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2012年シーズンのシアトル・マリナーズ

※このページは、2012年シーズンのシアトル・マリナーズについて、2012年4月から8月にかけてのシーズン中に作成・掲載された記事を基に再編集したものです。
 

残り2カ月を、どう乗り切る?

(『ゆうマガ』2012年8月号掲載)

  
 マリナーズはすでに、残念ながらプレーオフ・レースから脱落し、来季を見据えた戦いを迫られている。そして今は、現在の方向性が正しいのかどうか、見直しの時期。今の若い選手に将来を託せるのか。前半は不調だったジャスティン・スモークらに成長の兆しを感じたいところだ。※本文中のデータは7月16日現在のものです。 
  
 

若手は成長しているのか
今シーズンの戦いもすでに後半戦に入った。今季が始まる前、チームとしては今年1年を“成長”という位置付けで臨んだはずである。「プレーオフには出られなくてもいい。ジャスティン・スモーク、ダスティン・アクリー、カイル・シーガー、マイケル・ソーンダース、マイケル・カープ、ヘスス・モンテロらが順調に成長を遂げ、それを実感できるようなシーズンであればいい」、そう考えたはずだ。

しかしながら前半を見る限り、スモーク、アクリーは、むしろ昨年よりも苦しんでいる。シーガーとソーンダースには多少成長の兆しが見えるが、期待したほどではない。カープは開幕戦で故障して以来、満足に出場すらしておらず、ヤンキースから鳴り物入りで移籍したモンテロは、6月に入って壁にぶつかった。

■ 不振が与える影響
イチローが結果を残していないにも関わらず、アクリーらの打率がさらに下で、イチローの不振がさほど目立たないことが、チームの問題をさらけ出している(※編集部注:イチロー選手は7月23日付けでヤンキースに移籍しました)。この後半、チームとしては見極めが迫られるだろう。スモーク、アクリー、カープらの成長をこのまま待つのか、あきらめてトレードやFA(フリーエージェント)などで、違う選手を獲得するのか。

実は昨年のオフ、マリナーズはミルウォーキー・ブルワーズからFAになったプリンス・フィルダーの獲得を目指した。しかし、予算上の問題であきらめた経緯がある。ただ、もしもフィルダーを獲得できていたら、スモークはどうするつもりだったのか。トレード?もしくは指名打者?いずれにしても、あの時点でマリナーズはスモークを見切っていた可能性がある。ただ、こうなるとスモークを欲しがるチームはないだろうし、マリナーズは我慢強く成長を待つしかないのか。


投手陣、そして岩隈の現状

投手陣にしても、期待したほど若手が伸びなかった。開幕の先発ローテーションに入ったブレイク・ビーバンとヘクター・ノエシは、共に前半の最後にマイナー落ち。シーズンの序盤は良いピッチングを見せることもあったが、そろって安定感を欠き、徐々に首脳陣の信頼を失っていった。おかげで岩隈久志に先発が回ってきたわけだが、ノエシに関しては、トレードでヤンキースから獲得する時に、先発ローテーションを任せられると見込んで獲得したわけで、そこにも大きな誤算が生まれている。

結局、投手と野手を合わせても期待以上の成長を遂げたのは、クローザーになったトム・ウィルヘルムセンぐらいか。ただ、その陰ではクローザーの座を失ったブランドン・リーグの不振があり、せっかくのトレード要員が価値を失くしてしまった。

ジャック・ズレンシック ゼネラル・マネジャーの再建策も、ここに来て袋小路に迷い込んでしまったかのよう。彼の方向性は正しいのか、それとも修正が必要なのか……。

すべてはここからの2カ月次第。アクリー、モンテロらは来季に繋がるような成長の兆しを見せられるのか。そこがこれからの見どころとなる。

さて、前半の最後で先発機会を与えられ、後半に入って先発ローテーションに入った岩隈も、ここからの2カ月が重要な期間となる。メジャーで通用することを証明できるかどうか。それは、単に成績だけでなく、中4日で登板できるかどうかを示す必要もあるだろう。

とにかく、残り2カ月でどんな選手が頭角を現し、来季に繋がるような活躍ができるのか。若い選手がそろって不振に喘ぎ、前半と同じような展開が続くなら、チームはこのオフ、相当ドラスティックな改革を迫られるかもしれない。

今月の注目

マイク・ズニーノ捕手 Mike Zunino 背番号3

正確にはまだマリナーズのメンバーではないが、6月のドラフトでマリナーズから1位指名(全体の2番目)された。彼は今季、アマチュアのベスト選手に送られるゴールデン・スパイク賞も受賞しており、将来の正捕手として期待されている。

 

マリナーズ、来季に向けての動きを加速?

(『ゆうマガ』2012年7月号掲載)

  
 マリナーズは今、戦い方を来季に向けたものにシフトしているように見える。おそらく7月は更に動きがあるはずで、例えば、先発ローテーションの顔触れがガラリと変わるかもしれない。オフェンスにしても、今の若手達が将来の核となりうるのか、その判断を迫られそうだ。※本文中のデータは6月15日現在のものです。 
  
 

先発ローテーションの再編
6月中旬に入って、マリナーズが動き出した。まず、ブレイク・ビーバンをマイナーに降格してエラスモ・ラミレスを昇格させると、ビーバンの先発スポットを彼に与えている。

恐らくこれは、先発ローテーション再編の第1弾。この流れでいくと、8月までにはガラリと先発の顔触れが変わると予想できる。

次に先発を外れるのは、多分ケビン・ミルウッドだろう。トレード期限(7月31日)までにはトレードされることが濃厚で、そのスポットには昨年のドラフトで1位指名(全体の2番目)されたダニー・ホルツェンが入ると見られる。

ホルツェンは、6月13日にマイナーの試合に先発すると、無失点を27回2/3まで伸ばしており、ひょっとしたら7月には、すでにマリナーズでデビューしている可能性がある。
その次だが、マリナーズは条件次第でジェイソン・バーガスをトレードするとの噂もあり、その場合は、ようやく岩隈久志投手が先発機会を得ると考えられている。時間が掛かったが、なんとか7月中には先発のマウンドに立てるのではないか。

さて、そうなった場合の話をまとめると、8月の先発ローテーションは、フェリックス・ヘルナンデス、ヘクター・ノエシ、岩隈、ラミレス、ホルツェンという顔触れとなり、ノエシの調子次第では、彼がブルペンに回り、違う選手が先発する可能性も捨てきれない。


野手の布陣は?

投手と並行して、野手の整理も始まっている。まずは、アレックス・リディをマイナーに落として、キャスバー・ウェルズとフランクリン・グティエレスをメジャーに上げた。おそらく次は、ショーン・フィギンスとミゲル・オリーボのリリースか。

その場合、内野は3塁がカイル・シーガー、ショートがブレンダン・ライアン、2塁がダスティン・アクリー、1塁がジャスティン・スモークでレギュラーを固定。外野は、レフトがマイケル・ソーンダース、センターがフランクリン・グティエレス、ライトがイチローという布陣となり、捕手はジョン・ジェソとヘスス・モンテロの併用で、おそらくマイナーからもうひとりバックアップの捕手を昇格させるつもりか。

野手の布陣に関しては、これでしばらく様子を見ることになると思われ、本来なら開幕からこのメンバーでも良かったが、フィギンスとオリーボにチャンスを与えたことで、世代交代が遅れた。

そのメンバーの中には、残念ながらイチローも含まれ、アクリー、スモークが今のところ期待を裏切っているが、シーガーとモンテロのオフェンスは予想以上でもあり、ポジティブな面もある。これからイチローが調子を取り戻し、スモーク、アクリーがそれぞれの潜在能力を発揮してくれるなら、後半はなかなかの打線になるかもしれない。


来期のかぎを握るシーズン後半

さて、先ほど投手では先発にしか触れなかったが、ブルペンではブランドン・リーグもトレードされる可能性がある。その場合は、トム・ウィルヘルムセンがクローザーに定着する予定で、セットアッパーは、先日デビューしたステファン・プライヤーか。彼は、デビューしてすぐに故障してしまったが、100マイルの直球を投げるだけに、将来のクローザー候補でもある。

ざっと見ると、シーズン後半の布陣は、予想される来季の形に近く、後半で何らかの兆しが見えなければ、チームはシーズン・オフにドラスティックな改革を迫られよう。

最後に川崎だが、現時点ではまだ、レギュラーで毎日のように出場する形が見えてこない。本来、ライアンの打撃不振が深刻なのでチャンスでもあるのだが、川崎の打撃も低迷しており、なかなか奪い取るという形にならない。川崎としては、チャンスは少ないものの、その中でなんとか結果を出して少しでも出場機会を増やしたいところだろう。

今月の注目

エラスモ・ラミレス投手 Erasmo Ramirez 背番号50

今年、開幕ロースター入りし、しばらくはブルペンにいたが、元々、先発候補選手。いったんマイナーに降格したものの、そこで先発投手として必要な調整を行い、メジャーに戻ってきた。ニカラグア出身の22歳。将来のマリナーズの先発ローテーションの一角を担うことが期待されている。

 

マリナーズ、迷走?

(『ゆうマガ』2012年6月号掲載)

  
 開幕前から予想されたことではあるが、マリナーズが下位に低迷している。割り切って今年は、若手の成長に重きを置くのかと思いきや、再建とは逆行する動きもある。マリナーズはどこへいくのか? 監督の采配への疑問もくすぶる中、チームの方向性に注目が集まる。※本文中のデータは5月15日現在のものです。 
  
 

得点力改善が課題に
マリナーズ・ファンにとっては、厳しいシーズンが続いている。

4月24日から始まった遠征で、いきなりデトロイト・タイガースをスイープ。3試合で21点を挙げて、打線が噛み合い始めたように見えたものの、続くトロント・ブルージェイズ、タンパベイ・レイズとの7試合では1勝6敗と大きく負け越し、タイムリーがなかなか出ない歯がゆい試合が続いた。

ヒットは出るものの、効果的な1本が出ない。その流れは5月に入ってもあまり変わらず、得点圏ではカイル・シーガーだけが5月14日の時点で5割近い数字を残し、イチローも含めほかのレギュラーの得点圏打率は2割台の前半に低迷中だ。

5月14日の試合を終え、オフェンスの主要な数字は、得点が136でリーグ19位だが、打率は.235で25位。出塁率は.290で29位。得点に関しては昨年より順位が上がっているが、下との差はそれほどなく、いつ入れ代わってもおかしくない状況である。

結局、そうした数字が上がってこないと、ここ何年も懸念となっている得点力は改善されないのだろうが、「打順の組み方があれでは……」という見方もある。

例えば、ショーン・フィギンスが1番を外れてから、2番だったダスティン・アクリーが1番に回ったため、2番にはブレンダン・ライアン、キャスパー・ウェルズ、アレックス・リディらが入ったが、いずれも2番には不向きと言える選手ばかりである。


批判が集まる監督の采配

また、ウェッジ監督の試合中の采配にも疑問が出ている。

例えば、5月8日のタイガース戦では、2点ビハインドの9回に、無死1、2塁のチャンスを作ると、打席に立ったアクリーに、送りバントを命じたのだ。

これは失敗して、結局三振に終わったが、翌日のブログで『シアトル・タイムズ』紙のラリー・ストーン記者は、「将来を託そうというアクリーになぜ、バントのサインを出すのかわからない」と、明確に批判。それは同時に、多くの声を代弁していた。

確かに、アクリーは将来のチームを背負って立つ存在。今年のマリナーズが、将来を見据えて戦おうというなら、なおさら彼に打たせるべきではなかったか。

同じように首を傾げたくなるような采配は、投手起用にも見られる。

例えば、13日のニューヨーク・ヤンキース戦。3点をリードしながら8回、セットアッパーのトム・ウィルヘルムセンが1死1、2塁のピンチを招くと、彼を降板させ、3人の投手をつぎ込んでその下位の失点を1点で食い止めた。

結果オーライだが、ウィルヘルムセンは将来のクローザー候補でもある。ピンチをどう凌ぐかは、ステップアップのための重要な過程だ。しかしながらウェッジはあの日、選手を育てることよりも、目先の勝ちにこだわったのである。


今後のマリナーズの行方は

こうなってくると、今年のマリナーズがどこを向いているのか分からない。開幕前は、再建中であることを隠さなかったが、負けが込み始めると、場当たり的な動きになっている。

選手ひとりひとりの役割にしても、明確なのはイチロー、フェリックス・ヘルナンデスらひと握りで、アクリーですら、先日の試合でバントを命じられるなど、不明確である。

そういう状況に対し、選手が不満を漏らすとしたら、ウェッジ監督は、「しっかり実績を積んでから文句を言え」と言うはずだが、しきりに口にしていた我慢する姿勢はどこへ行ったのか?という感じだ。このままいけばフィギンスら、夏前に放出される選手が出てきそうだが、監督の立場もまた微妙と言えよう。

ところで、15日の時点でイチローのメジャー通算安打は2,471本。6月には2,500本に達するペースで、また大きなマイルストーンが目前に迫っている。なお、メジャーの通算本塁打も15日現在、96本。通算100号も今年中に達成されそうである。

今月の注目

ジョン・ジェソ捕手 John Jaso 背番号27

昨年11月、タンパベイ・レイズからトレードで移籍。開幕時は3番手の捕手だったため出番に恵まれなかったが、正捕手ミゲル・オリーボの故障により、捕手または指名打者での起用が増えると、特に打撃面でチームに貢献。今や、マリナーズにはなくてはならない存在となった。

 

2012年シーズン開幕!勝つための課題は

(『ゆうマガ』2012年5月号掲載)

  
 2012年シーズンをマリナーズはまずまずの滑り出しでスタートさせた。しかし不安定なブルペンなど、今後、勝ちを重ねていくためには懸念要素も。打線は今後、「3番・イチロー」がどう機能するかに注目。岩隈久志、川崎宗則両選手は、まずアピールする場を得たいところだ。※本文中のデータは4月16日現在のものです。 
  
 

模索するブルペンの起用方法
開幕後、マリナーズは4月16日現在、11試合を消化して6勝5敗とひとつ勝ち越している。悪くないスタートと言えるが、マリナーズよりも戦力的に劣るとされるアスレチックスとの試合が7試合もあり、そのおかげとの見方が強い。実際、アスレチックスには5勝2敗と勝ち越しているが、地区の優勝候補、レンジャーズとの4連戦では敵地で1勝3敗と負け越した。このあたりが、現実とも言える。

開幕して見えたことは、まずブルペンの駒不足。勝ちパターンの時の6、7回が問題だ。今のところ8回のトム・ウィルヘルムセン、9回のブランドン・リーグは、安定した活躍を見せ、1度も失敗がない。ただ、リードをしながら先発が6回、もしくは7回で交代が必要になった時に、マウンドに上がる投手がいない。15日の試合では7回からウィルヘルムセンがブルペンで準備を始め、最大で2イニングを投げる可能性もあったそうだ。

日本で開幕した時は、ショーン・ケリーがその役割を任されたが、東京ドームの2戦目で7回途中から登板すると、リードを守りきれず、彼はマイナーへ降格。その後、昨年の春まで高校の教師だったスティーブ・デラバーが指名されたが、彼もまた、その座をキープできなかった。

現時点では、エラスモ・ラミレスという新人が面白い存在。95マイル以上のストレートを投げ、制球力も悪くない。今後経験を積めば、6、7回を任せられるようになるかもしれない。いずれにしてもブルペンの起用方法が、ウィルヘルムセンとリーグ以外は4月中旬の時点では決まらず、試行錯誤が続く。


得点に結び付けたい打線法

得点力が懸念された打線も、それを克服したとは言い難い。16日の時点で得点はリーグ16位だが、打率はリーグ23位、出塁率は更に下がってリーグ29位である。これでも昨年よりは良くなっているが、11試合で早くも2度完封されており、先が思いやられる。

その改善を期待して生まれたのが「イチロー・3番」だが、14日の試合までは、得点圏での打率が1割4分3厘(7打数1安打)と低迷し、思惑通りとはなっていなかった。7打席程度では参考にもならないが、15日の試合では、イチローが同点の5回、1死1、2塁の場面で勝ち越しタイムリーを放つと、チームも試合をものにした。3番はやはり、走者を得点圏に置いて打席に入ることが多くなる。そこでヒットが出るかどうかは、得点、ひいてはこの日のように試合結果に直結する可能性が高いと言える。


イチロー、川崎、岩隈の今後に注目

さて、そんなふうに相変わらずイチローがチームの命運を握っているわけだが、開幕メジャー入りを果たしたものの、なかなか先発出場のない川崎、開幕前に中継ぎに降格し、16日現在ではまだ登板機会のない岩隈は、アピールの場そのものを与えられていない。

川崎は、7日の試合から3試合連続でスタメンに名を連ねたが、それはレギュラーのちょっとした故障が原因。ポジションを奪ったと言うより、やはり控えとしての役割が明確になっただけだった。その中で川崎は結果を出したのだが、3塁のカイル・シーガー、ショートのブレンダン・ライアン、2塁のダスティン・アクリーの壁を崩すのは相当難しそうだ。

岩隈の場合は、先発が早い回で崩れた場合のロングマンが現時点での役割だが、先発陣が予想よりも良く、岩隈に出番が回ってこない。本来ならばそれは喜ぶべきことなのかもしれないが、岩隈にしてみれば心境は複雑だろう。

イチローに話を戻せば、これまで安定感がイチローらしさだったが、今年はちょっと極端な結果が出ている。11試合で13安打を記録しているが、5試合が無安打である。つまり、打つ日はまとめて打つが、打てない時はさっぱりなのだ。この数字もまだ、評価するにはサンプル数が足りな過ぎるが、これまでとは違うシーズンのスタートと言える。

今月の注目

ヘクター・ノエシ投手 Hector Noesi 背番号45

オフにマイケル・ピネダとのトレードでマリナーズに移籍。今季初先発となった4月9日は、ダルビッシュ有と投げ合い、初回に4点のリードをもらいながら守れなかった。しかし、14日の先発では8回までアスレチックスを0点に抑えて能力の片鱗を見せた。

 

開幕戦を前に戦力構成を先読み!

(『ゆうマガ』2012年4月号掲載)

  
 日本での開幕戦を終え、アリゾナに戻ったマリナーズは、4月6日にアメリカでの開幕戦を迎える。今年はどんな陣容でシーズンに臨むのか、オークランドで再スタートを切るチームの戦力構成を、新加入の岩隈久志投手、川崎宗則選手の役割にも触れながらまとめてみる。。※本文中のデータは3月15日現在のものです。 
  
 

今シーズンの25人枠予想
25人枠。よく聞く言葉だと思うが、これは、ベンチ入りできる選手の数のこと。大リーグの各チームは、選手を入れ替えながら、25人で長いシーズンを戦っていく。

その25人。例えば、マリナーズはこんな構成だ。

先発5人、リリーフ投手7人、野手13人。野手は、指名打者も含めればレギュラーが9人なので、控えが4人ということになる。

先発5人は、フェリックス・ヘルナンデス、ジェイソン・バルガス、岩隈、ヘクター・ノエシ、ブレイク・ビーバンがキャンプ中盤の時点では有力と見られていて、これにケビン・ミルウッド、チャーリー・ファーブッシュが割って入るかどうか、という状況。おそらく、シーズンが始まっても、同じような顔触れで先発ローテーションを回していくと予想される。

リリーフは、抑えのブランドン・リーグとセットアッパーのトム・ウィルヘルムソンまでは決まりで、あとは流動的だが、シーズンに入ってからもこの枠は入れ代わりが激しくなるだろう。おそらく、チャンス・ラフィン、ジョージ・シェリロ、スティーブ・デラバー、ショーン・ケリー、ショーン・キャンプ、郭 泓志らが、残りの5枠を巡って、争うことになると見られている。


内外野手、捕手、そして川崎は?

内野は、1塁がジャスティン・スモーク、2塁がダスティン・アクリー、3塁がショーン・フィギンスで、ショートがブレンダン・ライアンという布陣。おそらく川崎は、セカンド、ショート、サードの控えという役割を担うことになるのだろう。フィギンスが外野に回る可能性もあるため、その場合は3塁にカイル・シーガーが入る。
外野は、左翼がマイク・カープ、センターがマイケル・ソーンダース、そして、ライトがイチロー。故障しているフランクリン・グティエレスが復帰すれば、ソーンダースがマイナーに落ちる可能性もある。そして、控えはキャスバー・ウェルズか。カープは1塁も守れる。

捕手は一応、正捕手がミゲル・オリーボで、控えがジョン・ジェソ。指名打者のヘスス・モンテロも捕手なので、週に1回ぐらいはマスクを被るかもしれない。

当たり前のように書いたが、3月15日の時点で川崎はまだ、マイナー契約である。しかし、オープン戦が始まってから、6試合連続ヒットを放つなど、存在感をアピール。ルイス・ロドリゲスにも差を付け、ライバルだったカルロス・ギーエンが引退したため、彼が25人枠のマリナーズの一員になるのも時間の問題だ。


イチロー3番の新打順

さて、打順はどうなるか? キャンプの早い段階で、エリック・ウェッジ監督は、イチローの3番を発表。1番にはフィギンスを起用し、2番にはダスティン・アクリーを置くようだ。

3番がイチローとして、4番以降が流動的だが、おそらくスモークが4番で、5番にモンテロ、6番にカープが入りそう。そして7番以降は、オリーボ、サンダース、ライアン、という順か。

4番以降は、相手投手によっても多少の変動がありそうだが、ひとまず1~3番に関しては固定して戦っていくようである。

ただ、フィギンスが仮に今年も不振なら、アクリーが1番候補。2番はライアンか。川崎が出場する場合は2番、もしくは9番という打順が有力だ。

こうしてみると、実のところ、昨年との大きな変化はモンテロぐらい。よって今年も得点力が課題となりそうだが、その克服のための「イチロー・3番」である。新打順が機能するかどうかが、しばらくは注目される。ちなみに岩隈のメジャーリーグ・デビューは、4月9日のレンジャーズ戦が有力だ。仮にダルビッシュ有投手がレンジャーズの先発4番手となるのなら、岩隈との対決が早くも実現することになる。

今月の注目

ヘスス・モンテロ捕手 Jesus Montero 背番号63

オールスターにも出場したマイケル・ピネダとのトレードでヤンキースから移籍してきた。ヤンキースと契約したのは2006年。当時16歳で、ベネズエラ出身の選手としては史上最高額で契約したことから注目を集めた。打撃はすでにメジャーでも通用するレベルと言われるが守備が課題となっている。

丹羽政善
1967年愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務ののち渡米。インディアナ州立大学スポーツマーケティング学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBA、ゴルフなど、現地のスポーツを精力的に取材、コラムや翻訳記事の配信を行う。日本のメディアでは、『サンケイスポーツ』『日本経済新聞』などを中心に活動。海外メディアではかつて、「ESPN.COM」などに寄稿している。著書に『メジャーの投球術』(祥伝社)、『MLBイングリッシュ~メジャーリーグを英語のまま楽しむ!』(ジャパンタイムス)、『メジャーリーグビジネスの裏側』(キネマ旬報社)がある。在米生活は今年で17年目を迎える。