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岩隈投手とシアトル・マリナーズ

※このページは、2012年からシアトル・マリナーズに在籍している岩隈久志選手の活躍ついて、当時に作成・掲載された記事を基に再構成したものです。

■2012年2月7日号

1月29日岩隈選手記者会見レポートー岩隈選手がシアトルに!(2012年)

文・写真 / 赤佐遥一

1月最終の週末に開催されたファンフェスティバルに合わせて、楽天からフリーエージェント(FA)して2012シーズンからマリナーズに加入する岩隈久志選手(30)がシアトルに来ました!セーフコフィールドにて入団記者会見が行われました。

午前11時45分からの会見に合わせて、少し余裕を持って球場入り。メディア用の入り口を通され、「MEDIA」と書かれた名札を受け取りインタビュールームへ。日米ともに多くの報道陣が集まり、テレビ放送用のカメラも設置されていました。ベテランさんとも思える記者やカメラマンの方が前方に陣取る中で、自分も負けまいと意気込んで前列の席を何とか確保。慣れない中で、スタートまで時間があってじっとしているのも違うと感じたので、写真を撮る練習を兼ねて会場の様子をやたらにカメラに収めていました。(笑)

インタビュールーム前方の壇上には、岩隈選手が着用するであろう背番号「18」のついたマリナーズのユニホームがハンガーにかけられていました。
このユニホームを着てポーズを決める時には会場にいるカメラマン全員がシャッターチャンスを逃すまいとポジショニング争いになるんだろう、そんなことを考えながらシミュレーションをしつつ、到着を待つことしばらく…。

11時50分過ぎ、岩隈選手が記者会見場所に到着。「おー本物の岩隈だ!」と思い、入って来るなりカメラのフラッシュでまばゆいばかりでしたが、当の岩隈選手はカジュアルな服装にマリナーズのグランドコートを着込んでの登場でした。

登壇されるやいなや、最初の挨拶は何と英語で!通訳の方がそばについていたので、岩隈選手自身はその後は日本語での受け答えでした。それでも、会見の中での言葉にもあったのですが、何とか英語をマスターして話せるようになりたいということで、円滑なコミュニケーションを図ることのできる必要性を感じているようでした。

会見は終始淡々と進行。「自分を必要としてくれていることを感じた」ということをマリナーズを選んだ理由に挙げられていたのですが、決め手になったのは「ゼネラルマネージャーと直接会って食事をしながら話をして、それで先発として必要としてくれていると感じた」という部分だと話されていました。また、新しいシーズンを迎えるにあたっての心境を聞かれると、「まずはメジャーリーグで投げることが楽しみで、その中で結果を残していきたい。強い気持ちを持って戦いたいので、本当に結果を残して、東北でお世話になった人に対して恩返ししていきたいという気持ちもありますので、そういう強い気持ちを持ってプレーしていきたいと思います。」とおっしゃっていました。

すらっとした身体から投げ下ろされる豊富な球種を武器に、強力なメジャーリーグ打線を手玉に取っていく様子は観ていて痛快だろうな、と早くも岩隈投手がセーフコグラウンドのマウンドに立っている姿を想像してしまいました。

初取材の結果ですが・・・ボイスレコーダーをマイク台の上に置いておけばよかった、と記者会見が終わってから反省。あと写真を収める時のポジショニングも、もう少し攻めれば良い角度から撮れただろうと痛感。何事も学びということで、記者会見場での初取材は良き経験となりました。

取材の後はファンフェスティバルにも参加し、念願の岩隈選手のサインボールをゲットすることができました!多くの人にとっても岩隈選手は注目の的で、1時間以上長蛇の列に並んだ甲斐がありました。

岩隈投手には、これからシーズンを通してチームを引っ張っていって、活躍してほしいものです!

 

岩隈、川崎がマリナーズと契約

(『ゆうマガ』2012年3月号掲載)

  
 今年は日本で開幕を迎えるマリナーズ。岩隈久志、川崎宗則の加入で日本人には見どころが増えた。まずは2月半ばから始まるキャンプで彼らの役割がどうなるのかに注目したい。マイケル・ピネダの移籍により、岩隈が日本で先発することもありそうだ。※本文中のデータは2月15日現在のものです。 
  
 

日本人選手のマリナーズ入団
今年に入り、岩隈と川崎のマリナーズ入団が相次いで決まった。城島健司(現阪神)が2009年の秋に退団してから、マリナーズの日本人選手はイチローひとりだったが、一挙にふたりも増えたことになる。ただし、現時点で川崎はマイナー契約で、キャンプには招待選手としての参加。マリナーズのユニホームを着られるかどうかは、キャンプでの結果次第だ。

岩隈は、先発ローテーションの一角を期待されている。日本での実績は11年で107勝69敗、防御率3.25。2008年には21勝をマークし(4敗)、沢村賞も獲得。2009年のワールド・ベースボール・クラシックでは1勝(1敗)だったものの、韓国との決勝では8回まで投げるなど、やや不安定だった日本人投手陣の中で、抜群の安定感を誇った。

昨年5月から7月まで、肩の故障で2カ月ほど戦線離脱。それが、実績と比較して格安の年棒(150万ドル)でマリナーズと契約した理由だが、本来のピッチングを見せられれば、ピネダがニューヨーク・ヤンキースへトレードされたため、フェリックス・ヘルナンデスに続く2番手の先発として起用されるかもしれない。そうなれば当然、東京ドームで行われる開幕2連戦のいずれかに、先発としてマウンドに立つことになるだろう。


川崎の行方にも注目

メジャーに昇格した場合は、メジャー契約に切り替わるスプリット契約を結んだ川崎は、現時点でブレンダン・ライアン遊撃手の控えという役割だ。しかし、1塁を除く内野の全ポジションのバックアップができるとチームは見ており、いわゆるユーティリティ・プレイヤーという位置付けか。

レギュラーとして出場するとしたら、現時点でレギュラーが決まっていない3塁の可能性がいちばん高い。ショートにはすでに触れたようにライアンがおり、セカンドにはチームの将来を担うダスティン・アクリーがいて、付け入る余地はない。
3塁の候補には、ショー
ン・フィギンスとカイル・シーガーがおり、川崎は彼らと争うことになるが、チームは昨年からフィギンスのトレードを試みているので、実現すればシーガーと川崎の争いとなり、定位置争いに敗れた方が、内野の控えに回ることになりそうだ。

シーガーは昨年デビューしたばかりだが、マイナーでの実績は十分。昇格してもポテンシャルを感じさせる働きを見せた。対して川崎がどの程度の実績を残せるかは未知数。ふたりの勝負の行方は、キャンプでの結果次第だろう。もちろん、フィギンスが残れば、争いはますます混沌とする。


今後の展開に期待

ところで、ふたりの契約には、日本での実績を考えると、マリナーズには“お得”としか言いようがない。すでに触れた通り、岩隈の年棒はわずか150万ドル。最高340万ドルの出来高がつくが、一昨年、彼がポスティングされた時に、オークランド・アスレチックスが1,910万ドルを投じて落札したことを考えれば、破格である。もちろん、チームは右肩の懸念を払拭しきれていないのだろうが、それでも150万ドル程度ではリスクとは言えない。

川崎にしても、昨季の打率は.267だったが、11年の通算では.294。マリナーズは他チームとならばメジャー契約を結べたであろう選手をこれまた、リスクなしで獲得できた。

当面のふたりの目標は、岩隈は日本で行われる開幕戦のマウンドに立つことで、川崎はもちろんマリナーズの一員として日本に行くことだろう。実現すれば、日本での開幕戦も盛り上がるに違いない。
イチローもそんなふたりの契約を歓迎し、地元メディアでは、ふたりの加入がイチローを良い意味で刺激し、また元のイチローに戻るのではと期待を寄せている。

なお、マリナーズのキャンプは、岩隈らバッテリー陣が2月12日、野手組は2月18日スタートとなっている。

今月の注目

岩隈久志投手 Hisashi Iwakuma 背番号18

1999年に近鉄入り。2004年、近鉄とオリックスが合併されると、同じ年に新規参入した楽天へ移籍。2010年シーズン後、ポスティングによる大リーグ移籍を目指すもアスレチックスとの入団交渉が決裂し残留。今回はフリーエージェントとしてメジャーへの挑戦を目指し、今年1月、マリナーズと契約した。

丹羽政善
1967年愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務ののち渡米。インディアナ州立大学スポーツマーケティング学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBA、ゴルフなど、現地のスポーツを精力的に取材、コラムや翻訳記事の配信を行う。日本のメディアでは、『サンケイスポーツ』『日本経済新聞』などを中心に活動。海外メディアではかつて、「ESPN.COM」などに寄稿している。著書に『メジャーの投球術』(祥伝社)、『MLBイングリッシュ~メジャーリーグを英語のまま楽しむ!』(ジャパンタイムス)、『メジャーリーグビジネスの裏側』(キネマ旬報社)がある。在米生活は今年で16年目を迎える。