さまざまな分野の専門家が読者の皆さんの質問にお答えします。
妊娠中に体重が増えないのは、問題でしょうか? |
< 回答者|助産師 看護学博士 ナースプラクティショナー押尾祥子先生、栄養士 公衆衛生学修士土屋亜美先生>
「カウプ指数」をご存知でしょうか。体重(kg)を身長(m)の2乗で割った指数で、たとえば体重50キロ、身長1.65メートル(165センチ)の人は、カウプ指数が18.36になります。アメリカでは、BMI(Body Mass Index)を呼ばれ、妊娠中の合併症発症率、または未熟児や低体重児の出生率などをカウプ指数によって調べた研究により、やせた人はたくさん体重が増えたほうが、太った人はゆるやかに少し体重を増やしたほうが結果が良い、とされています。
日本人の妊婦さんは、やせている(カウプ指数が非妊時19.8未満)人が多いので、妊娠中に28~40パウンド(12.7~18.2キロ)太るように勧められます。日本では太ってはいけない、と言われるのに、アメリカではもっと太るように言われて戸惑う妊婦さんが多いようです。当院では、極端な体重増加がある人やほとんど増えない人などには、赤ちゃんに影響があるので気を付けてもらいますが、健康的な食事をして適度な運動をしていれば、体重はそれほど気にしません。
赤ちゃんが育っていないとか、双子を妊娠しているとか、妊娠中に体重を増やす必要のある場合には、次のような工夫ができます。普段、バランスの良い食事をしている場合は、バランスを保ったまま食事量を増やしましょう。量は増やせないという場合には、カロリーの高い食品を選んで摂取します。例えば、乳製品はすべて全脂乳にする、普通のシリアルの代わりにグラノラを食べる、などが考えられます。炒め物にしたり、パンにナッツバターを塗ったり、野菜をグラッセにして砂糖とバターを加えたり、調理法も工夫できます。
妊娠中にはたんぱく質だけを取ると、ケトン体(アセトン、β-ヒドロキシ酪酸など)濃度が高まり、胎児に害があるので、必ずパンやごはんなどの主食も一緒に取りましょう。それでも体重の増え方が足りない場合は、栄養士に相談し、おやつなどにカロリーの高い、ナッツ類、乳製品などを加えましょう。
(2006年6月)
押尾祥子先生、土屋亜美先生
押尾祥子先生:
なでしこクリニック主宰。家庭的なクリニックで、女性の健康一般の診断と治療、妊婦検診を行う。エバーグリーン病院の入院治療権を持ち、ひと味違う、助産師としての出産を扱っている。
土屋亜美先生:
アメリカで栄養師の資格を取り、公衆衛生の修士号を持つ。環境と栄養を専門とし、なでしこクリニックで栄養指導を行っている。
Sachiko Oshio, CNM., PhD. Nadeshiko Clinic
TEL:206-354-7045
コメントを書く