■生活にもっと緑を! 庭やベランダが綺麗で気持ちよくなるコツを、ノースウエスト園芸部長こと小杉晶子さんに教えてもらいます。小杉さんについて »
(2025年1月)
明けましておめでとうございます。
静かに降る雨音を聞きながら、暖炉に薪をくべ、温かい飲み物を用意して、本を手にしてみませんか。園芸界で「園芸家あるある」で有名な本をご紹介します。カレル・チャペックの本です。チェコの戯曲作家でありジャーナリストでもある一方、趣味の園芸の度が過ぎ、プロそのものの『The Gardener’s Year』が書かれました。どのエピソードもユーモアが散りばめられ、「あっ、そうそう、ガーデニングしてるとこういう気分になるんだよね」と思うところばかりです。
8月のバケーション。友人に庭の世話をお願いしますが、帰ってきて庭を見てびっくり。「もう、お前には頼まん」と憤慨します。こだわりがあり過ぎ、人に頼めない。この本は、とても面白く愉快なリズムで文章が進んでいきます。戦争が今にも始まる激動の時代にも園芸を楽しむ余裕があったのか? それとも、園芸で社会から一瞬でも目をそらせたからこそ力が入ったのか? 時代背景を考えながら読むと一層興味深い本となってきます。日本語版も出ています。
カレルは、最後に「園芸家は未来に生きている。バラがきれいに咲くと、来年はもっときれいに咲くだろうと…」と書いています。私もカレルのように、葉が落ちて死んだような樹木にある小さい芽を見ながら、「春になれば、どれだけの花が咲くのかなぁ」と未来に生きる園芸家の一人です。
▲『The Gardener’s Year』。短くて簡単なので、英語を読む習慣をつけたい方にもおすすめです。日本語では『園芸家12カ月』という題で中央公論新社から刊行されています。
▲裏表紙。かわいいイラストは、カレルの兄、画家のヨゼフのイラストです。
▲園芸家の1月のテーマは種。室内で小さなポットに種を撒くカレル。撒いた種の最初の生命に喜びを覚えますが…、日が経ち「どうやらこれは雑草!」と気が付きます。
カレル・チャペック(1890-1938)。チェコの戯曲作家。第一次世界大戦から第二世界大戦の激動の中を生きました。ナチズムを否定するジャーナリストとしても有名。兄のヨゼフは画家で『園芸家12カ月』のイラストを描いています。
サウスシアトル・コミュニティー・カレッジで園芸学の学位を取得。現在は、剪定家として庭園や個人の庭の手入れを行う。趣味はバードウォッチング。