シアトルの生活情報&おすすめ観光情報

子供たちと楽しむキャンプ

ノースウエスト自然探訪
2002年08月号掲載 | 文・写真/小杉礼一郎

豊かな自然に囲まれた美しいパシフィック・ノースウエスト。地元在住のアウトドア・エキスパートが、ノースウエストの自然を堪能できる真の見どころへ案内してくれる。連載第2回目は、子供と行くキャンプの楽しみ方を紹介しよう。おすすめキャンプ場情報もお見逃しなく!

「子供たちに、もっといろんな所を見せておくんだったな」
日本へ帰国することが決まった友人のOさんが、帰国前にそう言っていた。Oさん一家に「オレゴンの思い出になるキャンプを体験してもらいたい」と思い、私たちがOさん一家を内陸のキャニオン湖畔にあるキャンプ場、ビリーチヌーク・レイクへ誘ったのは、昨夏のことである。

キャンプに最高なノースウエストの夏。特に子供連れで出掛けるキャンプは格別だ。ゲーム機の氾濫で、今や死語となってしまったかもしれないが、やはり子供たちは“遊びの天才”である。子供たちはキャンプ場に着くや、徒党を組んで“たんけん”に出掛ける。がけや木によじ登り、アリ塚やヤモリを見つけてきたかと思えば、今度は自転車で走り廻る。

キャンプ・サイトには、動物たちもやって来る。リス、プレイリー・ドッグ、ラクーン、エルク……。子供たちは、そばに寄ってきた鹿におずおずと話し掛ける。

キャンプでは、子供たちも大人の手伝いをする。手伝いを通して、子供たちはいろんな発見をする。水を汲みに行って初めて知る湧き水の冷たさ、5ガロンの水がどれだけ重いかということ、そして、その水のおいしさ。汲んだ水を持ってサイトに戻り、家族揃って見上げる大きな夕焼け空の美しさ。

夕焼け空の下で薪木を集めた後は、ワイワイと賑やかな食事が待っている。その後は、お待ちかねのキャンプ・ファイアーだ。「太古から、人はなぜに裸火に集まってくるのだろう?」などと考えながら、火の扱いを子供たちに任せて、お父さんはじっと様子を見守ろう。「幹、枝、薪。炎と煙。炭になり、それから灰……。フーン」

火を見ながら、何やら考えている子供たち。そのあたりで再びお父さんの出番、待ちに待ったマシュマロ焼きだ。

「いいか、“まんべんなく”廻すんだぞ。外はカリッとキツネ色に焦がし、中はトロリと柔らかくな。これがうまいんだ。こらこら、“燃やす”な、“あぶる”んだよ。火に“かざす”んだ」

マシュマロを焼きながら、日本語教室を開いているうちに、ダグラス・ファーの梢の上に天の川が輝き出す。あっちからこっちから星が降ってくる。

焚火にほてった顔、おいしい空気に包まれて食べるキャンプの食事、寝袋の下のデコボコな地面、静まりかえった森の夜、夜明けの寒さ……。キャンプの思い出は五感で刻まれ、何十年経とうと草いきれや焚火の匂いで鮮やかに蘇える。多様な自然に囲まれたノースウエストと同様、この夏、子供たちがキャンプを通して体験することも様々なはずだ。そして折にふれて、子供たちは思い出すだろう。パシフィック・ノースウエストの山や森のこと、そこで体験したこと、そして、そんなノースウエストに住んでいたということを。

photo


Information

■おすすめのキャンプ場
米北西部は世界中で一番と言ってもいいほど素晴らしいキャンプ場(以下CG)の宝庫だ。それぞれに魅力があり選ぶには忍びないが、隊長のおすすめは以下の通り。

  • ワシントン州
    • Olympic National Parkの「Hoh Rain Forest」
      世界遺産の温帯雨林
    • North Cascade National ParkのCG
      深い原生林の中に40カ所近いCGがあり、ボート・アクセスのみ可能のCGが5カ所
    • Lake Roosevelt
      湖の周囲に20カ所、グループ・サイトが5カ所
    • Long Beach State Park
      今年はすでに過ぎてしまったが、独立記念日の花火は見もの
  • オレゴン州
    • Diamond Lake
      ナショナル・フォレストだが、Crater Lake National Parkへ行く際の拠点
    • Billy Chinook Lake
      Cove Palisades State Park内のキャニオンの底にあるキャンプ場
    • Oregon Coast
      南北500キロの海岸に50カ所近くCGがある。
      中でも「Beverly Beach State Park」は海岸にありながら森が深く快適
    • Eastern Oregon
      Wallowa Lake State Park内、Wallowa Mts. の山懐。湖畔のCG

■キャンプ場の設備
テント・サイト、キャビン、YURT(キャビンとテントの中間)、ティーピーをはじめ、ピクニック・テーブル、ファイヤー・ピットは通常各テントサイトに常設されている。「Hook-Up Site」では電気、水のアウトレットがある。シャワー、トイレ、水道、電話、ファイヤー・ウッドもある。プレイ・グラウンド、野外ステージ、集会場では、各種の自然解説(Interpretation Program)や小音楽会、映画の上映などがある場合も。スーパーマーケット、ランドリー、温水プール、郵便局、ガススタンドなどを完備した大きなキャンプ場もある。

■キャンプ場でのアクティビティ
トレイル・ウォーク、釣、スイミング、ボート、カヤック(川、湖、海)、絵画や写真撮影、サイクリング、ディスクゴルフ、史跡、乗馬、星を見るなど。遊び道具をたくさん持参するのもいいが、ときにはテント、寝袋、マッチだけで出かけるのもひとつの楽しみ方。

■キャンプ料理
手抜き料理が基本形。たとえば家の炊飯器でご飯を炊いて持参し、デリのサラダ、フライド・チキンでも、空気のおいしさをおかずに食が進むのがキャンプ。柔軟に考えれば手抜きの方法はいろいろある。

■ヒント

  1. キャンプに関するサイトなどを事前に参照する。
  2. 百聞は一見にしかず。キャンプを知る一番の方法は「一度行ってみること」。一度下見するのもいい。
  3. 同じキャンプ・サイトで2泊以上泊まる。中日にゆっくりできる。
  4. 天気が崩れるときには出掛けない。途中で崩れたときはモーテルやロッジに移る。
  5. キャンプ場で分からないことは、キャンプ・ホストに聞くこと。
  6. 折り畳み式の椅子、火吹き竹、うちわ、サンダル、キャノピーなどを持っていくと便利。

■問い合わせ先と参考サイト

Reiichiro Kosugi

1954年、富山県生まれ。学生時代から世界中の山に登り、1977年には日本山岳協会K2登山隊に参加。商社勤務を経て1988年よりオレゴン州在住。アメリカ北西部の自然を紹介する「エコ・キャラバン」を主宰。北米の国立公園や自然公園を中心とするエコ・ツアーや、トレイル・ウォーク、キャンプを基本とするネイチャー・ツアーを提唱している。