シアトルの生活情報&おすすめ観光情報

シアトルでガーデニング

シアトルでガーデニング
第1回 
シアトルに春を告げる花木
 
ウィットコム・チェリーと呼ばれる早咲きの桜の一種。学名は、Prunus × Subhiretella Whitcomb

初めまして、みなさん。私は昔から庭のある家を持つことが夢でした。大きな家はいらないけれど、花がたくさん咲く庭に憧れていました。1999年、ここシアトルに移住してそれが実現し、私のガーデニング狂生活が始まりました。趣味だけでは凝りず、学校に通い、Degreeまで取ってしまい、地元のランドスケープの会社で働くまでになりました。これからは、その失敗談や笑い話を交えてシアトルのガーデニングをわかりやすく紹介していきたいと思います。

今年は本当に暖かい日々が続き、例年より1ヵ月くらい早く、いろんな花が咲き始めていますね。2月に仲良し友達と話していた時のこと、「最近、よく近所で濃いピンクの花木を見掛けるけれど、なんていう花?」と聞かれました。この時期咲くのは、早咲きの桜。それに続いて、Flowering Plum(ブロンズの葉と桃色の花を同時に出します)、Flowering Apple(白いりんごの花)が小さな花を木いっぱいに咲かせます。日本のソメイヨシノとは少し種類の違う桜やりんごですが、うすら寒いシアトルの春先に可憐な花を届けてくれます。

実は、こちらシアトルの園芸界では、桜はあまり喜ばれる木ではないのです。その訳は、虫がつきやすかったり、病気になりやすかったりと手入れが大変だからです。昨年私はシアトルの日本庭園でインターン・ガーデナーとして働いていました。桜といえば毛虫。その日行くと、シニア・ガーデナーがバケツ片手に摘んでるじゃあないですか、さくらんぼじゃないですよ、毛虫ですよ。しかも、素手で。うわぁー、これやるんですかぁぁ……。その日バケツいっぱいになった毛虫達、後で焼くんですって。シアトルは地域によって害虫駆除のための薬を使うことを規制しています。もちろん薬を使えば、そのまま海へ流れるので環境汚染につながります。個人の庭にいる毛虫ぐらいなら、枝ごと切り落として捨てるか、手で摘み取るかでなんとかなります。美しく保つことも大切だけれど、なるべく自然を壊さず共存しながらガーデニングを楽しむということを多くのガーデナーは目指しています。さぁ、今年は桜の花だけじゃなく、バケツ片手に毛虫摘みというのはいかがでしょうか?

 

第2回 
ライラック
 
日本名はムラサキハシドイ。戦前はリラ(フランス語)と呼ばれていた時期もあったライラック。学名は、Syringa vulgaris

最近、よく雨降りますねー。でもやっと本来のシアトルの天気に戻ったようです。ガーデナーである私は、天気予報は毎回しっかり見ないと、合羽が必要かどうかなど、その日の準備が違ってきます。さらに、チャンネルを変えてくどいほど何回もチェックします。今時の天気は変わりやすく、予報しづらいのか、たまに1日の中で晴れ、曇り、雨、雷と全部入れてしまっている、なげやり天気予報もどうかと思うのですが。「予報ちゃうやん」と小さく突っ込みを入れつつ、準備して私の1日が始まります。

さぁ、春ですね。この業界忙しくなってきています。週末も近所を散歩すると、近所のおじさんやおばさんが庭の芝を刈ったり、草を引いたりしてますね。そろそろ、ライラックやハナミズキ、藤の花が華やかに庭を飾り、春本番を感じます。

ライラックは、シアトル近辺では(最近は日本でも)もうお馴染みの、どこにでも咲いている庭木ですが、わたしが子供の頃、あまり近所ではお目にかかれなかった記憶があります。『キャンディ・キャンディ』というチョー少女漫画が当時流行り、その話の中でアメリカのお祭りなどでライラックの花をパイに添えて、フレッシュなレモネードを……なんていうのがあり、わぁーなんて素敵なお菓子の食べ方なんだろーと思いました。うちのお茶菓子なんて、たい焼きとほうじ茶、それに松葉なんかを添えて……。まあ、それはそれでいいのですが。

ライラックは丈夫で虫も付きにくく、大変育てやすい庭木です。土もあまり選ばず、薄い紫から濃い紫、白、ピンクとあり、何といってもあのやさしい香りが春風に乗って庭全体を包んでくれます。私達夫婦が今の家を買ったのも、前のオーナーのおばさんのうまいひと言で決まりました。白い出窓の横にライラックが植えてあり、そのおばさん、「春になるとねぇー、この窓を開けると、ライラックの香りが部屋全体にふわぁーと広がるのよー」と。ちょっと迷っていた私でしたが、そのひと言で「おし、それ買った」と。なんて素敵な言い回しなんでしょ。家をこれから売る人、これ使えますよ。そして、パイにライラックの花を添えてティータイムはどうでしょう?

 

第3回 
シアトルの雑草
 
スコッチ・ブルーム
フリーウェイ脇によく見掛けるスコッチ・ブルーム

少しずつ初夏を感じるほどの気温になってきましたね。日が長くなり、夕食を終えても庭に出て、草引きなんかができるようになりました。うちのバックヤードも既にたくさんの雑草で覆われてきています。

先日、わたしの文章を読んでくださった方から質問をいただきました。その方は2年前に家を建て、庭を自然なままで放置しておいたら、すごく雑草が生えて困っているとのこと。その雑草の正体は、“ヒマラヤ・ブラックベリー”と“スコッチ・ブルーム”。大変繁殖力が強く、ワシントン州ではNoxiousweed(有害な外来雑草)として扱われています。

イタドリ
Japanese knotweed
日本のイタドリも手強い。英語名はJapanese knotweed

ブラックベリーは太いツタで、この時期白い花を咲かせ、夏には黒く甘いベリーをたくさん実らせます。また、スコッチブルームは、黄色い豆のような花を咲かせます。どちらも嫌われ者ですが、ブラックベリーは動物が争って実を食べていますし(人間も)、またスコッチ・ブルームは、まめ科で根の部分に小さい粒があり、そこに住むバクテリアが空気中の窒素を取り入れて、他の植物の成長に必要な窒素を提供してくれます(空中窒素固定法)。いいやつなんですよ。クローバーやれんげもそうですね。ただ繁殖力が強過ぎるので、他のノースウエストの原種植物を脅かしているのが現実です。

その方によると、今年、キング郡がスコッチ・ブルームの一斉駆除に乗り出すとか。それでも、あまり日本では馴染みがない植物ですので、みなさんはピンとこないでしょうね。ところがどっこい、日本の“イタドリ”もまた、シアトル各地、公園や道路脇などで生えまくって、有害な外来雑草のひとつに挙げられています。実は日本のイタドリ、アメリカだけでは留まらず、なんとヨーロッパまで進出して困らせているとか。

はるばる日本から世界各地にその勢力を伸ばして生育地を広げていくなんて、なんともたくましい……。なんて雑草のことを考えていたら、あれ? 私もシアトルに住みつき、イタドリみたい、と。風に揺られる雑草達が、そんな私を笑っているように見えた満月の夜でした。

 

第4回 
畑で野菜を育てよう
 
レタス、トマト
種からでも育つレタス、トマト

今回は、ベジタブル・ガーデンについてお話ししましょう。自分の庭で野菜やハーブを育ててみたいという方や、もう既にやっているという方も多いでしょう。私も自分の庭に、猫の額ほどの畑を造り、毎年いろいろ種から試してみています。個人的には、かわいらしいベジタブル・ガーデンでお洒落な野菜(サラダ菜とかラディッシュとか)を作るというよりは、スーパーマーケットで買う、日本の“ちょっと高いでぇ~この野菜”を畑で作ってやろうという節約根性というのがしっくり来ます。近所には、アジア人の家族が住んでいて、そこのおじいさんはいつも上手にいろんな野菜を作っておられます。梨の木には、毎年実をひとつずつ袋で包み、プロ並みの手入れがされています。ひとつだけ疑問なのは、一番端の一角にわぁーっと咲いているタンポポで、あれもお浸しかなんかで食べるのかな?と、いつも横を通るたびに眺めています(タンポポは食べられるのですが、サラダで食べたらちょっと苦かった)。

ブルーベリー
買えば高いブルーベリーも簡単に育てられる。7月にちょうど青くなり、収穫可能

畑造りには、まずちゃんとした土が必要です。お近くのホームセンターなどで、腐葉土(compost)、鶏糞、馬糞など(manure)が袋入りで売っているので、それらを混ぜて良い土を用意します。私が試した中で一番簡単なのが、レタス。春に種から簡単に育ちます。それから、ズッキーニ、チンゲン菜、サヤインゲン、にんじん、じゃがいも、トマトなどは適当に(怠慢な方でも)世話していてもどんどん育ち、結構実がたくさんできます。特に、トマト、チンゲン菜などはこぼれ種で翌年も芽を出します。昨年、庭のエントランス近くに植え替えた日本のもみじの木の下から、気が付かぬうちにチンゲン菜が大きく育っていて、ぎょっとしたこともありました。ほかに、青じそはかなり重宝しましたし、ネギはやっぱり必需品(?)ですよね。

大根が大好きな私ですが、残念ながら成功したことがないのですね。2年前に日本に帰国した時、近所のおっさんがドブ川の横の小さいスペースを利用して、とってもおいしそうな大根を作っているのを見掛け、とてもうらやましく思いました。私はアメリカで英語を使って一生懸命園芸を学んだつもりでしたが、こういうおっさんにはかないませんね。自分で大根を育てて、自分の大根を食べるなんてと、同じ土をいじる職業者としてそのおっさんを尊敬してしまいました。

 

第5回 
夏を彩る寄せ植えの極意
 
ニュージーランド・フラックス
茶系のニュージーランド・フラックスを中心に色を合わせる

今年のシアトルは、初夏でも結構雨が降ったり、曇り空が続いたりと、例年より少し涼しいですね。日照時間が少ないのか、私が鉢に蒔いたスイートピーの種が、発芽してもまだ5センチほどで固まった状態です。今回は、私が仕事から学んだ寄せ植えのコツなんかをちょっとお話ししましょう。

デルフォニウム、ペチュニア
デルフォニウム、ペチュニア、ロべリア、アフリカン・デイジーなど青で統一する

寄せ植えポットは、玄関先のポーチやパティオの隅に置かれ、季節の草花、匂い、色などで季節を演出します。まず、プロが行う寄せ植えと素人の違いは、色の配色と形の整え方だと思います。花を選ぶ時に、必ずその周辺の色も考慮して選びます。例えば、家の外観がブルーであれば、その色に近い色の花や草、葉があるもの、もしくはコントラストとして逆の色の黄色を選びます。窓の枠の色やポーチの色、庭木の葉の色なども使うといいでしょう。家、樹木、ポットなど、全体を見た時にすべての配色が関連されているようにすると、安定感が出てきます。例えば、仕事である別荘のポーチに寄せ植えを行った時は、海のすぐ側だったので、その海の色と同じ青や波の白い色を合わせました。ブルーのペチュニア、白いデイジー、そして1色はコントラストとして黄色いスナップドラゴンやマリーゴールドなどを入れます。

ゼラニウム
お馴染み赤のゼラニウムでシンプルに

次に、形のバランスも大切です。高さのあるもの、横に広がりのあるもの、そして垂れて伸びる植物をうまく取り入れます。例えば、高さのあるフクシア、横に広がるバーベナ、垂れるアイビーやロベリアなどを基本にして、あとは花の大きさや形を自分なりにバランスを考えて寄せ植えをします。夏に使われるもので代表的なのは、なんといっても赤いゼラニウム。日当たりの良いところに置くポットには、この赤いゼラニウム1種類を鉢にこぼれんばかりに植えるのも素敵です。ドイツのウィンドーボックスではお馴染みですよね。日陰になってしまうところには、インパチエンスやベゴニアなどを。ひと夏ずっと花を楽しめますよ。

 

第6回 
たんぽぽの襲撃
 
タイワンハチジョウナ
▲実はこれ、たんぽぽじゃなくてPerennial sowthistle(タイワンハチジョウナ)というもの。たんぽぽと同じサンフラワー属で、バックヤードではこっちが主流かも

夏本番になりましたね。忙しさの中で、ふとお庭を見ると、青い芝生だったはずのバックヤードが黄色い野原に激変していた、なんて経験ありませんか? 日本人の友人が、「たんぽぽって結構きれいでかわいいのに、ここに住む人達はなんで目の敵にするのかしら?」と言ってました。そうですね。私も、園芸の授業を初めて受けた時、「たんぽぽと苔をどうやって芝生から駆除すべきか?」というようなことを話し合い、びっくりしました。確かに、芝生を青く素敵に維持しておくには、たんぽぽは敵になっちゃうんですね。

The Weed Hound
▲たんぽぽを抜くガーデン器具「The Weed Hound」

ホームセンターなどへ行くと、たんぽぽ駆除の除草剤がたくさん売られています。芝生を枯らさずに、たんぽぽだけを駆除するものもあります。ただ、除草剤はやはり薬なので、土の中に住む微生物や虫にも影響するほか、雨が降れば川に流れて海への汚染にも関わっていきます。なるべく使わないようにすることをお勧めします。

では、どうやってたんぽぽをコントロールすればいいのか? それは、芝生のメンテナンスによってコントロールしやすくなります。たんぽぽは、乾いたところが大好きで、どんどん根を張っていきます。芝生を常に健康な状態にしておくことで、たんぽぽの繁殖を抑えることができます。夏でも定期的に水をやり、芝を刈るのも少し長めにして、乾きを避けるようにします。それでも、全くなくすことは無理なので、たんぽぽを根っこから抜くガーデン器具を使い、地道にポコポコ抜いていくしかないと思います。

うちの近所の人の庭は、今えらいことになっています。おそらく春から一度も芝刈りをしていないと思われ、一面たんぽぽで覆われています。この前、家の前を通るとドアのノブに督促状のようなものが付いていました。あんまりすごいと市から注意されるのかしら? 市、地域によって庭のメンテナンスもその地域の景観に関わってくるので、うるさいこともあるようですね。

なんだか、今回はたんぽぽの悪口ばっかり書いてしまいました。でも、葉は食用になるし、根からはコーヒーを作れるし、そして、植物の中でも最も効率よく繁殖することで知られている、すごい植物なんですよ。

 

第7回 
不思議な竹の花
 

久しぶりにシアトルの日本庭園を訪ねました。シニア・ガーデナーのキャシーと話していると、なんと今、竹の花が咲いているとのこと。「うっ、竹の花? なんて不吉な……」。皆さんご存知でしたか? 竹・笹の花は種類にもよりますが、60年(真竹なんて120年!)に1度だけ咲き、その後はほとんど枯れてしまうものなのです。

一生に1回だけ花を咲かせて……、なんてロマンチックな人生のように感じられますが、昔から竹の花が咲く年は不吉な年と言われてきました。なぜならネズミが結実を好んで食べることから、花の咲く年にはネズミが大繁殖し、農作物を荒らすのです。それを恐れて古くからこう言われているそうです。

今年から晴れて念願のシニア・ガーデナーになって張り切っていたキャシーは、ちょっと心配な様子。「大丈夫よ。こんな珍しい花が見られるなんて、ガーデナーにとって幸運だよー」となぐさめながら、その場を後にしました。でも、ほんと竹って珍しい植物なんですよ。木でもなく草でもなく“竹”なんです。
最近、ここノースウエストでも竹や笹を庭に植えることが人気を呼ぶようになりました。ちょっとオリエンタル調にガーデニングしてみたいアメリカ人がよく庭に植えたりしていますが、私にしてみれば「ぎょっ」とすること。

竹の繁殖率は半端じゃなく、コントロールができません。庭に植えるのであれば、広がらない種類(例えばクランプ・バンブー)を選んだり、必ず周りにバリアをすること。畳が日に日に盛り上がってくるのでなんだろうと床下を見たら、竹の子が大きくなって畳を押し上げてきたという話を日本で聞いたことがあります。また、真竹は植えないようにしてください。

タイワンハチジョウナ
▲ブルー・ファウンテン・バンブー(Fargesia nitida)の花

先日、キャシーから「友達が経営している園芸店の竹の花も咲いてるんだって。そこ、ベーリンハムにあるんだよー」と聞いて、またびっくり。まさに、あちこちで花が咲いている様子。もしかして、「世界中で同時に咲いているのかな~」と思うと、ちょっと気味が悪くなりました。

 

第8回 
今のうちに……
  チューリップ

毎年、早春になると近所の庭に、希望に満ちたまっ黄色の水仙、クロッカス、そしてかわいいチューリップの花が顔を出し始めます。そして、秋口怠慢して植えなかった私は、いつも深く後悔するのです。「いいなぁ、かわいいなぁ」と横目に来年こそは……と夢を膨らませ、もう何年時が過ぎたことか。

そうです、皆さん、春早々にかわいい水仙やチューリップを見たければ今(!)植えてください。球根は、寒さに1度さらしたほうが、良い花を咲かせるのです(人間の人生もそうかな)。ただ、ノースウエストには、日本と違って「敵」が待っているので、それにも気をつけてくださいね。そうです。あのモリモリ太った「あんた、ほんとはねずみじゃねーの?」と言いたくなるようなヤツら。きっと、初めてヤツらを見て、「キャー、かわいいー、写真撮っちゃえ」なんて思った人、たくさんいるんじゃないでしょうか? それが今では、急に道路に飛び出してくるヤツらを「てめえぇ、どけぇぇ、ひくぞぉぉぉぉ!」なんて叫びながら車を運転していませんか? そうです、あのリス達が、せっかく苦労して植えた球根をほじくり出してかじってしまうのです。しかし、グルメなリス達は水仙がお嫌いな様子。あんまり被害は少ないようです。

水仙

そこで、ちょっとした水仙の植え方のコツを教えます。別に、決まってないので好きなように植えても良いのですが、もうちょっと自然な感じで、おしゃれに植えたい方は試してみてください。裏庭などの花壇や植え込みに植える場合、水仙をいくつかのまとまったグループにして植えると、自然に見えるんです。しかし、人間、悲しいかな、デザインや植え方など、何も意識しないと、どうしても人工的になっちゃうんですよねー。やってしまいましたよ、うちの主人は。水仙、200個。裏庭に転々と植えちゃいました(別にいいんですけどねー。本人が満足しているので)。

ということで、今、球根を植えた方は、春になって忘れた頃に、ひょっこり顔を出す水仙達から小さな喜びが得れますよー。

第9回 
冬に楽しめる花 さざんか
  さざんか

朝夕、めっきり寒くなってきましたね。灰色の空、シトシト降る雨、いやですねー。暗くなっちゃいますね。あの、寒くてもカラッとした日本の冬(東北ならびに北海道出身のみなさん、すいません)がやっぱり懐かしい……と思うのは私だけでしょうか? 
私が育った関西地方では、今の時期近所の生垣にさざんかがいっぱい咲き始め、冬でも花が楽しめました。ノースウエストはやっぱりなんだか緑が多過ぎて、特に冬には色が欲しいですね。シアトルの冬が苦手な私は、なんとか楽しく乗り切るために庭にちょっとした工夫をしています。なるべくこの時期から春まで咲く花を植え、毎月違った花を楽しめるようにしています。

10月から1月頃までは、さざんかが咲き乱れ、花が少ない今の時期にたくさんのハミングバードが蜜を吸いに来てくれます。昨年の冬、あんまり元気がなかったさざんかを、日当たりのよい場所へ移植(秋から冬は移植に良い)。そして、次の日、さざんかは体をフルフルと震わせ、見事に半分ほどの葉をぱっと落としました。移植時に植物が葉を落とすのは生理作用のひとつ。新しい環境(土壌)に、再び新しい根を張らなくてはならないので、葉に行くエネルギーを節約し自分で調整しているのです。

そんなさざんかを見て、とても愛おしく感じました。なにも話さない植物ですが、一生懸命新しい環境に慣れようとしているしたたかな姿に、異国に住む私達外国人の姿が重なったように見えました。

私自身もアメリカ社会で生活していて、ここでは通用しない日本の価値観だとか習慣を、時には思い切って捨ててしまわないと楽しく生きて行けないことがあるのを痛感している毎日です。そんな事を一本のさざんかに教えられた気がして、心が少し温まった経験でした。

第10回 
引っ越し嫌いなシャコバ・サボテン
  シャコバ・サボテン

この時期、みなさんは室内でどのように花を楽しんでおられますか? クリスマスに飾るポインセチア、シクラメン、それともアマリリス?

冬に楽しめる花のひとつにシャコバ・サボテンがあります。こちらでは、クリスマス・カクタスと呼ばれていますね。ちょうど、クリスマスの時期に園芸店などに出回ります。シャコバ・サボテンはサボテンの一種ですが、砂漠で育っているものとは少し違い、ブラジルの熱帯雨林などに自生しています。

シャコバ・サボテン

私もこの時期、お部屋に何かお花が欲しくてよく買うのですが、枯れてしまうことが多いです。丈夫で育てやすいと言われているこの植物でも、なぜか私はうまくいきません。うちの義母なんて7年ほどもっているのですがね。どう見ても彼女は手入れしている様子もないし、ほったらかしのような気もするんですが。

問題は、引っ越し嫌いのシャコバ・サボテンにあるようです。育てやすいけれど、環境の変化に弱いところがあり、鉢をあちこち移動させるのが悪いみたいですね。一度決めた場所でそっと、ほっといてやるのがいいみたいです。それと根腐れも原因のひとつ。花が終わったあと、ヒゲのようなものが、ビヨーンと茎の間から出て来たら、それは根であり本来の根が腐ってきているか、何か状態が悪いという意味だそうです。これ、私のトゲトゲのサボテンにも同じ現象がありました。一度、鉢から出して、根の状態を見てやってください。

本来は、ピンクの花を咲かせますが、毎年の品種改良によって、今では赤、黄、オレンジ、白などいろんな色があります。シャコバ・サボテンは着生植物といって、他の樹木や岩肌に根を下ろして生きている植物です。ランの仲間もそうですね。私は、どうしてもこのような植物は“少しずる賢いヤツ”に思えてしまいます。ちゃっかり他の木から栄養まで取って……。植物の世界って怖い。あっ、でも人間の世界でもこうゆう人いますよね。オフィスなんかでちゃっかり自分だけ楽な仕事を取って行ったりする人とか……。どこの世界でも同じなんですね。

第11回 
春を告げる木、マンサク
 
シアトルでガーデニングシナマンサク
(英名:Chinese Witch Hazel、学名:Hamamelis mollis)

毎年、アメリカの賑やかなクリスマスがわぁーっと過ぎて、寂しいお正月でほっとひと息。窓の外は灰色、しとしと続く長い雨の日……春まではまだ長いなぁ、と気持ちも落ち込んで来る時ですね。確かに冬至が過ぎたとはいえ、まだまだ朝は暗いし、あの明るいノースウエストの夏の陽射しが本当に恋しくなります。そんな今、咲き始める庭木がマンサクです。

黄色い蜘蛛のようなユニークな形の花で、1月中旬辺りから咲き始めます。マンサクは“まず咲く”ということからこのような名前が付けられたと言われています。落葉小高木、丈夫でとても育てやすい木です。花の少ない1月に咲き始め、秋には素晴らしい紅葉を見せてくれます。私は、この木を玄関付近に植え、毎日横を通り外に出掛けるようにしています。レモンのようなすっきりとした匂いもありますので、この匂いをかぐと「あぁ、だんだん春が近づいて来ている」と感じることもできます。

シアトルでガーデニング

日本では、昔から建築の結合材として長く使われてきました。マンサクは乾燥すると硬くなるということで、今も世界遺産にもなっている合掌造りの屋根に使われているそうです。また、葉に含まれているタンニンは止血作用があり、民間薬としては煎じて下痢止めや皮膚炎症を抑えるのにも使われていました。ワシントン大学植物園のWinter Gardenでは、今マンサクの花が満開になっていますので、ぜひ雨の中でも行ってみてください。

黄色い花が主ですが、赤花品種もあります。雨で湿った地面からは、昨年植えた球根の芽が出始めるなど、外の世界はまだ寒いけれど着実に春へと移り変わっているのがわかります。今日も、うちの庭でハチドリが一生懸命マンサクの蜜を吸っているのを見掛けました。これから春までの時期が一番変化があっておもしろい時なので、時には外に出て、木々の芽の膨らむ様を楽しんでくださいね。

第12回 
匂いと記憶
 
シアトルでガーデニング沈丁花(英名:Winter Daphne、学名:Daphne odora ‘Aureo-marginata’)

暦の上では立春も過ぎ、そろそろ春の兆しを感じられるようになってきましたね。前回紹介したマンサクの花が、ようやく終わるかなと思ったら、今度は沈丁花(じんちょうげ)の花へとバトンタッチされます。沈丁花は、室町時代に中国から日本へ伝わったと言われ、日陰で水はけの良い所でもかなり丈夫に育つので、ここノースウエストでも人気があります。そして、何よりもあの香りのすばらしさで、早春花の代表として庭木に使われます。

春近しとはいえまだ冷たい空気の中、沈丁花はどことなくふわぁ~っと甘い匂いでその存在をアピールします。私はあの香りを嗅ぐと、何とも言えないワクワク感が出てくるのです。きっと、昔通っていた小学校や近所の公園などに植えられていた沈丁花の香りと、当時の記憶がセットになっていて、その香りを嗅ぐとウワァーッとよみがえるのでしょう。匂いと記憶の親密な関係は、科学的にも証明されています。

シアトルでガーデニング常緑低木なので、冬でも葉がある。強い陽射しに弱いので日陰に植える。移植を嫌う。雪、フロストに少し弱い

英単語や漢字を記憶する時も、匂いと一緒に覚えれば、何もしないで暗記するより、よく覚えているそうです。暗記が苦手な私……、もっと早く教えて欲しかったです(笑)。ちなみに、台所でキュウリを包丁でスパッと切った時に漂うあの香りで、昔、家族に嫌がられながらも鈴虫を水槽でたくさん飼っていたワクワク感が再びよみがえります(キュウリは鈴虫の大好物なのです)。皆さんもそのようなこと、ありませんか? アメリカ人の夫は、ハイキングで湿った針葉樹の森を歩くと、クリスマス・ツリーを思い出すんだそうです。まぁ、素敵な思い出だこと。ここで文化の違いが出てしまいますね。

冬、ウッド・ストーブから出る煙の匂いから、夫はキャンプの楽しい思い出を頭に浮かべるようです。一方、私と言えば、田んぼでおっちゃんがワラを焼いているその横で、お年玉で買ってもらったゲーラカイト(当時、爆発的人気だったビニール製の凧)を上げてウヒョウヒョしている自分を思い出します。これって、私だけでしょうか?

第13回 
バラの剪定
 

シアトルでガーデニング斜め45度ぐらいに外へ向けて切る

黄色いレンギョウが咲き始めたら、みなさん、バラの剪定をしましょう。この時期3月になると、少しずつバラの芽が出始めるので、非常に剪定しやすいのです。バラは毎年、新しい枝から花を咲かせるので、毎年剪定してやると、どんどん大きなよい花を付けます。夏でも、咲き終わった花をどんどん取っていってやりましょう。そうすれば、バラは子孫を残そうと、必死になって花を咲かし続けるのです。

シアトルでガーデニングこんな感じになればOK

剪定は経験がないと、植物を枯れさせてしまわないか、ちょっと不安になりますよね。でも、大丈夫。バラは非常に強いので、ちょっと間違っただけでは、枯れません。逆に、繁殖力の強いバラなので枯れさせるほうが難しいのです。

まずは、剪定の基本。3Dを行います。3Dとは、Dead、Diseased、Damagedのことで、枯れたもの、病気のもの、傷付いているものを取ります。次に、ひとつの株に大体4、5本の茎を残すつもりで、鉛筆サイズの小さいものや、余りにも古くて太過ぎる茎は取っていきます。地面から約20センチのところで、お椀型にするのが理想ですね。要は、中心へと伸びている茎は取ってやって、真ん中をぽっかり空けるのです。それによって、太陽がまんべんなく当たるようになるのです。太陽の光はバラにとって命ですからね。

そして、地面から約20センチのところで新しい芽が出ていないか確認し、そこをまた外に向かって45度に切っていきます。芽は、茎の内側にもありますが、外側へと出ている芽を選ぶことで、そこから新しい茎がまた、外へと伸びてゆくのです。

さて、今年は素敵なバラの花がたくさん咲くかどうか、楽しみですね。

第14回 
肥料をやる季節です
 

シアトルでガーデニングドロップライン:
ちょうど枝の先端辺りまで地中では根が伸びている。根が水分、栄養を吸収できるように、肥料はその部分にやること。幹の側にやっても意味がないので、気を付けて

新緑の優しい色に包まれた木々を、多く目にするようになりましたね。この時期にガーデニングで大切なことは、雑草引きもそうですが、肥料やりもそうなんですよ。

眠っていた木々、草花らがゆっくりと目覚め、新しい葉をつける時期なので、そのタイミングを狙って、肥料をやります。市販されている主な肥料の中には、N(窒素)、P(リン酸)、K(カリ)が入っています。窒素は葉を大きくし、リン酸は花と実、そしてカリは根と茎に効きます。肥料のパッケージに「10-14-6」などと数字がありますが、それらは窒素、リン酸、カリのパーセンテージです。

野菜(ほうれん草などの葉っぱもの)や芝生には、窒素が多く含まれているものを選ぶと良いでしょう。また、桜など春に咲く庭木には、花が終わった後に肥料をやります。昔から日本では、“お礼肥え”といって花を楽しませてもらったお礼に、肥やしをやっていました。これも理にかなったもので、花にたくさんのエネルギーを使い少し疲れている庭木に、元気に来年用の花の芽をたくさんつけてもらうためでもあるのです。化学肥料でなくても、堆肥(Compost)を代わりにやってもいいですね。化学肥料だと、草木に効いても土はどんどん痩せていくので、土の状態が良くない場所は有機肥料が良いでしょう。

先日、仕事で肥料をやっていた時のこと。あらら? ベテラン・ガーデナーさんの肥料のやり方にちょっと疑問を持ちました。庭木には「ドロップライン」と言われる場所があり、木々は根の先端から水や栄養を取ります。なので、幹のすぐ側にいくら良い肥料をやっても、そこからは吸収されません。自然の摂理を考えるとわかりやすいと思いますが、雨が上から降ってくると、その雨が枝の先端に当たり、そのまま下へと水が落ちます。そこがドロップラインで、根の先端がある場所です。

ということで、しゃくなげなどの庭木の肥料やりには、くるっと輪を描くようにします。そして、肥料はあまりたくさんやり過ぎないこと。ほどほどが一番良いのです。そう、ビタミン剤のように、ほどほどに。

第15回 
ガーデナーの独り言:根っこの話
 

シアトルでガーデニング

だんだん、夏の季節に近づいてきましたね。外で働く私の顔は、もう真っ黒です。日焼け止めクリーム(SPF42)の上に濃いめのファンデーションを厚塗りしても関係なさそうです。トホホ。

私は仕事で時折、温室でも働く機会があるのですが、小さな植物相手にも、自然の神秘、力強さなどを発見します。先日、ボスと一緒に温室で小さな苗を手入れしていた時のこと。同じように、同じ環境で種を蒔いても、芽が出る時期が多少違ったり、伸びる早さが違ったり、本当に人間の子供を見ているようです。早く育つのがいいかというと、決してそうでもなく、ゆっくり育った苗のほうが案外しっかり根っこを張って、たくましいことがあります。

その日、ある花の苗を手入れしていて、どうも元気のない苗がひとつありました。葉っぱは茶色く変色し、どうも見た目が良くありません。ボスに、これを捨ててしまうのか聞いたところ、多少葉っぱなど見た目が悪くとも、根っこがしっかりしていれば、次からはどんどん新しい芽が出ることを期待できるとのことでした。

小さな植物も、乾きなどいろんな環境の変化がある中で生きています。そんな時、葉っぱが茶色くなったり、黄色くなったりで、大変だけれども、しっかりした根っこがあれば、ある程度の環境の変化でも生き抜く力があることを教えられました。

きっと、人間もそうなんだろうなと思いました。けれど、人間にとって根っことは何を指すのでしょうね。人間が生きていくための大切なものって、一体何なのでしょう。大人になって、いろんな難題や大きな問題にぶつかった時、それを乗り越えていく力が、そうなのでしょうか。では、その力はどうやって身に付けるのでしょう? 

きっと、私達が子供のころに、母親から、父親から、教えてもらったシンプルなことが土台になっているのでしょうね。人と仲良くすること、悪いことをしてしまったら謝ること、何事も諦めないでやってみることなど、どれも当たり前のことなのですね。でも、大人になってもこんなとてもシンプルなことができなかったり、忘れてしまったりするのも事実……。

湿った温室の中で、小さな苗を片手に、そんなことをボオーッと考えながら過ごした1日でした。

第16回 
夏に向けてオススメの花
 

だんだん、暑いなと感じる時が多くなってきました。夏がそこまで近づいていますね。皆さんの庭はどうですか? ふと気付けば、知らない間に雑草に占領されていた、なんてことはないですか? うちの畑の雑草も、野菜より大きくなってしまっていました。ハァ……(ため息)。

シアトルでガーデニング

さて今回ですが、夏に向けてのカッコイイ花々を紹介します。多年草の花壇などには、ダリアなんてどうでしょうか? ダリアにはいろんな種類があり、花の大きなものや花火のようなポンポン型、アネモネのように上品な花があります。よく、私達の園芸業界で使われているもののひとつが、この写真のダリア(Dahlia:Bishop’s Children)。花は赤をベースにオレンジと変化し、まるで夕焼けを想像させるほどの素敵な色合いです。そして、葉は茶色で、ほかの花と一緒にしても、とても良いアクセントになります。高さは約1メートルにもなるので、花壇の後ろなどにまとめて植えると見応えがあります。日光を好み、日当たりの良いところを選ぶといいでしょう。夏中ずっと花が楽しめますよ。

シアトルでガーデニング

もうひとつのオススメは、サルビア。サルビアもいろんな種類がありますが、この写真のサルビア(Salvia Patens)は澄んだ青色の花を咲かせます。なかなか、海に近い本当のブルーの花というのは、この園芸界では結構珍しいものなのです。ロイヤル・ブルーというのでしょうか、それはそれは素敵なブルーです。シアトルの夏の海の色のようで、白い花と合わせると“ゆったりと揺らぐさざ波”といった雰囲気になることでしょう。こちらもまた日向を好むので、日当たりの良いお花畑に植えてくださいね。

小杉晶子
Akiko Kosugi Phillipps

サウス・シアトル・コミュニティー・カレッジで園芸学(Landscape & Horticulture)のDegreeを取得。シアトル日本庭園でのインターンシップを経て、現在はエドモンズ市の公園課で働くと同時に、剪定を中心とした庭の手入れを行うビジネスも展開している。


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