オレゴン州在住の日本人ライターが、食、自然、文化と魅力あふれるオレゴンを、ローカルの視点から紹介。(2012年掲載記事)
*掲載の情報は( )に記された年月時点のものです。
*連載は2013年6月に終了しています。
今月のレポーター/大石洋子 |
クリスマスが嫌い。
などと言ったら、悪人みたいに聞こえるだろうか。でも、嫌いなものは嫌い。人々は浮き足立っているし、道路も店も郵便局も、どこもかしこも混んでいるし。ツリーを買いに行って、それを立てて飾り付けるのは大仕事だし、猫がオーナメントをいじって落っことすし、針みたいな葉がばらばら落ちて、しょっちゅう掃除機をかけなければならないし。
この国に親戚がいない我が家は、大量のプレゼントを買いに奔走する必要はないが、アメリカ人は大変そうだ。義理の家族だのいとこだのにまでプレゼントを用意しなければいけないらしい。その強迫観念たるや、日本の義理チョコをしのぐ勢いで、もはや、あげることにのみ意義があるという感も。毎年義理の母親から服をもらうものの、まったく趣味が合わないから、グッドウィル(リサイクル・ショップ)に直行――などと言っている友人もいたりする。何やってんだか、と言いたくなる。
「買え、買え、買え」と追いまくられるような気がする12月。景気を良くするためには必要なのかもしれないが、アメリカの商業主義が頂点に達するこの時期、一抹の虚しさも感じる。
いい人ぶるつもりはないが、クリスマス・プレゼントのリストに「寄付」も加えてみてはと思うのだ。ただでさえ物入りの時期、出ていくお金を少しでも抑えようと必死になっているのに寄付なんてお門違い、と言われてしまうかもしれない。でも、こういう時こそ、救いの手を必要としている人々がいることを忘れずにいたいではないか。自分たちが無事にクリスマスを迎えられることに感謝し、見えない誰かのためにプレゼントを贈ってみるというのはどうだろう。
毎週水曜発行のコミュニティー・ペーパー『ウィラメット・ウィーク』が、この時期、“Give! Guide”というチャリティー運動を展開する。ポートランド地域に数ある非営利団体のために寄付を募るというものだ。動物、アート、教育、コミュニティーなどなど、その分野は多岐にわたる。
寄付の仕方は、簡単。サポートしたい団体をウェブサイトで選んで、自分の好きな額を寄付するだけ(ミニマム$10)。クレジットカードが使えて、しかも税控除対象。寄付した額に応じて、ポートランドのあちこちの店で使えるクーポンがもらえるというオマケ付きだ(クーポンの数には限りあり)。去年の寄付総額は、159万ドル余り。5千人以上ものポートランダーが、この運動を通して思い思いの非営利団体に寄付をしたそうだ。ちなみに今年は団体数110、総額は175万ドルを目指す。
以前、近所でクリスマス・プレゼントをやり取りするようなところに住んでいたことがあるのだが、ある年、ご近所さんのひとりが、「この近所の名前で○○という団体に寄付をしました」と書いたカードを持ってきた。最初は「へ?」と面食らった。が、考えてみれば、「ちょっとしたプレゼント」の交換は、ややもすると「いらぬモノが増えるだけ」になりかねない。これはスマートで、しかも世の中のためになるなあ、と感心したも
のだ。
今年のクリスマス、何をあげようか悩む相手には、いっそ「あなたの名前で寄付しました」としてみては? 案外喜ばれるかもしれない。
■Willamette Week によるGive!Guide
http://giveguide.oaktree.com/welcome.aspx
※寄付は12月31日まで受け付ける。
今月のレポーター/大石洋子 |
ちょっと前、ジョン万次郎についての本を読んだ。『Heart of a Samurai』という本。名前ぐらいしか知らない程度の人だったが、この本を読んで、いろいろとわかった。万次郎は、仲間と漁に出て遭難し、無人島で暮らしているところをアメリカの捕鯨船に助けられたのだ。西洋人を野蛮人と恐れ、外国人と関わった者は投獄あるいは処刑という鎖国時代に、日本の少年がアメリカに渡る話はとても興味深く、一気に読んだ。
ジョン万次郎についていろいろと知ったほかにも、この本のもたらした功績(というほど大袈裟なものではないが)がある。それは、我が家のナイフを久しぶりに研いでもらおう、と思い立ったこと。
作品の中盤、アメリカに渡った万次郎が、アメリカ人の友人の前で魚をさばいて見せる場面がある。その手つきの良さに目を見張る友人に万次郎は、「よく切れるナイフを使うのがまず第一」と言う。それで私は思わず、ウチの切れないナイフを恥じたというわけ。
思えば、ウチの包丁がよく切れていたのは買った直後だけだ。その後、ろくにメンテナンスもせず、切れないと思ったら、湯飲み茶碗のざらざらした糸底で研いだりしていた(力余って左手の親指を切り、救急に駆け込んだことも)。ネギが切れずにつぶれるのを見かねて、友人が日本から簡易研ぎ器を送ってくれたりもしたので、だましだまし使ってきた感じだ。
そういえば包丁だけでなく、環境意識の高いポートランダーに刺激を受けて手押し芝刈り機を買ってみたものの、すぐに切れなくなって困ったこともあった。
そこで、万次郎を見習って、まずはウチの包丁を研いでもらおうと思い立ち、ポートランド周辺の研ぎ屋さんを調べた。リサーチの結果をお伝えしよう。
■Zen Blades オレゴン・カリナリー・インスティテュート(OCI)で、料理人を目指す生徒達にナイフの使い方を教えるウディさんによる包丁研ぎサービス。OCIに午前中に預ければ、同日中に仕上がることも。
TEL : 503-816-3913 www.zenblades.com
■Sharpening4U 以前はバンで町中を回ってレストランのナイフを研いでいたが、イースト・サイドに店を構えた。庭の手入れや園芸に使う道具の歯なども$5前後で仕上げてくれる。
TEL : 503-962-0574 www.sharpening4u.com
■Knife Guy, Garden Fever NEのガーデン・フィーバーという園芸店で、マイク・クラフトという研ぎ屋さんがナイフを受け付ける。隔週のサービス。
TEL : 503-287-3200 www.gardenfever.com
■Rose City Cutlery バンでウィルソンビルやNEの何カ所かを回り、ナイフを受け付ける。バンのスケジュールや場所はサイトで確認のこと。
TEL : 503-887-3273 www.rosecitycutlery.com
■Excalibur Cutlery and Gifts ロイドセンター、ワシントン・スクエアに店を構える。騎士の鎧が目印。ナイフは常時受け付ける。
TEL : 503-639-2151(ワシントンスクエア)www.excaliburcutlery.com
■Pearl ACE Hardware ダウンタウン、NWにある金物店。店の奥のサービス・センターでナイフを常時受け付ける。
TEL : 503-228-5135 www.uptownhardwareinc.com
どこでも料金はナイフの大きさによるが、普通の家庭で使うナイフなら、3ドルから。仕上げまで何日掛かるかなど、ナイフを持ち込む前に電話で確認することをお勧めする。包丁以外に、芝刈り機の歯、ハサミや鎌などを研いでくれるところもある。芝刈り機の歯など、研いでもらえるとは知らなかった。
上記以外にも、金物屋や肉屋などで研いでくれることもあるので、探してみよう。どんな道具も、メンテナンスが大事なようだ。
今月のレポーター/大石洋子 |
猫カフェなるものをご存知だろうか。アメリカではなくて、日本の話。
「おかえりなさい、ご主人様」と迎えてくれるメイドカフェや執事カフェ、懐かしいメニューが並ぶ給食カフェなどの変わり種カフェについては小耳に挟んでいたが、現代日本には、猫カフェというものがあるのだそうで。リビングルームのようなしつらえのカフェに猫がいて、店内をうろうろ歩き回ったり、ごろりと寝転がっていたり、ということらしい。
「猫カフェの猫は、人ズレしちゃっているんですけどね」とは、猫カフェ利用者である知り合いの談。猫が好きだけれど自宅では飼えないので、時々猫カフェで好きなだけ触ってくるという。不思議なことが商売になるものだ。
ポートランドでは猫カフェは聞いたことがないけれど、猫がいる本屋ならある。マルトノマ・ビレッジのアニー・ブルームズ・ブックス。1978年から続く個人経営の本屋だ。落ち着いた雰囲気の店内には選りすぐりの本が並び、そしてカウンターの脇には猫店員、モリーの定位置がある。モリーは3歳の黒猫で、私が行くとたいてい寝ているが、これでも一応店内を監視するという任務を帯びているらしい。
この本屋のことを知ったのは、我が家の8歳の娘が近所のおばあさんからもらった誕生日プレゼントの本がきっかけだった。「どんな本が良いかよくわからなかったので、店の人に聞いたのよ」と2冊の本をくれたのだが、どちらも娘のレベルにちょうど合っていて、しかもとても面白い本だったのだ。
こういう本を薦める店員がいる本屋はいいなあと好感を持った。そして、さらなる好印象のポイントは、その本屋のしおり。黒い猫の顔の上半分がしおりの上部に印刷してある。読みかけのところにちょっと上部を出して挟むと、黒猫が、まるで「読んで」と言わんばかりに、こちらをじーっと見つめているという具合。
「このしおりがもっと欲しい」と言う娘を連れて店に行ってみたところ、しおりと同じ黒猫店員がいて、娘は大喜び。ウェブサイトにあるスタッフのオススメ本コーナーに、猫のモリーのオススメ本も掲載されているのがユニークだ。
猫好きにとっては猫がいるというのはボーナス的な楽しみだが、この本屋の真骨頂は、その隅々まで行き届いた雰囲気だ。大きなチェーン店とは違ってスペースが限られているから、なんでもかんでも置いているというわけではない。よく吟味された本だけが並んでいる。
さらに無料ギフト・ラッピングがあり、本が贈り物になるのがうれしいといわんばかりの様子の店員が、きれいな包装紙で手早く包んでくれる。また、名前、住所、電話番号などを登録すると、毎回の購入金額が積算され、$100に達すると5オフの割引券がもらえる(登録は無料)。子供用プログラムもあり、上記の基本情報と子供の誕生日を伝えておくと、誕生月に割引券が送られてくる。大手の本屋に対抗するための割引システムなのだろうが、どんどん利用して、この個人経営の本屋を支援したいと思っている。猫好きはぜひ。猫好きでない方も、ぜひ。
■Annie Bloom’s Books
7834 SW Capitol Hwy., Portland, OR 97219
TEL : 503-246-0053 www.annieblooms.com
営業時間:9:00 a.m.~10:00 p.m.(土、日曜~9:00 p.m.) 休み:なし
今月のレポーター/大石洋子 |
ハチドリを堪能した夏だった。キッチン・テーブルから見える所に植えたケープ・フクシアが、今年からたくさん花を付けるようになったのだ。これは、ハチドリの大好物。毎日のようにやって来ては、長いくちばしを赤い花に差し込んで蜜を吸う姿を見せてくれた。
ハチドリは、1秒間に2、30回羽ばたくそうだ。心臓の鼓動は、普通の時で1分に600回、飛んでいる時にはその倍にも。足は退化してしまっていて、枝に止まることはできても、歩くことはできない。始終、忙しく羽を動かしているから、エネルギーの消費が激しい。それを補うため、1日に自分の体重の4%くらいエサが必要だと聞いた。
これらはテレビのハチドリ特集から仕入れた知識だが、こんな生態を知ってからというもの、ハチドリを見掛ける度に「頑張れ!」と声を掛けている。花が少なくなる冬場にはフィーダーを買ってやろう、と心に決めた。私はけっこう鳥が好きなのだ。幼いころには十姉妹や手乗り文鳥、インコなどを飼っていたし。裏庭にしつらえたバード・フィーダーがリスに襲撃されてめちゃくちゃにされるたびに場所を変え、フィーダーをグレードアップし、リス除けの傘などを買い足してきた。
そんな鳥好きの私が、今年こそは見てみようと思っているのがスウィフト(Swift)。これは、アマツバメの一種だそうで、体長は10センチほど。この時期、ポートランドNWにあるチャップマン小学校で見られる。
スウィフト達は、1980年代初めごろから、毎年9月になるとこの小学校の煙突にやって来るようになった。南方に渡っていく前にここに立ち寄っては、いつ本格的に渡っていこうかと時をうかがうらしいのだ。
夕暮れ時になると、おびただしい数のスウィフト達がやって来て、煙突の周りを旋回する。世界で最も速く飛ぶことができる鳥だそうで、時速100 ~120マイル出ることも。飛びながらいろいろなことができる。食事はもちろん、寝ることもできるし、交尾だって飛びながら。
普通は、雷に打たれて立ち枯れた木の幹の、中が空洞になった部分に巣を作るそうだ。渡りの途中の仮住まいに選んだのも、ちょうど巣と同じような構造の煙突。そこに夕暮れの空を旋回していたスウィフト達が、まるで吸い込まれていくように次々に入っていく。その様子をテレビで見たことがあるが、何千という鳥がぶつかり合うこともなく煙突に入っていく様子は、まるで魔法のランプに戻っていく煙のよう。合成して作られた映像ではなく、自然に起こっているというのがちょっと信じられないくらいだ。
このスウィフト達を見るべく、毎年たくさんのポートランダーがチャップマン小学校を訪れる。時々、スウィフト達を狙うタカやハヤブサが登場し、人々が一斉に息をのむ場面も。
このポートランドの夏の終わりの風物詩を、私も今年は弁当持参で見に行こうと決めている。9 月いっぱいは見られるようだが、ウェブサイトなどで事前に確認することをお勧めする。また、近隣は住宅地。迷惑行為を控え、ゴミは必ず自分達で持ち帰ろう。
■Chapman Elementary School
1445 NW 26th Ave., Portland, OR 97210
(小学校に問い合わせの電話はしないこと)
問い合わせ:Audubon Society of Portland
TEL : 503-292-6855
http://audubonportland.org/local-birding/swiftwatch
今月のレポーター/林 広祥 |
ポートランド現代美術協会(PICA – Portland Institute for Contemporary Art)主催による「タイム・ベースド・アート・フェスティバル(TBA Festival)」が9月6日(木)~16日(日)まで、ポートランド市内で開催される。
このフェスティバルは今年で10年目。期間中、ポートランドに現代美術のクリエイター達が集結し、市内各地でダンス、音楽、演劇、視覚芸術などのパフォーマンスやビジュアル・アートが繰り広げられるというもの。
今年はアメリカ、日本、メキシコ、クロアチア、セルビア、コンゴ共和国、ドイツ、イタリア、ジンバブエ、フランスからのアーティストの参加が決定しており、去年は来場者を含め、総動員数が2万3千人を超えた。芸術好きな人々でどの会場も埋め尽くされるそうだ。
日本人クリエイター達も参加。9日(日)には、ニューヨークを拠点に活動しているコンテンポラリー・ダンスの振付師、山崎広太氏のカンパニー「Kota Yamazaki / Fluid Hug Hug」による、「Glowing(内のあかり)」が上演される。そのほか、14日(金)、15日(土)の2日間にわたり、岡田利規の劇団「Chelfitsch」による、日本の現代社会をモチーフにした3つの小作品の上演。最終日16日(日)には、サウンド・クリエイターの鈴木昭男、詩人の吉増剛造、ギタリストの大友良英によるライブ・パフォーマンスも決定している。世界で活躍している日本人アーティストを間近で見られるチャンスは貴重だろう。
また、このフェスティバルでは、作品の上演だけでなく、ワークショップ、トーク会といったイベントも開催。「The Works」と呼ばれるビアガーデンで、クリエイター達との“アート談義”に花を咲かしてみるのも実に面白そう。まさにTBAフェスティバルの代名詞「観客とクリエイター達が一体となって楽しめるアートの祭典」にふさわしい催しだ。
普段なかなか生で触れることのできないクリエイター達の作品から、多くの刺激を受けられるTBAフェスティバル。ただ、“コンテンポラリー・アート”と言われてもピンと来ない筆者や読者の方々にとって、このイベントはかなり難易度が高い気もするが、ここはせっかくのチャンス。きっと、新しい扉が開くに違いない。
入場料金は催しによって変わるが、フェスティバル・パス($75~)を購入するのもオススメ。その際、PICAメンバー(入会金$35~)に加入すると$75が$45となるので、ぜひ活用して頂きたい。
PICAでは、1年を通してさまざまなアート・イベントを開催しているので、TBAフェスティバルを皮切りに、ポートランドそして世界各国の現代芸術にどっぷり浸ってみてはいかがだろうか。
■TBA Festival
TEL : 503-224-7422 www.pica.org/tba/
今月のレポーター/大石洋子 |
去年の9月に、ポートランド・ノース地区に住む友人家族に誘われて、サンデー・パークウエイズというイベントに参加した。
そのイベントは、10マイル近い区間を車両通行止めにする、日本でいうところの歩行者天国であった。車やモーターバイク以外なら、自転車やスクーターなどの乗り物でも参加できる。区間内の公園では音楽イベントがにぎにぎしく行われたり、食べ物を売る屋台が出ていたり。住宅地に住む子供達が仕立てたレモネード・スタンドもあちこちに見られた。ちょうど良い天気に恵まれたその日、集まったポートランダー達は、のんびりと散歩を楽しんだり、家族で自転車を連ねて走ったりして、「天国」を楽しんでいた。
2008年にノース地区で始まったこのイベントは、コロンビアの首都ボゴタで毎週日曜に開かれているシクロヴィアという催しにヒントを得たそうだ。これは、70マイルほどの主要道路が片側車両通行止めになり、歩行者や自転車だけが通れるというもの。1974年以来ずっと続いているのだそう。
シクロヴィアに比べると規模もずっと小さく、歴史も浅くてまだまだひよっこという感のあるポートランドのサンデー・パークウエイズだが、目的はふたつ。ひとつは体を動かそう、ということ。そしてもうひとつは、車に頼ってばかりの生活を見直すきっかけにしよう、ということ。確かに、日頃はすっかり忘れてしまっているが、アメリカに住み始めたばかりの頃は、どこに行くにも車で出掛けるしかなくて、まるで靴を履くみたいに車に乗るなあと驚いたものだ。日本では、バスや自転車を利用して最寄り駅に出て、そこから電車で目的地へ行くのが当たり前だったのに、今や、ふと気づけばショッピング・モールの端から端までの移動にも車を使うまでに堕落した。思えば、自分用の自転車を持たなくなって、もう随分になる。
今年のサンデー・パークウエイズには自転車を買って参加しようかなぁーとふと思ったが、しかしながら、頭に浮かぶのはアームストロングばりのカラフルなウエアに、レース用の細いバイク。あんなの乗れないし、あんな格好できないよ……と思っていたら、自転車店を営むという男性がラジオで、「ああいうレースのスタイルで自転車を乗り回すことほどバカげたことはない」というようなことを言っていて、思わず膝を打った。ハードコアのレーサーならいざ知らず、エクササイズ程度の人までがあんな格好をするものだから、自転車が大層なものになって敷居が高くなる、と。「上半身はほとんど動かず、足もくるくる回すだけの運動なのだから、普段着でもっとどんどん気楽に乗り回して欲しい」と言っていた。その通りである。
中古なら$100も出せば良い自転車が買えるとのこと。久しぶりにマイバイクを持とうかな。20年くらい乗っていないけれど、乗り方、覚えているだろうか? 日頃車の窓からしか見ていなかった街の景色が、きっと違って見えるはずだ。
■Sunday Parkways
スケジュールや各地区のルートはウェブサイトで確認を。
www.portlandonline.com/transportation/index.cfm?c=46103
今月のレポーター/林 広祥 |
6月16日(土)、今年も「ワールド・ネイキッド・バイク・ライド(WNBR)」がポートランド市内で開催される……と言っても、あまりピンとこない読者の方も多いのではないだろうか。
参加者全員でサイクリングするイベントなのだが、このお祭り最大の見どころは、イベント・タイトルにある「ネイキッド」から読み取れるように、“裸”でサイクリングすることだ。下着着用などといった甘ったるい裸を想像してもらったら困る。その名の通り、素っ裸でのヌード・サイクリングだ。誤解を招かないように、今のうちに記しておくが、決していやらしいイベントではなく、純粋に、サイクリングを楽しむ目的で毎年開催されている。
日本では絶対にあり得ないこの珍イベント、実はアメリカやヨーロッパなどでは頻繁に行われているそうだ。シアトルでも開催されているらしいが、どのWNBRも、あまり大々的な告知は行っておらず、ウェブサイトでの告知を通して集まった参加者達で実は昨晩行われていた、というようなケースが珍しくない。
今回、このイベントに注目したのは、ポートランドのWNBRが世界最大規模の参加者で開催されているという理由からだ。さすがポートランド、と言いたい。「キープ・ポートランド・ウィアード」(ポートランドの奇妙さを保とう)という有名なスローガンが表しているように、この街にぴったりのイベントではないか。
このイベントを主催している団体シフト(Shift)によると、2010年には過去最高の8千人近くが集まったとのこと。昨年は開催当日、雨が降り気温も低かったため、参加者が通常より少なかったらしいが、今年は1万人を目指すという。
ウェブサイト上には、今年初めて参加する人達への心得が細かく記載されているので、参加者には必ず読んでいただきたい。また、ヌードの目的は「参加者にサイクリングの楽しさをわかってもらうと同時に、石油に依存する現代人の愚かさに気付いてもらうため」とのこと。果たして、そこにヌードであることが必要なのかは疑問であるが、何千もの人々とサイクリングをすることで、自転車の良さを再発見できそうな気はする。
参加者の中には、サイクリング前に体全体にペイントを施し、そのせいで、遠くから見ると裸には見えない人もいる。また、ヌード・サイクリングとは言え、中には下着を着用している参加者もいるそうだ。
事前の申し込みは不要で、その日その場ですぐに参加可能。筆者自身、今はまだ参加するか否か迷っている状況だ。友人や恋人との思い出作りとしては、十分なほどパンチの効いた夜になること間違いないが、ひとりでの参加はさすがに辛そうだ。
現時点で分かっているのは、日にちと9:00 p.m.集合、10:00 p.m.レース開始ということのみで、肝心な集合場所は5月22日の時点で未だ発表されていない。時間の変更もあり得るので、参加希望者、興味のある方は、公式ウェブサイトを頻繁にチェックした方が良さそうだ。
■Portland’s World Naked Bike Ride
https://pdxwnbr.org
今月のレポーター/大石洋子 |
まったく文系でインドア派の私が、健康のために何かエクササイズをと思い、唯一続けているのが水泳だ。以前は25メートルやっとこさ泳げる程度だったが、友人の「歩くように泳ぐ」という言葉に憧れて、水泳の個人レッスンを数回受けた。フォームを教えてもらいためになったが、いちばんの収穫は「ヒレをつけて泳ぐと良いよ」というアドバイス。下手っぴいな私でもぐんぐん前に進むようになった。歩くように、という境地にはまだ至っていないが、続けるうちに持久力も着いて、小1時間泳ぎ続けられるまでに成長した。
少し余裕が出てきたら、最初に買ったダンボの耳みたいに大きなヒレが恥ずかしくなってきた。ほかのスイマー達が持っているような、水かきが小さめの格好良いヒレが欲しくなったのだ。それに水着も新調したい。大手スポーツ用品チェーン店に行ってみたが、ヒレも水着も気に入るものはなかった。いったい皆どこで手に入れているんだろう。オンラインで買うしかないのだろうか。そんなことを思っていたある日、よく立ち寄る地元のショッピング・センターに、マイケル・フェルプスの写真が窓一面に貼ってある店を発見。入ってみたら、JD Penceというスイミング用品専門の店だった。「何をお探しで?」と尋ねる店員に、「ヒレと水着」と言ったら、欲しかったものがどんぴしゃで出てきた。水着のサイズもぴったりだ。懸案事項が一気に解決。最初に訪れたチェーン店は「オーソリティー」と名の付く店だったが、本当のオーソリティーは個人商店のほうだ、とつくづく思った。
同じようなことが、猫用のおもちゃを探していた時にもあった。針金の両端に茶色の紙が付いているだけの「キャット・ダンサー」というシンプルなおもちゃ。チェーン店には、仰々しいプラスチック製のものしかなく、仕方なく買って帰ったら3日で壊れた。その後、たまたま見つけた個人経営のペット・ショップで「キャット・ダンサー」を発見。「これを探していたの!」と言ったら、「そう、これがいちばんよね!」という答えが返ってきた。猫が何を喜ぶのかをよく心得ている。
そんなことが何回かあって、以来、私はなるべく個人経営の専門店を利用するようにしている。品ぞろえが充実しているし、店員がきちんとした商品知識を持っている。自分のビジネスだから、責任感だってある。目当てのものが品切れの時、「次に入荷したら連絡します」と言って、本当に後日電話してくるのは個人の店だけ、と言っても過言ではない。
こういう目で辺りを見回してみると、日ごろ立ち寄るショッピング・センター内には個人経営のテナントが結構入っている。カー用品店、小さなカフェ、額縁屋、スキー用品店などなど。値段の安さでは大型チェーン店にはかなわないだろうが、個人商店には、専門家による選りすぐりの品ぞろえときめ細かいサービスがある。レジの長い列に並ぶ必要もない。
どこに行っても同じようなショッピング・センターばかりで味気ないけれど、よく見てみれば、その中で個人商店が頑張っているのだ。地元のビジネスを応援するつもりで、個人商店を大いに利用しようと思っている。
■JD Pence Swim Shop
10234 SW Park Way, Portland, OR 97225
TEL : 503-292-2346
営業時間:月~金曜 10:00a.m.~6:00 p.m.
(土曜9:30 a.m.~5:00 p.m.、日曜11:00 a.m.~4:00 p.m.)
休み:なし
今月のレポーター/林 広祥 |
「Portlandia」という、TVのコメディー番組をご存知だろうか。サタデー・ナイト・ライブにも出演しているフレッド・アーミセンと、現在、ワイルド・フラッグというバンドのメンバーとして活動しているミュージシャン、キャリー・ブラウンスタインのふたりからなるこの番組、アメリカいちリベラルな街と言われるポートランドを舞台に、実際に居そうな奇想天外なキャラクターに扮し、この街を優しく皮肉りながらも、アメリカ全土にポートランドの魅力を伝えている。番組を見ていると、若干大げさに感じるジョークもあるが、なかなかの好評を得ているようだ。そして何より、ポートランダーの傾向を的確に表現しているところが面白い。
例えば、あるオーガニック・フリークのカップルが、レストランで注文したチキンがオーガニックで育てられた地元産の鶏かどうかを必要以上にしつこくウェイトレスに質問し、挙げ句の果てには店を抜け出し農場まで確認しに行くというエピソード。近年、ポートランドの人々が健康志向であることを、面白おかしく伝えている。実際、ピザ屋にまでビーガン用ピザがあると知った時は大変驚かされたが、そんなこだわりも実にこの街らしい。また、スーパー・マーケットで、ショッピング・バッグを忘れた客をまるで犯罪者のように問い詰めるレジの店員、なんでもかんでもリサイクルしてしまう人のエピソードなども、自然を愛し自転車に乗り、グリーンでエコなイメージが強いポートランドの風景そのものである。
番組には時々ゲストが登場。これまでにポートランド市長や、オレゴン在住の映画監督、ガス・ヴァン・サント(オレゴンを舞台にした映画を数多く作り、最新作「Restless(邦題:永遠の僕たち)」もオレゴンが舞台)など、ローカル・スターが多く出演している。また、実在する店やレストランが登場するのも見どころのひとつだ。
昨今、何かと全米の注目を集めているポートランド。昨年、ニューヨークのウォール街から各地に飛び火した「ウォール街占拠デモ」騒動では、ニューヨークの次にデモが拡大した都市だった。このアクティブな街には、最近、個性的な雑貨屋やカフェも続々と増えている。ポートランドを拠点に活動し、この街を愛してやまない若いアーティストも実に多い。
ポートランド在住の僕と同世代の20代前半の人々を見ていると、皆クリエイティブな自分像を作り上げることに、人一倍の力を注いでいるように見えてしまうことがある。レトロなファッションを身にまといインディー・ロックを聴くなど、人と違うことをしようとした結果、実は皆同じような格好になり、それが、ポートランドのヒップスター的スタイルを作り上げた。ベジタリアンやビーガンも、ファッショナブルな自分を求め迷った挙げ句の選択のように思えてしまうのは、僕の考え過ぎだろうか。
「Portlandia」は3月9日をもってシーズン2の放送は終了したが、DVDを借りてぜひ見て欲しい。既にポートランド在住が長い人にとっては「あるある!」と共感することしかり。引っ越して来て間もない人や、この街をまだよく知らない人にとっては、ポートランドがどれだけ奇妙な街なのか教えてくれることだろう。
■Portlandia
www.ifc.com/shows/portlandia
今月のレポーター/大石洋子 |
昨年10月、お向かいに住むマークが亡くなった。67歳、心臓まひ。私たちがここへ引っ越した時からだから、4年ほどーといっても、最初の1年はあいさつするだけだったので、正味3年くらいの付き合いだった。日中ほとんど開け放したままのガレージ・ドアのところで時折タバコを吸っているマークは、近所に目を光らせているみたいで、最初のうちはなんだか怖い存在だった。
でも、ちょっとずつ距離が縮まり、やがて一緒にボウリングに行ったり、幼い娘のベビー・シッターをお願いしたり。雨の季節は顔を合わせることが少なかったが、夏には毎日のように立ち話をして、「今夜のおかずは?」なんて他愛ないことから、ちょっとした人生相談まで、いろいろと話し込んだものだ。
マークが亡くなったのは残念だったけれど、それを機に、彼の奥さんのクリスティとの付き合いが深まった。もちろんこれまでにも彼女と話す機会はあったが、どちらかといえばマークを介して付き合うという感じだったのだ。それが、夫を亡くしてひとりで暮らすクリスティに時々おかずのおすそわけをしたり、ウチの夫が出張の晩に一緒に食事に行くようになったりして、ぐっと急接近したのである。
そのクリスティが「おいしいハンバーガーを食べに行こう」と誘ってくれたのが、ナンシーズ・キッチン。ダウンタウン、パール・ディストリクトの端っこにある、平日の朝食と昼食、それに週末ブランチの店だ。
酸っぱいピクルスが好きなら絶対にオススメ、というジュニーズ・バーガー($7.95)を注文。クリスティに習って、ピクルスを多めにしてもらった。
「どう? おいしいでしょ?」と、まるでクリスティが自分で作ったみたいに胸を張るバーガーは、ほどよく火が通った1/3パウンドのビーフがジューシー。ピンク色のオリジナル・ソースは、いつものマスタードとケチャップよりも洗練された味わいで、そしてなんといっても、多めに入れてもらった酸っぱいピクルスが味の決め手。何も特別なことをしているようには見えないし、もったいつけた材料が入っているわけでもない。フレッシュな材料を、当たり前に調理してパンに挟んだだけのように見えるのだが、実はそういう食べ物を提供するレストランを見つけるのはなかなか難しい。
シェフのナンシーが、あちこちのテーブルで客とにこやかに話す様子から、なじみ客というかファンが多いということがわかる。
クリスティによると、テイクアウトのキャセロールもおいしいらしく、彼女のお気に入りは、チキンとアーティチョーク。自分のキャセロール皿を持ち込んでそこに作ってもらい、あたかも自分が作ったふりをして持ち寄りパーティーに持っていくのが通とのこと。娘の学校でそういう機会があるたびにメニューに困っていた私は、そうか、その手があったか、と思わず膝を打った。
どうやらこの店はクリスティとその友達のたまり場だったらしい。食事の間、たくさんの人とあいさつを交わしていた。おいしいバーガーに気の置けない友達。明るいクリスティの様子に、ホッとしたランチであった。
■Nancy’s Kitchen in the Pearl
1611 NW Glisan St., Portland, OR 97209
TEL : 503-241-1137
営業時間:火~金曜:8:00 a.m.~4:00 p.m. (土曜~3:00 p.m.、日曜~2:00 p.m.)
休み:月曜
サステイナブルな魚屋さん
今月のレポーター/大石洋子 |
去年の夏の終わりごろのこと。イーストサイドにあるタイ・レストランで食事をした後、車まで歩いて戻ろうとした時に、道の反対側に「Fresh Fish」という看板を見つけた。見ると、駐車場のようなスペースに食べ物屋のカートがいくつか並んでいて、その手前に大きなRVのような車がある。どうやらその中で魚を売っているらしい。
なんだか怪しげで、いつもなら通り過ぎるところであったが、その時はなんとなく興味を引かれて、車に乗り込んでみた。中にはリーフという名の若いオーナーがいて、魚について質問すると、いろいろと熱心に教えてくれた。
問われるままにメール・アドレスを教えたところ、「今週の仕入れ状況」を知らせるメールが来るようになった。そして秋には、店舗を構えたという知らせも。
この店、ただの魚屋ではない。ローカル・サステイナブル・オーガニックという理念を持っている。乱獲されて数が少なくなっている魚は扱わないし、この店の「フレッシュ」の基準は、海で捕ったままの状態を指す(スーパーでは解凍モノを「フレッシュ」として売っていることもあるらしい)。また、冷凍してある魚は、捕ってからすぐに船の上で急速冷凍されたものだ。
ここで買った生のホタテ貝柱が素晴らしかった。刺身にもできるんだろうな、と思いながらホタテ・フライにしたのだが、その白い身はモチモチとした弾力で初めての食感。スーパーで扱われているものは保存料に浸されている場合もあるそうだが、ここのホタテはケミカル・フリー。
「バーベキュー・グリルで10分くらい焼くといいよ」とリーフに教えてもらった殻付きカキは、パカッと開いたところにレモン汁やぽん酢……いくらでもいける感じ。
パシフィック・スナッパー(ロック・フィッシュ)という白身魚もなかなか。リーフは「フィッシュ・タコスにどうぞ」と言ったが、私はオリーブ・オイルで軽くソテーした後、溶かしバターにレモン汁、しょうゆをひと垂らし、それに刻んだケイパーとパセリで作ったソースを添えてみたところ、ご飯に合うおかずになった。
惜しむらくは、刺身にできる魚がないこと。いや、仕入れ状況によっては、刺身にしても大丈夫なくらいに新鮮な魚もあるのだろうが、いつもあるわけではないし「生で食べてもいいよ」と声高には言いにくいらしい。アメリカにすしが浸透したとはいえ、まだまだ魚の生食は日々の食卓に定着していないのだ。
以前住んでいたニュージャージーのある肉屋では、よほど多くの日本人が「薄切り肉はあるか?」と尋ねたのだろう。「シャブシャブ、プリーズ」と言うと、慣れた手つきで牛塊肉を良い感じにスライスしてくれたものだ。リーフにも、たくさんの人が「サシミ・クオリティの魚はあるか?」と聞き続けたら、そのうちに刺身を仕入れてくれるのではないかと期待している。
小さな店に隣接するのはソーヴィー・アイランドにあるクルーガー・ファームの出店。ここに来れば魚と野菜の買い物が1度に済むのも魅力だ(卵や、冷凍ながらオーガニックのビーフやチキンなども扱っている)。ぜひ足を運んで、メーリング・リストに登録されたし。
■Flying Fish Company
2310 SE Hawthorne Blvd.,
Portland, OR 97214
TEL : 503-260-6552
営業時間:11:00 a.m.~7:00 p.m.
休み:なし(祝日には休むこともあるので要確認) www.flyingfishcompany.com
今月のレポーター/大石洋子 |
子供のころにピアノを習っていたという友人は多いが、大人になった今でもピアノを弾くことを楽しんでいる人は少ない。大抵は、「練習もレッスンも嫌で仕方がなかった」「親にやらされてた」「お金の無駄だった」というような感想を漏らす。でも、そう言いながら、彼らもまた、子供にピアノを習わせていたりするから面白い。まあ、楽器というのは練習しないと上達しないわけで、そんなものを自分から進んでやりたい子などそうそういない。親が背中を押してやらなければいけないのだろう。
ピアノを習っていたという友人に、「自転車みたいなもので、いったん弾けるようになったら多少のブランクがあっても体が覚えているもんじゃないの?」と聞いたら、「自転車というよりは、外国語みたいなもの」という答えが返ってきて興味深かった。「いったん覚えても、使わないうちにどんどんさびついてしまう」と言うのだった。
習い始めたら長いこと続けなければいけないし、それにピアノも買わなければ……子供にピアノを習わせるのには、それなりの覚悟がいる。勢い、先生選びも慎重になろうというものだ。
ウチの娘が習っているエステルという先生は、友人から評判を聞いた。サウスウエスト・ポートランドの自宅で教えている、ピアノ教授歴20年以上という経験豊富な先生だ。
ピアノの先生には、タイプがふたつある。「あまり細かいことは言わずとにかく子供が楽しめるように」という先生と、「基礎からみっちり厳しく仕込む」という先生。エステルは、後者のタイプだ。いや、厳しいといっても、ムチを持っているわけでも、声を荒げたりするわけでもない。が、礼に始まり礼に終わる30分のレッスンには、終始ピーンと張り詰めた空気がみなぎる。
親子で学ぶというスズキ・メソッドを採用しているので、親は子供のレッスンをそばで見ていて、先生に指摘された点を書き留める。そのメモをもとに、家で練習する時には、親が先生の代わりになるというわけだ。親もぼうっとしていられないから大変だけれど、家での練習にも大人の目が届くことで、1度のレッスンが効率良く生かされる。そばで見ているから、親もピアノが学べるというおまけも付いてくる。
夏と冬にコンサートが行われるが、エステルの生徒達には、外国人の子供が多い。両親そろってアメリカ人、という家族は少数派だ。おそらく、楽しく学びたい傾向があるアメリカ人には、エステルのようなタイプの先生はあまりウケないのであろう。エステル自身は、日本人の親子にとても好感を持っている。これまでに教えた日本人親子達が、彼女の指導にきっちり付いてきたから、と。日本人は規律というものに慣れているから、エステルのような先生と相性が良いようなのだ。
大学生になって今や州外に住んでいる元生徒達の多くは、夏休みやクリスマス休暇に実家に帰った折に、「ちょっとレッスンをお願いします」と電話してくるのだそう。先生と生徒の良い関係が築けていることの、そして、彼女の生徒達が大人になってもピアノを弾くことを楽しんでいるということの証である。
■Estelle Hermanピアノ教室
TEL : 503-246-6319
レッスン・スケジュール:生徒の年齢(4歳半~)レベルに応じ、1回15~60分
場所:Mittleman Jewish Community Centerそば
月謝:要問い合わせ
www.pianoportland.com
*掲載の情報は( )に記された年月時点のものです。
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