※このページは、2011年シーズンのシアトル・マリナーズについて、2011年3月から9月にかけてのシーズン中に作成・掲載された記事を基に再編集したものです。
目次 来季の展望と今シーズン終盤戦の見どころ(『ゆうマガ』2011年9月号掲載) |
7月の17連敗で今季が終わったマリナーズだが、結果として再建の流れを守ることができた。トレードでは将来有望な若手野手を獲得。マイナーには逸材がそろい始め、来季以降に向けて楽しみなチームになってきたと言えそう。残り1カ月の見どころは、イチローの200安打挑戦か。 | ||
トレードにより強化された投手陣 複数の選手を獲得したが、目玉はフィスターとの交換でデトロイト・タイガースから獲得したフランシスコ・マルチネスと、ボストン・レッドソックス、ロサンゼルス・ドジャースとの三角トレードで、ビダードの見返りとしてドジャースから移籍してきたトレイボン・ロビンソンのふたり。打者に的を絞った辺りに、今季前半の打線の苦しみがうかがえる。 マルチネスは、9月1日に21歳となったベネズエラ出身の選手。タイガースのマイナー・リーガーの中では、4番目の有望選手として位置付けられていた逸材で、マリナーズとしては2、3年後のレギュラー定着をもくろむ 一方のロビンソンは早くも昇格し、チャンスを与えられている。マイナーでは今季、26本塁打を記録したが、本来はパワーヒッターではなく、俊足のスイッチヒッターだ。本塁打が打てるならなお良いが、率を残せる選手になれれば、マリナーズとしてはビダードを出した価値があると言えそう。 リーグ屈指だった先発陣は、結果として手薄になったが、昨年クリフ・リーをテキサス・レンジャーズに放出した際に獲得したブレイク・ビーベンが昇格してから安定した投球を続けており、来年は4番手として期待できそうである。来年の開幕までには5番手を探さなければならないが、なんとフリーエージェントとなるビダードと再契約をするのでは、とも言われており、案外彼が復帰しているかもしれない。 来季、野手の布陣は 2塁のダスティン・アクリーも本物。今や不動の3番という感じで、来季も3番アクリー、4番カープという打線が今から想像できる。これで、6月から不振に陥ったジャスティン・スモークが5番に定着できれば、今年よりは得点力のあるクリーンナップになると予想できよう。 こうなってくると、来季への課題は、サードとレフト。サードに関しては、ショーン・フィギンスの契約があと2年残っていることから、オフにトレードできなければ、まずは彼にチャンスを与えるしかない。 レフトは、カルロス・ペゲロ、マイケル・サンダース、ロビンソンらが争う形。ベスト・シナリオとしては、ペゲロの長打力を生かしたいだけに、彼にポジションを奪って欲しいところか。 駒が足りないセットアッパーに関しては、お金を掛けて補強するところではないので、若いジョシュ・ルーキ、ダン・コーテス辺りに期待したい。 こうして見てくると、あまりオフの補強ポイントというのがなく、投手も野手も、成長待ちという感じだ。若い選手がそろってポテンシャルを発揮してくれれば、今年のように途中で失速することはないと見られる。 イチローの200安打は? 残り1カ月のシーズンは、そうした若い選手の成長を見るのが楽しみ、ということになるが、一方でイチローの記録との戦いも気になるところ。 今のペースだと10年続けてきた年間200安打が厳しい。しかし9月の成績次第では、絶望的という数ではない。とにかく彼の巻き返しに期待したい。仮に200安打に到達するようなら、11年連続3割も見えてくる。 今月の注目 7月31日にトレードで移籍してきた後、8月5日に昇格すると、すぐに本塁打を放つなど活躍したが、その後はメジャーの壁に突き当たっている。しかし、出塁すれば足もあり、守備範囲も広い。外野の定位置争いを面白くしてくれそうだ。 |
マリナーズ、後半の見どころは?(『ゆうマガ』2011年8月号掲載) |
オールスター前の5連敗で、地区の優勝争いから大きく後退したマリナーズ。8月前半までにプレーオフ・レースに復帰できなければ、おそらくこれからは若手達のオーディションのシーズンとなる。イチローの記録の行方も後半の見どころか。 | ||
調子が良い時期もあったのだが…… 前半を終えた段階での7.5ゲーム差ならまだまだとも言えるが、これまでができ過ぎだったとも、逆にレンジャーズ、ロサンゼルス・エンゼルスがもたついていたとも言えるだけに、今後7.5ゲームという差は、広がることはあっても縮まることはないかもしれない、残念ながら。実際、後半戦の初戦でレンジャーズに完封負けを喫すると、その差は8.5ゲームにまで開いた。 トレードの行方にも注目 彼らの場合は、言わば“売り手”。ベテランを放出して、若い選手を獲りたいところだが、実のところ今のマリナーズには他チームが興味を持つような……例えば、去年のクリフ・リーのようなベテランがいない。 確かに、エリック・ビダードならいくらでもオファーがあるかもしれないが、7月中旬の時点では、膝を痛めて故障者リストに入っている。彼を放出したところで、見返りは限られそう。また彼の場合、故障の連続で他チームからのオファーも足元を見られたものとなりそうだ。 ほかのトレード候補としては、ジャック・ウィルソン、アダム・ケネディー、デビッド・アーズマ、ジャック・カストらがいるが、それぞれどこかのチームがぜひとも欲しい、という戦力ではない。「今季の残りの年棒も払いますからどうぞ」と差し出して、ようやく引き取り手があるかどうかだろう。 いずれにしてもチームは、地区優勝が見えなくなった時点で、彼らの代わりに若手を起用して、来季のためのオーディションをする必要があるわけで、枠を空けるためにベテラン選手を整理しなければいけないのは確かだ。ウィルソンら、契約が今年いっぱいの選手なら、そのまま解雇という可能性も考えられる。 イチロー、200安打達成に向けて おそらく、左翼と指名打者はペゲロとカープの併用。ハルマンはセンターで起用し、シーガーは3塁というのが、8、9月に掛けての布陣となるのではないか。特に、レフトと指名打者にめどがつかなければ、今年のオフに補強をする必要が出てくる。まあ、これからのシーズンというのは、そういう中で誰が出てくるのか、というのが見どころとなるはずだ。 さて、ほかの着目点といえば、イチローの記録になる。11年連続で200安打を達成できるのか。3割は大丈夫か? 前半を終えた時点では、90試合に出場して101安打。このペースでは、当然シーズン終わりまでに200安打に達することは無理で、残りのシーズンでペースアップを求められる。 ただ過去10年、1試合あたり1.4本ペースでヒットを放っており、同じペースでヒットを積み重ねれば200安打に届くことから、イチローにとってはそれほど高いハードルではない。 達成はギリギリになるかもしれないが、最後の最後には200本に達するのではないか。そこにたどり着ければ、打率も必然と3割に乗っているはずだ。本当は、そのイチローのペースアップにつられてチーム状態も上向きとなり、プレーオフ・レースに復活しているような状況になれば理想的なのだが……。 今月の注目 4月号で紹介したダスティン・アクリーとは、大学時代の同級生。ドラフト時はさほど注目されていなかったが、マイナーで好成績を残し、一気にメジャー昇格を果たした。将来的には打率の残せる3塁手との評価があり、ショーン・フィギンスの不振もあって、チャンスをつかんだ。 |
マリナーズ、プレーオフ・レースに復帰? |
5月上旬に6連敗を喫し大きく後退したかに見えたマリナーズだが、5月16日からの20試合で15勝をマークすると、勝率を5割に戻すなど、地区の優勝争いにも加わってきた。この力が果たして本物かどうか……。 | ||
先発投手は安定しているが 抜け出してプレーオフに進出するには、得点や打率など、ほとんどのオフェンス部門でリーグ最下位の打線がもう少し奮起しなければ、というところだが、その前にリリーフ陣についても少し触れておきたい。 5月の6連敗では、ことごとく救援に失敗したブランドン・リーグだが、その後は安定。とりあえずは安心して9回を任せられるようになった。しかしながら勝ちゲームの7、8回の継投が、優勝争いをするうえでは不安である。現時点では、デビッド・パウリーひとりしか安定した投手がいない。開幕当初はセットアッパーを担ったジェイミー・ライトは、6月に入ってから投げては失点するケースが続いている。 本来ここに過去2年、クローザーを務めたデビッド・アーズマが戻れば形になるが、彼の復帰はまだ見えてこない。であるならば7月にトレードしてでも、チームは補強を考えなければならないかもしれない。もしくは、マイナーから誰かを上げるか……。 指名打者、定着せず カープは、3Aのタコマ・レニアズの試合に57試合出場すると、打率.348、19本塁打という成績を残している。彼の場合、1塁が本職で左翼は不慣れなため、指名打者としての起用も多くなるだろう。 その指名打者は開幕からジャック・カストが務めてきたが、やや期待外れ。5月は2割7分6厘の打率を残したものの、6月に入ってまた低迷。おそらく、カープがある程度の実績を残せば、カープが指名打者として定着することになるかもしれない。 得点アップのかぎを握るのは イチローは4月こそ3割2分8厘という数字を残したものの、5月は2割1分と低迷。6月に入ってもスランプは続き、6月9日には2割4分8厘まで下がった。翌10日にスタメンを外れ、その後の3試合ではすべてマルチ安打を記録して復調の兆しが見られるものの、本人は「自分のことで精一杯」と余裕がない。このままでは、11年連続の年間200安打到達も微妙で、彼が普通の状態に戻らなければ、チームは今後のプレーオフ争いにおいて、大きな不安を抱えることになる。 フィギンスは開幕から不振が続き、5月の終わりには打率が2割を切ると、なかなか2割台にさえ戻せないでいる。彼の場合、守備にも不振が伝染し、失策のシーンも度々目にする。 いずれにしてもふたりのスランプで、オフェンスの核となるべき1、2番コンビが出塁して得点するという構想は崩れた。逆に言えば、今後の得点力アップは彼らの復調に掛かっているとも言える。まあ、彼らが低迷しているにもかかわらずマリナーズは勝っているのだから、なんとか彼らが復調するまでは、今のチーム状態を保ちたいところだろう。 さて、実際にプレーオフを意識するのは、オールスターが終わってからになると思うが、なんとかそれを意識できるような位置で、前半を折り返したい。 今月の注目 (C)Seattle Mariners. 当初は内野の控え選手と見られていたが、シーズンに入ってみれば、レギュラー選手のような頻度で試合に出場している。期待の低かった打撃でチームを助けている面もあり、何気にオフ最大の補強となっている。今後、ますます彼の存在が大きくなりそうだ。 |
やっぱり今年は再建の1年? |
一瞬淡い期待を抱いたものの、5月に入るとマリナーズの今シーズンは予想通りの展開に。チームはすでにベテラン選手らを解雇して、若手に切り替えを図った。今後は、エリック・べダードらのトレードを視野に入れながら、さらなる再建が進むことになりそうだ。 | ||
5月に入り大きく後退 チームは若手の育成モードへ ベテラン選手が向かう道は 今月の注目 (C)Seattle Mariners. 強肩で、パワーのある外野手。三振が多いのが気になるが、この時期にコールアップされたということは、それだけのポテンシャルを持った選手ということ。今後、マイナーとメジャーを行ったり来たりするかもしれないが、数年後にはレギュラーとして定着することが期待されている。 |
マイケル・ピネダ、デビュー! |
開幕から苦しい戦いが続くマリナーズだが、マイケル・ピネダというルーキーの出現で明るい兆しも。フェリックス・ヘルナンデス以来の本格派投手には、早くも全米が注目。彼の活躍にはこれからも注目したい。 | ||
「規定外」の大型選手 ピネダ投手の経歴 チーム自体の懸念は依然…… 今月の注目 (C)Seattle Mariners. 1Aから、いきなりメジャー昇格を果たした選手。2002年のドラフトでミルウォーキー・ブルワーズに入団するも、2005年にはマリファナの使用が発覚して、そのまま野球を辞めてしまった。その後、ヨーロッパなどを放浪し、バーテンダーに。2010年に再起を試み、その夢を叶えた。 |
うれしい誤算と不安 |
いよいよ開幕。昨季のようにプレーオフ進出の期待が高いわけではない。地区争いは苦戦が予想される。しかし、次代を担う若手の成長も見られ、彼ら次第では面白いシーズンになるかもしれない。メジャー11年目、プロ20年目のイチローには、11度目の年間200安打というメジャー記録が懸かる。 | ||
4月1日、オークランドで開幕 開幕ロースターに名を連ねるのは? 春季キャンプの仕上がり 今月の注目 (C)Seattle Mariners. 今季、オークランド・アスレチックスから指名打者として獲得したニューフェイス。過去4年で97本塁打を放ち、長打力が魅力。しかしながら、同じ4年間で673三振。言ってみれば、30本の本塁打を打つかもしれないが、200三振するかもしれないよ、という選手。マリナーズとしては前者のカストを期待しているのだろうが、さて、どうなることだろう。 |
我慢、辛抱の1年? |
同地区のライバルが着実に補強を重ねる中、マリナーズはほとんど動きを見せなかった。どうやら、若手選手を育てることに今季は重きを置くようだ。数年後に向けた本格的な再建。ファンはじっと我慢して、若手らの成長を信じて待つしかない……。 | ||
大型補強はなし 若手の成長がかぎ 投手陣の注目株は? 今月の注目 (C)Seattle Mariners. 今季、オークランド・アスレチックスから指名打者として獲得したニューフェイス。過去4年で97本塁打を放ち、長打力が魅力。しかしながら、同じ4年間で673三振。言ってみれば、30本の本塁打を打つかもしれないが、200三振するかもしれないよ、という選手。マリナーズとしては前者のカストを期待しているのだろうが、さて、どうなることだろう。
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