第十一話 プライム・リブ | ||
神様仏様、ジョージ様……。頼み込まれて作ったのはパーティーにぴったりの豪華・豪快料理。 招かざる客 「おいジョージ、今度のサンクスギビング、何か予定あんのか?」 プライム・リブ作りのコツ まず、第一に良い食材選び。リブロースは思い切って“プライム”か“チョイス”を使う。それも必ずトリムされていないリップオン。10パウンドぐらいの塊がベストだろう。もしできれば1週間ぐらい早めに買っておき、家の冷蔵庫のチルド室に入れて熟成させる。そして、焼き始める4時間前に冷蔵庫から取り出し、血をきれいに拭き取りながら常温で戻す。オーブンは450°Fに設定し、1時間前から温めておく。 塩、コショウはオーブンに入れる直前に振り掛ける。それも思いっきり多めに。オーブン・パンに肉を載せ、高温のオーブンの中へ10分程入れて周りに焼き色を付けたら、一度オーブンから出す。中の肉汁が閉じ込められている状態になったら、それ以上周りが焦げないように、アルミホイルかターキー・ホイルで覆ってしまう。たくさんの野菜を肉の下に敷いたり、野菜で覆うこともあるが、野菜やハーブの香りが肉の中まで染みこんでしまうため、安い肉を使うアメリカン・ロースト・ビーフには意味を持つだろうが、高価なプライムになると、かえって肉のいい味を殺してしまうのだ。 そしてオーブンの温度を350°Fまで下げ、ここから本焼きに入る。骨なし牛肉のローストは1パウンドに付き25分と計算するため、10パウンドのロースなら25分×10パウンド=250分=4時間10分。「そんなバカな!」という大きな問題が発生する。 これはアメリカのFDA(食品医薬品局)が食中毒を防ぐために勧める、オーブンの設定温度と調理時間である。すね肉のような硬い肉3パウンドと、柔らかく、しかも脂の良くのったリブロース10パウンドの塊の調理時間を正比例計算で算出したら、4時間後にオーブンから出てくるのは真っ黒になった墨の塊であることは、誰でもわかる。また、各家庭のオーブンの性能は違うので、時間と温度はあくまでも目安にすること。あとは“カン”? えっ? それでは、そーちゃんでもできる簡単料理ではなくなってしまう。 パーティーの結果やいかに 文章上、私はこの数字を読者の皆さんに勧めなければならないが、そーちゃん家族の将来のため、今回に限り、日本人が好きなブラディー・レアに仕上げるべく、あえて中心温度120°Fの手前で止めた。そしてオーブンから肉を取り出し、1時間近く掛けてゆっくりゆっくり冷ましていった。「なぜ? せっかく焼いたのだから、熱いうちに食べようよ」とそーちゃんが目で合図してくる。 あら熱を取り、肉の温度を人の体温程度の70°Fぐらいまで下げる。たぶん、これがプライム・リブ作りの一番大切なポイント。オーブンから出したばかりの130°F以上の肉にナイフを入れると、切り口から一番おいしい肉汁が吹き出して、あっという間に肉がスポンジのようになってしまうため、肉汁が落ち着く70°Fまで辛くても待たなくてはならないのだ。 そしてテーブルの上に“ドカン”と載った10パウンドのリブ・ローストのトリムを始める。トリムとは肉の周りをぐるりと覆い尽くす余分な脂肪分、特にぶ厚いリップの部位や焦げた部分を取り除く仕事。このためプライム・リブは、肉のロスを最小限抑えるため、焼き始める前にはトリムをしないのだ。トリムが終わったピンク色の肉はまさに肉料理の芸術。そーちゃんにもできる簡単かつ大胆なプライム作り。そして結果は……。 ***サンクスギビングも終わってしばらくした週末の夜、“ベルビューの有名人達が集まる店”に足を運んでみた。すると大勢の女性群がそーちゃんの周りを囲んで、真剣なまなざしで話を聞いていた。
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プライム・リブ
- 11/10/2020
- なかまちジョージ・料理のおはなし
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