※このページは、2009年シーズンのシアトル・マリナーズについて、2009年3月から10月にかけてのシーズン中に作成・掲載された記事を基に再編集したものです。
目次 マリナーズ2009年始動。チームは大改革で転換を図る |
昨季101敗を喫したマリナーズは、首脳陣を一新。また、J・J・プッツ投手らを放出し、若手主体にチーム構成を転換して、 チーム再建を図ろうとしている。今月は、オフの動きと、開幕までに繰り広げられるであろう各ポジションでのレギュラー争いに注目した。 (取材・文/丹羽政善)※本文中のデータは2月10日現在のものです。 | ||
新体制での幕開け ポジション争いは激化 WBC以降に注目 今月の注目 ドン・ワカマツ監督 ©Seattle Mariners メジャー経験は、1991年にナックルボーラー、チャーリー・ハフのほぼ専用捕手としてわずか18試合、31回の打席に立っただけ。引退後はマイナー・リーグの監督を経て、テキサス・レンジャースやオークランド・アスレチックスのコーチを務めた後、昨年11月、メジャーとしては初の日系アメリカ人監督に就任。日系4世の彼は「日系人の代表として監督になれたことを誇りに思う。自分をステップに、さらに多くの日系人が同様の機会を得られるように頑張りたい」と、別の意味でも自分の役割を理解する。出身は、オレゴン州のフッドリバー。 |
好調な出だしを切ったマリナーズ、今後の展開に期待! |
胃潰瘍で開幕を故障者リストで迎えたイチローも復帰。開幕から好スタートを切ったマリナーズは、下馬評を覆す勢いで良い戦いを続けている。イチローの不在時は、ケン・グリフィーJr.、マイク・スウィーニーといったベテランが若手を牽引。これからの戦いが、ますます楽しみだ。 (取材・文/丹羽政善)※本文中のデータは4月15日現在のものです。 | ||
イチロー、日本記録を更新 今季加入組も期待大! 城島はリーダーシップを発揮 今月の注目 マイク・スウィーニー内野手 Mike Sweeney 背番号5 ©Seattle Mariners かつてはカンザスシティー・ロイヤルズの主砲として活躍。けがを重ねてからは、現役続行さえ危ぶまれたが、今季はマリナーズに救われると、オープン戦で好成績を残し、招待選手の立場から、メジャーリーガーに復帰した。今のところ、指名打者が主な役目だが、単にオフェンスの戦力としてだけでなく、チームのリーダー的な役割も担う。明るい性格で、若い選手をまとめる力にも定評。チーム好調の影には、こんな黒子の存在も光る。 |
5月に入り、負の要素が見え出したマリナーズ |
4月を地区首位で折り返したマリナーズだったが、5月に入って連続でサヨナラ負けを喫するなど、苦しい戦いが続く。チームは今後、どんな方向性を探るのだろう。ベテランの補強で建て直しを図るのか、逆にベテランの放出で来季以降を目指すのか。今、分岐点に差し掛かっている。 (取材・文/丹羽政善)※本文中のデータは5月14日現在のものです。 | ||
得点パターンを模索中 負の要素の中に見える光 まずはオフェンスの強化を 今月の注目 ラッセル・ブラニアン外野手 Russell Branyan 背番号30 ©Seattle Mariners 1998年にクリーブランド・インディアンズでデビューしたが、なかなかレギュラーに定着できず、シンシナティ・レッズ、ミルウォーキー・ブリューワーズ、タンパベイ・レイズ、サンディエゴ・パドレスなどを渡り歩き、10年余りのキャリアでマリナーズが7チーム目。典型的なジャーニーマンで、チャンスは与えられるものの、その度にチームの期待を裏切り、放出されてきた。しかし今季は、マリナーズの4月の快進撃を支え、なくてはならない存在に。5月に入って数字を落としたが、オフの補強では、うれしい誤算となった。 |
打てない、守れない…投手陣頼みが続くマリナーズ |
5月の上旬に崩れかけたマリナーズだが、今は、なんとか5割前後で持ちこたえている。その要因は投手力だが、オフェンスに難があり、チームはそれ以上の勢いに乗れないでいる。ただ、チームが今後、プレーオフに絡むとすれば、懸念はディフェンス。防げるミスを防げるかが、今後を左右しそうだ。 (取材・文/丹羽政善)※本文中のデータは6月15日現在のものです。 | ||
投手陣は良いのだが…… 荒療治で奮起なるか 城島の復帰も間近 今月の注目 ブランドン・モロー投手 Brandon Morrow 背番号35 ©Seattle Mariners 好調な投手陣にあっては、悩める主力投手と言えよう。シーズン開幕はクローザーとして迎えたものの、制球に難があり、中継ぎでの調整が決まった。とは言え、それでも制球難は解消されないのが現状だった。実はブランドン・モローに関しては、昨年の終盤に先発へ転向したのだが、それが不向きと判断され、キャンプでは再びリリーフとなった経緯がある。しかしここへ来て先発復帰が決まった。起用が不安定になっていた流れの中での、先発再転向は彼に最後のチャンスを与えているようでもある。 |
強豪を相手に勝ち越し。プレーオフ進出も視野に |
マリナーズが健闘している。前半を終えた時点では、十分にこれからプレーオフを狙える位置にもいる。だが逆に、それが今後の舵取りも難しくしていると言えよう。今年にかけるのか、将来を見据えた動きをするのか。いずれにしても今のマリナーズは、興味深い展開になっている。 | ||
トレードの行方に注目 さて、これからチームはどうするか。7月10日、ユニエスキー・ベタンコートをカンザスシティ・ロイヤルズにトレード。エイドリアン・ベルトレは左肩のケガで、離脱中。目下、三遊間は控え、またはマイナーにいた選手で戦うことを強いられている。残念ながら、三塁を守るクリス・ウッドワードも、ショートのロニー・セデーノも、守備では及第点を付けられるが、オフェンスでは、相手にとって安全パイである。ロブ・ジョンソンがマスクを被れば、7~9番は、自動的にアウトというぐらい、出塁率も低く、これではイチローにつなげられない。 トレードの狙いは、サードもしくはショート。前半終了直前にオークランド・アスレチックスからジャック・ハナハンを獲得したが、彼が答えになるわけではない。本来、どちらかに打てる打者が欲しいが、ジャック・ズレンシックGMは、ベタンコートのトレードで若い投手を獲得したように、これまで即戦力と将来を見据えた、総合的なトレードを行っている。となると、予想できる範囲内のトレードはしないかもしれない。むしろ動くとしたら、将来の三塁手、という動きを見せるのだろう。いずれにしても結果は、この号が出るまでには見えているかもしれない。 興味深いチームに成長 ただ、後半戦が始まって負けが込んだ場合は、その限りではない。彼らがそろってこの段階でチームにいないとすれば、それはマリナーズがプレーオフ圏内から脱落したことを意味する。 それにしても、マリナーズはこの戦力でよく持ち応えている。ラッセル・ブラニアン、フランクリン・グティエレスといったうれしい戦力的な誤算があったとはいえ、控えの層も薄く、この戦力でよく勝っていると本当に思う。今年は、再建の時期と考えられていた。プレーオフを狙えるとしたら数年後だろうと誰もが思ったが、それぞれの歯車がうまくかみ合って、なかなか負けないチームになっている。このあたりは、初の日系人監督となったドン・ワカマツ監督と、ズレンシックGMの手腕によるものかもしれない。 今月の注目 デビッド・アーズマ投手 David Aardsma 背番号53 ©Seattle Mariners コロラド州出身の27歳。惜しくもオールスター戦出場は逃したが、シーズン途中からクローザーに指名されると、前半だけで20セーブをマークした。2004年にサンフランシスコ・ジャイアンツでデビューしてから、毎年のようにチームを渡り歩き、今年がメジャ-5年目で、5チーム目。これまでは平凡な中継ぎ投手で、防御率は4ー6点台だったが、今年は2点を切っている。球種はほとんどがストレートだが、キレの良さで勝負するタイプだ。マリナーズに来て、ついに才能が花開いたようだ。 |
トレードで、今後の方向を定めた(!?)マリナーズ |
トレード期限前にさまざまな引き金を引いたマリナーズ。現状のアップグレードと将来の補強を同時に行った。ただ、チームの目は、あくまでも数年後に向けられており、ファンも我慢が必要か。しかし、昨オフから行われている再建策は、形になりつつある。今回のトレードも、ファンの支持は厚いようだ。 (取材・文/丹羽政善)※本文中のデータは8月14日現在のものです。 | ||
プレーオフ進出はあきらめた!? ただ、それは簡単ではないことは明確。7月の月間MVPを受賞したジャロッド・ウォッシュバーンは、デトロイト・タイガースにトレード、エリック・ビダードも左肩にメスを入れ、今季の復帰は絶望。となると、フェリックス・ヘルナンデスは計算できるにしても、残り4人の先発投手は、いずれも経験のない若手ばかり。そろって好投を期待するのは酷だろう。 トレードの吉凶は? また、ジャック・ズレンシックGMは、将来の捕手/指名打者/一塁手ジェフ・クレメントをあきらめて、ピッツバーグ・パイレーツからジャック・ウィルソン遊撃手を獲得した。かつて、オールスターに選ばれたこともあるウィルソンは、守備に定評。年間200安打を打ったシーズンもあり、クレメントと一緒に放出したロニー・セデーノよりは、打撃面でも期待できるとの評判だが、8月中旬の時点では、その期待に応えられないでいる。やはり、リーグを変わったことによる適応に苦労しているのか。ただこのトレードで、マリナーズはイアン・スネルという先発投手を獲得しており、彼も有望株。パイレーツでは2年連続で2けた勝利を挙げており、チームにうまくなじめれば、同様の期待ができるだろう。 結局マリナーズとしては、どちらかと言えば、来季以降に比重を置いた戦力補強を行ったと言える。現実には、まだプレーオフを狙える位置だったが、路線としてはファンも後押し。不満の声はない。後は、この流れをオフも続けられるかどうか。長期的視点に立った契約、トレードができるなら、マリナーズはさらに期待のできるチームになるだろう。 イチローの200安打超え 9年連続200安打は、もちろんメジャー記録。できれば、まだチームがプレーオフを争っているような、緊張感のある試合の中で達成をして欲しいが、さて、どうだろう。8月中に達成すれば、年間240、250安打ペースとなり、どこまでヒット数を伸ばすか、ということも気になるところだ。 今月の注目 ジャック・ウィルソン遊撃手 Jack Wilson 背番号9 ©Seattle Mariners 7月末にピッツバーグ・パイレーツから移籍したばかり。守備に定評があり、リーグでもトップクラスとされる。打撃は、2004年に年間201安打を放ち、3割8厘という数字を残したが、それ以来、3割は打っていない。守備さえ期待通りなら、打率は2割6、7分でも問題はないだろう。それ以外にも彼には、リーダーシップ的な役割が期待されている。元来、明るい性格。これまでのマリナーズにはいなかったタイプだけに、そんな一面にも注目が集まる。 |
土台固めとなった今季、来季は飛躍の年に! |
今季もプレーオフを逃したマリナーズだが、昨年秋からのドラスティックな再建策は実を結びつつある。この秋から冬にかけての補強ポイントも明確になってきており、来季に向けては、このオフがまずは楽しみとなった。 (取材・文/丹羽政善)※本文中のデータは9月15日現在のものです。 | ||
プレーオフ進出はならず 7月の痛い連敗 オフ・シーズンの課題 今月の注目 ライアン・ローランドスミス投手 Ryan Rowland-Smith 背番号18 ©Seattle Mariners オーストラリア出身の先発左腕投手。まだ中継ぎで投げているころから、城島健司が「先発で投げさせたら面白い」と話していた投手だ。開幕直後、左腕の故障で離脱したが、夏場に復帰してからは、毎回のように6、7イニングを安定して投げ抜いている。来季のマリナーズには、先発の3~5番手候補の投手はたくさんいるが、1番手のフェリックス・ヘルナンデスに続く投手がいない。シーズン終盤の勢いを持続できれば、間違いなくローランドスミスが先発2番手候補。大いに期待したい。
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