挑戦してみませんか?
▲野沢菜は4月に種まき。5月6月とどんどん大きく成長します
もったいない
「少ししかいらないんだけど、ちょっと高いなぁ」とスーパーの野菜売り場で日本の野菜を買うのを躊躇したことはありませんか?
最近は、アジア系スーパーも充実してきて、手頃な値段でアジア野菜が手に入るようになりましたが、まだまだ他の野菜に比べると日本の野菜はちょっと高いですよね。
青ジソ、ミョウガ、ネギ、ミツバにフキ、毎日食べないけど、ちょっと使いたいものばかりです。そんな日本の野菜を自分で育ててみましょう。
気候、日当り、そして土
ノースウエスト(ここでは、オレゴン・ワシントンの州西部を示す)は、日本に比べて日照時間が少なく、夏は気温があまり上がらず、降水量も少ない気候です。トマトを育てても、なんとか9月頃に色づき出すという、日本で育つ野菜が栽培しにくい環境になっています。
大きな木で日中日陰が多い、という家も少なくありません。野菜や果物を栽培したければ、まず庭で一番日当たりのいい場所を選んでください。なんといっても日当たりです。大きく茂りすぎた樹木や低木をせん定して、日当たりを作ることも必要になってくるかもしれません。
そして、必ずいい土を入れること。園芸店などで袋売りされている「ガーデンソイル」が手頃ですが、ヤード単位で売られている土だと、かなり安く手に入ります。
NWに合う日本野菜
ホームセンターで売られている種に、必ず水菜があります。低温でよく育つ野菜です。発芽しやすく、適度に雨の多いこの地域にはぴったりの野菜です。若い葉を摘んでそのまま口に入れると自然の甘いおいしさが味わえます。半日陰であれば、夏も育てられますし、意外に霜や雪にも強く、前年、自然に落ちたこぼれ種で翌年に芽吹きます。虫も付きにくく、初心者の方はまず試してみてください。菊菜、小松菜も同じような栽培方法です。小松菜は虫が付きやすいので気をつけて
野沢菜
「あ~野沢菜漬けが食べたい!」と昨年ふと思いました。
すると、なんと、近所の園芸店で種を見つけました。アブラナ科なので育てやすそうです。野沢菜は日本でも寒冷地長野県などで栽培されるので、シアトルの気候に合いそうだと思いました。4月に室内で種まき。5月に畑へ移植。すると、育つ育つ。野沢菜は60度前後が好きなようです。この時期は適当に雨も降りますしね。6月に50センチぐらいの大きさに育った野沢菜を収穫。
干して塩と昆布で漬け、おいしい野沢菜漬けができました。みなさまもお試しを。
自然薯
とろろ汁が大好きな私です。しかし、長芋はスーパーでも値段が高いですね。
ある日、知り合いから自然薯の種イモを入手しました。15センチほどの細い種イモを深さ70センチほどの大きな植木鉢で育てることにしました。地植えすると収穫時に掘るのがとても大変なので、ゴミ箱などを大きなプランターとして利用して育てるのがいいように思います。
植えてから3年目の秋。やっとすりおろして食べられる大きさになりました。手入れはほとんどしませんでした。最初にいい土を入れてやって、夏に乾いたら水やり。自然薯の種イモは手に入りにくいですが、市販の長芋をスライスして乾燥させ、うまく発芽させて育てている方もいましたよ。
増えるミツバに要注意
ミツバは栽培が簡単なので種から育てられますが、繁殖力が非常に強いので、囲い無しの地植えにしてしまうと、どこまでも広がって育っていきます。
これは、フキ、ヨモギ、ミョウガも同じなので、プランターなどで育てることをおすすめします。数年すると雑草化することもありえるので気をつけてください。
サンショウの木
ときどき、園芸店などで「Japanese Pepper」としてサンショウの木が売られています。サンショウは雌雄異株で雄木と雌木に分かれているので、1本だけではなく、2、3本まとめて買うことをおすすめします。恐らく、園芸店などでは、雄株と雌株の見分けが難しいので一つの種類として売られているので、実がなるのは運によるかと思います。
気をつけたいこと
ひとつ頭に置いてもらいたいことがあります。シアトルの雑木林や公園に行くとJapanese Knotweed(日本名イタドリ)がよく生えています。昔、園芸種として売られていたものが、野生化したもので、繁殖力が強く、キング郡ではシアトルの自生種を脅かす「害草」に指定されています。栽培は処罰の対象になりませんが、敷地外に広がる可能性が高いので、地植えはやめましょう。
▲水菜。4月から6月までどんどん育ち手入れもほとんど要りません
▲自然薯は葉が枯れる11月に収穫。プランターは掘らなくていいので楽です
▲Kitazawa Seed Company(手前2つ)と、Botanical Interests(後ろ)の種。シアトルの園芸店にも置いてあります
▲野沢菜漬け
▲野沢菜は、干してから野沢菜漬けにしました。野菜炒めなどにしてもおいしいそうです
▲5月に入るとそろそろ豆類の準備。インゲン用にポールを作ります
■Kitazawa Seed Company
日本やアジアの野菜の種を中心に扱う会社です。通信販売もしています。
www.kitazawaseed.com
■Botanical Interests
花、ハーブ、野菜の種を扱う会社。枝豆、シソ、水菜の種なども販売しています。通信販売もしています。
https://botanicalinterests.com
■Growing Food in the city
シアトル市のウェブサイト。この地域・気候に合った野菜を紹介しています。
www.seattle.gov/util/groups/public/@spu/@conservation/documents/webcontent/02_013331.pdf
(2014年4月)
Akiko Kosugi Phillips サウス・シアトル・コミュニティー・カレッジで園芸学の学位を取得。シアトル日本庭園でのインターンシップ、エドモンズ市の公園課での職務を経て、現在は、小杉剪定サービスとして個人の庭やSeaTac Botanical Gardenなどの日本庭園の手入れを行うビジネス・オーナー。年に2回ほど当ページの執筆を務める。 |
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