世界中を熱狂させたワールドカップ・南アフリカ大会は、スペインの初優勝で幕を閉じました。 スペインは、グループ・リーグ初戦のスイスに破れましたが、そこから見事にチームを立て直し、オランダとの決勝は、延長戦の末、アンドレアス・イニエスタの決勝ゴールで勝利を掴みました。 イニエスタは1984年生まれの26歳、スペイン代表、所属クラブのFCバルセロナでも攻撃を牽引する素晴らしい選手で、私のいちばん好きな選手でもあります。 身長170センチと、我々日本人と比べても小柄で、決してフィジカルが強いわけでもなく、スピードがあるわけでもありません。そんな彼が世界の超一流選手として活躍できる理由として、以下4つの特徴が挙げられます。 ①非常に頭が良く、状況判断の速さがずば抜けていること ②卓越したボール・コントロール能力 ③リラックスして力みがない、相手選手に動作を読ませない身体操作 ④圧倒的な運動量の多さ 上記のような事柄は、日本人選手も学べる点が非常に多いと感じます。 そして、「W杯、ベスト4」という目標を掲げて臨んだ我らが日本代表。初戦の対カメルーンは1-0で勝利、2戦目の対オランダは0-1で敗北、3戦目の対デンマークは3-1で勝利し、グループ・リーグを突破。しかし決勝リーグの対パラグアイ戦ではPK戦まで持ち込むものの負けを喫し、結果はベスト16でしたが、それぞれの戦いを通じ、日本の良い部分と今後の課題も見つけることができました。 日本は、大会前の強化試合で4連敗を喫したことで、ある意味吹っ切れた部分がありました。それは、普通にプレーしたのでは、世界の強豪から勝利することは難しいということです。 ワールドカップが始まる前、私はこのコラムに、日本が勝つためには「徹底した組織プレーとそれを最後までやり切れる心身の強さを持った選手が必要不可欠です」と書きましたが、そこへは十分到達していたように思いました。 本番では、理想を捨て現実主義に徹し、岡田監督以下選手全員がひとつの方向を向いて動き出し、全員で徹底した組織守備を行い、相手より走ることで、カメルーンとデンマークに勝利し、準優勝のオランダを苦しめました。決勝トーナメントでは、パラグアイにPK戦の末破れましたが、日本の運動量は最後の最後まで落ちることはありませんでした。 実際にFIFAが公表したデータによると、日本のグループ・リーグ3戦の総走行距離は、出場32チーム中2位(331.45キロ)で、中でも遠藤保仁の33.224キロは、世界でも最高クラスの運動量、日本の中盤を支えました。そして、2ゴールを決めた本田圭佑も32.489キロ走り、日本で2番目の運動量を誇って、大会前の「できれば守備はしたくない」というコメントを覆し、攻守に大貢献しました。そして、チームワークとフリーキックという日本の武器を世界に知らしめることができたと感じます。 今後の課題としては、運動量と組織守備を維持しながら、試合で生かせる個々のスキルと判断の速さを向上させ、チームでのボール保持率を上げることで、もっとたくさんのチャンスを作り出すことが可能になるでしょう。そして、次のワールドカップ・ブラジル大会では、ベスト8、4が近づいてくると期待します。 ワールドカップを通じ、日本人のあきらめない心、相手に食らい付いていく姿勢に感動し、勇気をもらった熱い1カ月でした。 |
コメントを書く