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2時間で太陽が拝める、簡単ハイキング!

アメリカ・ノースウエスト自然探訪
2014年11月号掲載 | 文・写真/小杉晶子

ノースウエスト名物、濃霧。
11月になると本格的に霧や雨が発生し出し、
鬱々とした気分になってきますね。
お天気のタイミングを狙って下界を離れ、
輝かしい太陽を目指して雲の上へ行ってみませんか

ラトルスネーク・湖が一望できる尾根
▲湖が一望できる尾根。霧の上で太陽の光をたくさん浴びます

暗い朝

冬時間に変わって、少しだけ朝が明るくなった…と言ってもまだ暗い。ノースウエストには、欠かせない朝の霧の発生です。時折、霧が街中を停滞し、一日中霧の中という日も珍しくありません。せっかくの週末も霧の中だと気分もなかなか晴れませんよね。そんなとき、夫が「太陽を見に行こう!」と言い出しました。なんでも2時間山登りするだけで、雲の上に上がれるそうです。
 
2時間で雲の上まで行けるなんて信じられません。まぁ、雨は降ってないし、マツタケやシャントレルが見つかるかもなんて期待も込めて、深い霧のI-90を東に車を飛ばしました。

広いアウトドア施設

シアトルからI-90に乗って約1時間半。ラトルスネーク・レイク(Rattlesnake Lake)というきれいに整備された湖に出ます。大きな駐車場があり、湖近辺のトレッキングも楽しめ、小さい子どもを持つ家族連れに人気の場所でもあります。私たちが目指すのは、ラトルスネーク・リッジという湖が一望できる尾根です。湖から尾根を目指すハイキングコースに入ります。ゆっくりした上り坂が2時間ぐらい続きますが、6歳以上ぐらいの子どもであれば尾根まで上がっていくことができるでしょう。細い山道には、自生種であるバイン・メープル(Vine Maple)が優しい黄色に色づいて、晩秋の訪ずれを感じます。ここは、シアトルとは少し気候が違い、太平洋から湿った空気が直接山にぶつかって雨を多く降らせる地域なので、ツガのような針葉樹が多く育っています。ツガの多い所はマツタケが生えやすいと聞いたことがあったので、ついつい歩きながらキノコをチェックしてしまいました。

ゆっくりハイキング

だんだん息が上がってきます。歩いては休み、歩いては休みのゆっくりハイキングです。その間も、深い霧の中をはぁはぁ言いながら「本当に太陽が見れるの?」と疑いつつの山道です。1時間半ぐらいふぅふぅと歩くと、少しずつ森の周りが明るくなってきていることに気がつきました。「霧の上にやってきたのかしら?」と疲れた体も軽くなってきます。木々の間から、青い空が望めるようになってきました。上から降りてくる人に「もうちょっとよ、頑張って。素晴らしい景色が待ってるわよ」と声をかけられ、口元が緩みます。
 
それからヨイショヨイショと30分ぐらい上がると、人の笑い声が聞こえてきました。細い道を抜け、大きな岩を上がると、「わぁぁぁぁー」と大声を上げてしまいました!真っ白な雲海の上に真っ青な空とキラキラ輝く太陽が周辺の木々を照らします。

天国に近い岩?

「なんて素敵な景色なんでしょう!」と言っても真っ白い雲海が下界に広がっているだけです。遠くには延々と深い緑が広がる、カスケードの山々。しかし 、何日も薄暗いお天気の中で生活していた者にとって、この暖かく明るい太陽の下にいることが、とても幸せに感じます。「太陽っていいねぇー」と周りのみんなと口をそろえて言い合い、どっと笑いました。これは、きっと日照時間が少ないノースウエストに住む者にしか分からない太陽のありがたさですよね。尾根は大きな岩の重なる場所になっていて、大勢が長居できるような所ではありません。人の行き交いが多い所です。お昼ご飯は、違う場所で食べた方がいいかもしれませんね。
 
それでも、腰を下ろして、スナックを頬張っていると、ラトルスネーク・リッジ名物「くれくれリス」がやってきます。人懐っこいシマリスが膝の上に乗ってきて、「ピーナツくれくれ」と催促します。かわいいけど、野生動物にはエサをやらないようにしましょうね。さて、しつこいシマリスを追っ払い、早くも下山です。なぜなら、もうお腹がペコペコだからです。来た山道を今度は転がるように下ります。1時間ぐらいでさっさと駐車場に着いてしまいました。
 
足早に車に乗り込み、あらかじめ決めていたお昼ごはん場所、イサクワの有名なハンバーガー屋さん「XXX Rootbeer Drive-in」へ車を進めます。巨大ジョッキにアイスクリーム入りのルートビアが有名ですが、私は巨大ハンバーガーを注文。いかにもアメリカらしいごちゃごちゃした店内が魅力的です。人気のお店で、多少並びますが、食べごたえがあるので、ぜひ試してみてください。あれだけ、汗水出して山を歩いて消費したエネルギーは、きっと巨大ハンバーガーのカロリーが全て補ってくれたことでしょう。
 
ラトルスネーク・リッジは人気ハイキングコースなので、朝早くに行くのがおすすめです。昼から午後になると小さな展望できる岩は大混雑となり、ゆっくりできないことが予想されます。朝8時ぐらいにコースをスタートさせるといいでしょう。

 

ラトルスネーク・
▲ノースウエストのモミジ・バインメープル
子どもの顔ほどの大きなハンバーガーにびっくり
▲子どもの顔ほどの大きなハンバーガーにびっくり
ラトルスネーク・リッジ/湖のすぐ横からハイキングコースへ入れます
▲湖のすぐ横からハイキングコースへ入れます
名物シマリス。膝に乗ってきますよ
▲名物シマリス。膝に乗ってきますよ


ラトルスネーク・リッジ
▲ 素晴らしい眺めに、腰を下ろして休憩
ラトルスネーク・リッジ
▲ 1時間半ぐらいすると霧が晴れてきました

Information

■ラトルスネーク・リッジ
お天気のよい日は美しい湖が一望できます。深い霧が街に停滞するお天気を狙って、霧の上へ遊びに行くと、また違った楽しみ方もできます
www.wta.org/go-hiking/hikes/rattle-snake-ledge

■ラトルスネーク・レクリエーション・エリア
ラトルスネーク・レイク周辺の情報はこちら
www.seattle.gov/util/EnvironmentConservation/Education/CedarRiverWatershed/RattlesnakeLake/index.htm

■トリプルXルートビア・ドライブイン
1950年代をイメージした有名なハンバーガーショップです。週末はお店の前の駐車場でクラシックカーのイベントなども開催されます
www.triplexrootbeer.com

(2014年11月)

Akiko Kosugi Phillips
サウス・シアトル・コミュニティー・カレッジで園芸学の学位を取得。シアトル日本庭園でのインターンシップ、エドモンズ市の公園課での職務を経て、現在は、小杉剪定サービスとして個人の庭やSeaTac Botanical Gardenなどの日本庭園の手入れを行うビジネス・オーナー。年に2回ほど当ページの執筆を務める。