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城島選手とシアトル・マリナーズ

※このページは、2006年から2009年までシアトル・マリナーズに在籍した城島選手の活躍ついて、在籍当時に作成・掲載された記事を基に再構成したものです。
 

マリナーズ入団記念/スポーツ・アナが語る城島健司選手(2006年)

  
 ストーブ・リーグが始まるやいなや飛び込んできた、城島健司捕手マリナーズ入団のニュース。正捕手・城島に期待を寄せるシアトルの人に向け、福岡と敵地で彼の動きを追っていた日本のスポーツ・アナウンサーが「城島選手」のこれまでとこれからを独自の視点で語る。(文・加藤暁) 
  
 

城島健司 Kenji Johjima

1976年6月8日長崎県生まれ、別府大附属高校出身。’95年ダイエーホークス入団後’99~’01、’03、’04年ベストナインに。’99~’04年ゴールデングラブ賞、’03年MVPを獲得。’04年通算1,000本安打、’05年6月通算200本塁打を達成。今季FA権を取得し、シアトル・マリナーズに入団。

入団から捕手の3割バッターが誕生するまで

城島健司は’94年ドラフト1位でダイエーホークス(現・ソフトバンク)に入団。当初から打撃には非凡なものがあったが、王貞治監督の方針から、最初の2年間は二軍で捕手として経験を積む時期に充てられた。

3年目の’97年からようやく一軍起用され120試合に出場。打撃に関しては申し分ない成績を“1年目”から残した。打率.308は高卒3年目としてはハイレベルな数字。しかも重責を担う捕手でこれだけ打てるのは、プロ野球史上捕手の3割打者が13人しか誕生していない(当時)という事実を持ち出すまでもないだろう。

「何かやってくれそう」

城島の打撃面での魅力は、本人も言う「打てるところがストライクゾーン」というストライクゾーンの広さと勝負強さ。

私も最初のころは「また城島、とんでもないボール球に手を出しました」と実況することが多かったが、技術が伴ってくると「こんなボールもヒットにしました!」。チャンスで城島に打席が回ってきた時は、たとえその日無安打でも、何かやってくれそうな予感がし、得点が入る心づもりでその打席をより集中して実況していた。

先輩から教わり、先輩から盗んだ野球

しかし球団が期待していた捕手・城島は、初めから今のような評価を受けていたわけではなかった。1997年のいわば「訓練期間」が終わると、結果が問われる時期となった。当時の新聞記事を見てみると、『城島 また屈辱の途中交代』などという見出しが飛び込んでくる。リード面で再三にわたり首脳陣の怒りを買い、「野球をなめてるのか、この野郎!」と叱責されることもあった。

当時のダイエーには、工藤公康(巨人)、武田一浩(現・解説者)という球界を代表するベテラン投手が在籍。彼らの存在は捕手・城島に大きな影響を与えた。工藤は「打たれる」とわかっていても、あえて城島の要求どおりに投げ、打たれた。そしてベンチに戻る際、城島を呼んで「なぜこの場面でこの球、このコースを選択したのか」など1球1球の意図について問いただし、自らの考えと合わせ城島に学習させたのである。

城島も受身だったわけではない。彼らベテラン投手が食事に行く話をしていれば、食事に誘われていなくてもずうずうしく付いて行き、彼らとの話の中から野球を吸収していったのである。来るなと言われても付いて行った時もあったそうだ。そんな執念と大胆不敵さが城島の一番の持ち味である。

マリナーズ城島誕生と見どころ

1999年、ダイエーが初優勝するころには、球界を代表する捕手になった城島。2003年にはパ・リーグの捕手最高打率.330をマーク(翌年に自ら更新)。自ら掲げた「スーパー・キャッチャー」にまた近付いた。

そして今年、日本人捕手初のメジャー挑戦。バッテリー間の意思疎通の問題なども言われているが、城島に関しては、物怖じしない性格が言葉の壁を越えたものを生むだろう。彼が国籍の違う投手達とどのようにコミュニケーションを取っていくか、そして打率や本塁打数以上に勝負強い打撃、この辺りに注目したい。

加藤暁 Gyo Kato
’94年九州朝日放送(福岡県)入社。ダイエーホークスの実況を中心にスポーツ・アナウンサーとして活躍。’02年フリー・アナウンサーとして独立。SKYPerfecTV!を中心にプロ野球(年間約50試合)、サッカー(年間約100試合)など国内外問わず各種スポーツを実況。34歳。

 

城島に期待したいこと(2006年)

  
 昨年、マリナーズは7人もの捕手がマスクをかぶり、ジェイミー・モイヤーは「全部の名前を言えない」と笑った。もし城島が正捕手の座を守ってくれれば、それだけでもうれしいことだ。
ただ、それ以外にも、彼が教えてくれるであろうメジャーの違う見方に期待したい。
(取材・文/丹羽政善)※本文中のデータは2月15日現在のものです。
 
  
 

城島人気、早くも

先月号の速報どおり、1月24日に行われた入団会見で、城島健司選手はシアトルのメディアやファンに好印象を与えた。28・29日に行われたマリナーズ・ファンフェストでは、そのニュー・フェイスのサインをもらおうと、早朝から多くの人が列を成し、両日共先着500人に配られた整理券は、あっという間になくなった。早速売り出されたユニホーム、Tシャツなども好調な売れ行きと聞く。ファンの期待は2日から始まるアリゾナ州でのオープン戦を前にますます高まっているはずだ。

捕手が伝えるメジャーに期待

個人的に期待したいことがひとつある。それは、捕手というポジションを通して、メジャーの野球を伝えて欲しいということ。
じつは24日の会見の席上で、城島はこんな話をした。マリナーズの投手の印象を問われると「早くボールを欲しいピッチャーもいれば、常にボールを触っておかなければならないピッチャーもいますし、ボールを返すタイミングというのも違う」。
日米の差を聞かれると、「現段階では、(メジャーは)ピッチャーの一番良いボールを投げさせるスタイルだと思っています。相手の弱点というのはもちろんあるとは思いますが、ピッチャーが投げたいボールをキャッチャーがいかに要求できるか……」 と、語った。
共にキャッチャーだからこその視点。これまで日本人は、イチローや松井秀喜、長谷川滋利や野茂英雄などを通じて、外野手、打者、投手の視点でメジャーに触れてきた。当然ながら、これまで捕手の視点でメジャーを語ってくれる選手がいなかったわけだから、城島のひと言ひと言は、非常に新鮮である。知ったつもりでいたメジャーリーグという世界を再認識させられる人も多いだろう。
期待はそこ。彼には正捕手としての見方で、メジャーを伝えて欲しい。それでファンが、また新たなメジャーの醍醐味を知る。城島にもその期待を伝えると「まずは、味方の投手に自分を伝えることで精一杯ですよ」と笑ったが、取材側としては、ぜひそれを引き出したい。

イチローのキャンプ・インは?

一方、マリナーズと離れて調整を行うイチローは、日本時間3月3日に日本で始まるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)のアジア予選に出場する。したがって、マリナーズのキャンプ地であるアリゾナ州ピオリアに到着するのは7日ごろの予定だが、日本がアジア予選を勝ち抜けば、日本の代表選手として調整を続けるため、同じピオリアで練習をするものの、マリナーズと正式に合流をするのはWBCが終わってから。12日にはアナハイムで決勝リーグが始まり、そこを勝ち抜いた場合、18日からサンディエゴで始まる決勝トーナメントに出場する。日本チームがそこまで駒を進めれば、イチローがマリナーズのユニホームに袖を通すのは、早くて21日。マリナーズのオープン戦を見ようと思っている人には、スケジュールが立てづらいが、日本がアジア予選をトップで勝ち抜いた場合、8日に日本代表対マリナーズの練習試合が行われるので、そこを狙いたい。
懸念は、チームへの合流が遅れること。21日に合流しても、イチローがマリナーズのユニホームを着て調整できるのは10日程度。コンディションはWBCに参加しながら整えられるが、連携プレーの練習などに支障が出そうだ。ただ、マイク・ハーグローブ監督は「まったく心配していない」と話し、「彼なら、開幕までにきっちり仕上げてくれるだろう」と全幅の信頼を置いている。まったく同感だ。
なお、3月31日にはポートランドでオープン戦の最終戦が行われる(※)。チケットの発売は3月4日、売り切れ必至なので、購入は早めに。
※3Aのポートランド・ビ-バースを相手にPGEパーク(7:05 p.m.開始)で開催予定。
チケット購入:TEL:503-224-4400
www.ticketmaster.com
ウェブサイト:www.pgepark.com/beavers/

丹羽政善
『スポーツ・ヤァ!』や日本経済新聞、MAJOR.JP、ESPN.COMなどに寄稿するスポーツ・ライター。
Mariners Updateの執筆は2000年3月より。