※このページは、2003年シーズンのシアトル・マリナーズについて、2003年5月から10月にかけてのシーズン中に作成・掲載された記事を基に再編集したものです。
現在、日本で取材活動をしているが、マリナーズ絡みの大きなニュースは2本。このオフ、西武ライオンズからFA宣言した松井稼頭央内野手の行方とマリナーズの日本開幕戦。シアトルのマリナーズ・ファンにとっても気になる部分だと思うので、今月はその2つのトピックスについて触れていきたい。(取材・文/丹羽政善) | |||||||||||||
もうひとりの松井、マリナーズ入りは? まず、松井。マリナーズは相当アプローチをかけているのだが、この原稿を書いている11月17日現在では、メジャー行きか、日本残留かで本人が迷っている状態。札幌で行なわれたオリンピック予選までは「メジャー行き間違いなし」という雰囲気だったが、予選を戦った後、やや心変わり。日本のプロ野球に未練はなくとも、日の丸を背負って国のために戦うこと、つまりオリンピック出場という方向へ、松井の気持ちは急速に傾きつつある。 本来、予選終了後にメジャー挑戦発表、中旬から下旬にかけて、アメリカ視察という流れが予想されていたが、現時点ではまったくタイム・スケジュールが見えていない。しかも最近では、「ひょっとしたら日本残留?」という報道もされるようになってきた。基本線は今でもメジャー挑戦だが、ひょっとしたらひょっとして、一転メジャー断念も選択肢に入ってきてしまったようだ。わずか、数パーセントの可能性だとは思うが……。 資金、ポジション面ではマリナーズ優位と思われていたが、何が欠けていたのかは今のところ読めない。松井がメジャーのチームを決定した時、その理由を語ってくれると思うので、その記者会見を待たねば本当の理由は見えてこないだろう。 いずれにしても、日本残留の可能性も消えない中、松井がマリナーズのユニホームを着るというファンの願いは、遠い現実となりつつある。 マリナーズの日本開幕戦、実現なるか 一方、今年はイラク戦争のおかげでキャンセルされたマリナーズの日本開幕戦が、実現に向けて動き出している。ワールド・シリーズが行なわれている頃には「ほぼ決まり」の報が流れたが、日本サイドが「松井秀喜のいるヤンキースの来日を望んでいる」ということで調整が難航しているようだ。MLBジャパンのジム・スモール氏は「12月初旬に発表できるだろう」と話し「実現した場合、日程は3月30、31日」と具体的な来日スケジュールも教えてくれた。しかしチーム名に関しては「マリナーズを先に」というMLBサイドの思惑と「いや、ヤンキースを先に」という日本サイドの思惑にズレがあり、もう少々調整が必要のようだ。 もっとも、ヤンキースはすでに──おそらく10月中旬だったと思うが──招待を断っているので、もう一度ヤンキースを土俵の上に挙げ、対戦チームとの折衝を行なうとすれば、さらに時間がかかることも予想される。日本サイドがあくまでもヤンキース戦にこだわった場合、日本での開幕戦そのものが消滅する可能性がある。最悪のシナリオだろうが、スプリング・トレーニングの日程調整といった準備や、MLB側がすでに最終決定を当初の11月中旬から12月初旬に延ばしていることから、これ以上ずれ込めば見送りになる可能性もある。 シアトルのファンにしてみれば複雑なところだが、今春のこともあるだけに日本のファンの心中は「どちらでもいいから、見せてくれ!」というところだろう。 マリナーズで決まりなら、2、3日中にアナウンスがあるかもしれない。交渉がもつれるなら、12月中旬まで引っ張っての“断念発表”の線が強い。したがって、ここ数日中の発表がなければ、日本開幕戦実現の可能性は日を追って少なくなっていくとみていい。
|
この号が出た時には、すでにシアトル・マリナーズのプレーオフ進出の可否は決定されているだろう。結果の善し悪しは別として、最後の最後までもつれたシーズン終盤戦の戦いを振り返ってみよう。 (取材・文/丹羽政善) ※本文中のデータはすべて9月18日現在のものです。 | ||||||
また、今年もか…… マリナーズ失速の原因 6月中旬以降……。
きっかけは2本の満塁ホームランにあったのではないか。6月20日の対サンディエゴ・パドレス戦、3対0とリードして9回裏を迎えながら、ジェフ・ネルソン投手がロンデル・ホワイトにまさかのサヨナラ逆転満塁ホームランを浴び、あの日から勝ったり負けたりの試合が続くようになった。さらに29日のパドレス戦でも、9回表まで4点をリードしながら、またもやアーサー・ローズがホワイトに逆転満塁ホームランを浴びた。いずれも完全に勝ちゲーム。鉄壁だったブルペンにも、あの辺りからほころびが目立つようになった。 契約更改、フリー・エージェント…… さて、今テレビの前でプレーしているのは、アスレチックスなのか、マリナーズなのか。最後の望みを捨てたわけではないが、マリナーズ・ブルーのユニホームがダイヤモンドを駆け回っている姿が、どうしても想像しがたい。願わくば、今回書いた内容がまったくの杞憂に終わることを祈りたい。
|
今シーズンも後、残すところ1カ月。プレーオフを現実的に見据えた戦いが繰り広げられるこの期間には、シアトル・マリナーズの1戦1戦の勝敗と共に他チームの動きも大変興味深いところ。今月は、プレーオフに向けてのポイントとライバル・チームとの関係に触れていこう。(取材・文/丹羽政善) ※本文中のデータはすべて8月14日現在のものです。。 | ||||||||||||||||
ゴールが見えてきて…… 「9月は終わりが見えてきて、フォーカスが戻ってくる。しかし、8月は暑さや疲れも出る頃で一番戦いにくい時。この時期をどうやって乗り切るかだ……」
他チームの結果も気になる1カ月 4チームの弱点 プレーオフ進出の明暗を分けるもの |
シアトル・マリナーズの2003年シーズンが早くも後半戦に突入した。 開幕前のさまざまな懸念を払拭した感がある、これまでの好調な戦い振り。そして蓋を開ければリーグ西地区、首位での折り返し。今号は、好調のカギと8月以降の注目点を挙げてみたい。(取材・文/丹羽政善) ※本文中データはすべて7月20日現在のものです。 | ||
予想外(?)の首位折り返し 好調の原動力はこの2人 きつい8月 期待高まる、イチローの首位打者争い 【2003年8月1日号『ゆうマガ』掲載記事】 |
今年もあっという間にこんな時期になった。例年通り、7月31日はトレードのデッドライン。約2週間後に行なわれるオールスター・ゲームが終われば、さまざまな噂がメジャーを飛び交うことだろう。そんな中、シアトル・マリナーズはどんな動きを見せるのか? 「動く動く」と言われた昨年の状況と比べると今年は静かだが、その少ない動きの可能性をまとめてみた。 *本文中データはすべて6月16日現在のものです。(取材・文/丹羽政善) | |||||||||||||||||||||||||||
必要なのは“ファイナル・ピース” 何となく2001年シーズンをほうふつとさせる最近のマリナーズ。116勝はさすがに無理でも、100勝ペースで勝ち進んでいる。6月30日から行なわれるオークランド・アスレチックスとのシリーズに勝ち越せば、プレーオフ出場も現実的に見えてくるのではないかと思う。さて、そうなると多少気は早いかもしれないが、そろそろポストシーズンを見据えたマリナーズの動きにも注目だ。つまりは補強である。 2年前、ルー・ピネラ前監督は「プレーオフには絶対に必要になる!」と、パワー・ヒッターの獲得をフロントに要請したが、あの時は選手から不要論が出て動けなかった。結果は、プレーオフでヤンキースに敗れている。昨年も同じくピネラ前監督はパワー・ヒッターの獲得を要請したが、フロントに断られた。8月、攻撃力が落ち込んだ時、ピネラ前監督は荒れて、フロントの補強失敗を度々口にした。ピネラ前監督の退団は、そうしたことも要因になっている。そんな過去2年のいきさつがあるだけに、今年の補強の動きはより関心を集めるかもしれない。 通常、7月31日までのトレード・デッドラインまでに獲得する選手のことを「レンタル・プレーヤー」もしくは「ファイナル・ピース」と呼ぶことがある。来年以降チームに残るかどうか分からないが、プレーオフで必要になるであろう、その時点の弱点だけに絞った補強を意味し、多くの場合、経験豊富なベテランの力に頼ることが多い。現時点ではマリナーズに大きな穴はないだけに、主力を放出してまで新戦力を獲得する必要はなく、必要なのは、やはりそうした「ファイナル・ピース」的存在。例えば、プレーオフ出場経験豊かなベテラン、先発ローテーションの保険となるような投手なのかもしれない。 補強候補はこの3人か? ただし、彼らの状況については地元紙でも紹介されていたが、獲得の可能性が少ないことをボブ・メルヴィン監督が明言している。 フィンリーについては、マリナーズが興味を示していると全国紙でも伝えられたが、チームの選手予算がすでにないことから、高額サラリーを要求するであろうフィンリーも見送りの公算が高いという。シアトルのローカル・メディアも、今年の補強予測についてはほぼ口を揃える。 そんな中、マリナーズはボストン・レッドソックスからマット・ホワイト投手をトレードで獲得。ブルペンにアーサー・ローズしかサウスポーがいないことを受けての補強だが、彼がいわゆるファイナル・ピースなのかどうかと問われれば、難しいところだ。しかし、これが最初で最後の動きになることは十分予想できる。 他チームは?
7月15日にシカゴ・ホワイトソックスの本拠地、U.S.セルラー・フィールドで開催される、第74回MLBオールスター・ゲーム。マリナーズの選手達や今年ヤンキース入りした松井秀喜外野手が選ばれるかどうかは、おおいに気になるところ。「大どんでん返しはないはず」という確信のもと、行方を予想。(文/丹羽政善) 投票の途中結果 ■ファースト
■セカンド
■サード
■ショート
■捕手
■外野手
■指名打者
【2003年7月『YOUマガ』掲載記事】 |
予想に反して(?)マリナーズが好調なスタートを切った。決定力、先発ローテーションのコマ不足等、シーズン前はずいぶん地元紙にも指摘されたが、今、その声はなりを潜める。そのマリナーズ快進撃の要素は何なのか? また、この力は本物なのか? テーマごとにシーズン前の懸念と比較しながら、今月は話を進めていきたい。 ※本文中データはすべて5月14日現在のものです。(取材・文/丹羽政善) | ||
ヤンキース戦だぞ!? さあ、ポイントを絞って検証……。いや、その前にちょっと脱線。5月6日から行われたヤンキース3連戦。最初の2試合に行った人は驚いたと思う。観客席が埋まっていなかったことに。最終戦こそ売り切れたが、最初の2試合はソールド・アウトしなかった。プレスボックスからも特に空席が目立った2階ライトスタンドを見上げながら、議論が起きていた。 「ヤンキース戦だぞ」 「松井も来てるんだぞ」 話題には事欠かないはずだったのに、なぜこんなことが起きたのか? 『シアトル・タイムズ』紙のスポーツ・コラムニスト、スティーブ・ケリーはあるひとつの理由を挙げた。 マリナーズのゲームの平均チケット・プライスは、約$20。家族4人で行くとしたら合計$80。これに当日の食事代、駐車場代などが加算されれば、1日で約$150ドル前後の出費となる。どうだろう、高いといえば確かに高いかも。しかし、今のチーム状態と地区のトップ争いをしている状況を考えれば、昨年、一昨年同様、連日のようにチケットが売り切れていてもおかしくないとは思うのだが。対照的にマリナーズのゲームを放送しているFOXスポーツ・ネットは高視聴率を稼いでいる。ファンがマリナーズから興味を失ったわけではないことがここから分かる。寒さと経済的要因。このダブル・パンチがファンの足を遠ざけているのだろうか? 好調な理由を検証 1. 第4、5先発投手 2. 決定力不足 3. 新監督采配 エドガーのバックアップが今後の課題 |
開幕直後こそ凡打が続く戦いぶりでふがいなさを感じさせられたものの、目先の1勝にとらわれない「プラス志向」で中盤には上昇してきたシアトル・マリナーズ。ただシーズン開始早々、気になることもある……。 *本文中データはすべて4月15日試合終了時のものです。(取材・文/丹羽政善) | ||
リズムをつかみ始めた4月前半戦終盤 シアトル・マリナーズのファンは、この2週間の戦いをどんな風に見守っていたのだろう。開幕した頃は、好機で繰り返される凡打を見るにつけ、「昨年夏の悪夢を見ているよう」。ある意味、そんな思いだったかもしれない。しかしあの頃、ボブ・メルヴィン監督以下、選手が集う、マリナーズ・クラブハウスの雰囲気はさほど悪くなかった。悲観的でもなく、楽観的でもなく。それがテキサス・レンジャーズ、オークランド・アスレチックス戦での連勝にもつながった。 無論、カンザスシティ・ロイヤルズのように連勝スタートを切れることに越したことはないが、デトロイト・タイガースのように「ようやく1勝を挙げた!」というわけでもなく、むしろ投手陣は安定し、ディフェンスも安心して見ていられる。もちろん、これが9月で、プレー・オフを争っている時なら話は別だが、ここまで8勝6敗は悪くない。 アトランタ・ブレーブス、アリゾナ・ダイヤモンドバックスという両有力チームが、低迷している。ブレーブスは、エースのグレッグス・マダックスが、ダイヤモンドバックスはランディ・ジョンソンが、共にまだまだ本調子とは言い難い。「懸念」という言葉はこういうチーム状態のことを言う。 タイムリーが出なかった開幕当初、「長いシーズンを通してみれば、必ずこういう時期はある。それがたまたまこの時期だと、ポジティブに考えるしかない」と、メルヴィンは話していたが、その通り。最近は徐々に得点圏でもヒットが出るようになった。同じ頃、選手も「たまたまリズムが合わないだけ。この時期からシリアスには考えていない」とコメントしていたが、そうしたプラス志向が、ようやく最近、噛み合い出してきたと言える。「この時期、4割、5割の打率を残す奴もいる。でもそれがシーズン終了後まで続くはずがない」。そうした選手の言葉のひとつひとつが、今証明されつつある。「目先の1勝」にこだわる選手はいなかった。 “寒い”セイフコ・フィールド ゲームが近づけば当然チケットは売れるし、そのまま2万枚以上のチケットが余ることは稀なのだが(少なくとも去年までは……)、4月14・15日のアスレチックス戦では、なんと26,000人台まで観客数が落ち込んだ。14日の26,567人は球場史上ワースト2位、15日の26,666人はワースト8位。過去2年間のように連戦連勝してはいないが、一応ア・リーグ西地区の単独首位である。ましてや開幕間もないこの時期の観客数としては、やはりさびしい。 もちろん、他球場の観客数を見れば、2万人すら切っているゲームがほとんど。そういう意味ではマリナーズのフ場合、まだかなり優良なのだが、昨年、一昨年と、満員のセイフコ・フィールドしか知らないファンには、妙にスタジアムが寒々しく感じるに違いない。 この時期、確かに寒い。特にナイターなどは回が進むに連れて、簡単にセ氏10度なんて切ってしまう。メルヴィン監督も、開幕戦からの寒さで風邪を引いたそうだ。ベンチにはヒーターが入っていても、防寒には気を遣う。ベンチがそんな状況なら、当然スタンドの状況は想像に難くない。しかし、シアトル独特の春の底冷えの寒さが、ファンの足をも遠ざけてしまっているのだろうか。 TV観戦を止め球場へ行こう だが、この時期スタジアムに足を運ぶと、ミッドシーズンとは確実に“何かが違う”雰囲気に満ちている。気軽にサインに応じる選手、寒い中訪れるのは本当のファン。日本にいたときにイメージしていた、メジャー本来のゲームというか。それを言葉で表現するのは難しいが、訪れれば必ず感じるはずだ。ゲームそのもの、球場全体から受ける、新鮮な居心地の良さを。さあ、TVのスイッチを切り、スタジアムに出掛けよう! チケットは当日窓口で買えばいい。ある意味ボールゲームの本来あるべき姿が、この時期、グラウンドにはあふれているのだから。【2003年5月『YOUマガ』掲載記事】 |
コメントを書く