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東日本大震災以降、無力感や喪失感、不安感でうつになりがちです。

さまざまな分野の専門家が読者の皆さんの質問にお答えします。

東日本大震災以降、無力感や喪失感、不安感でうつになりがちです。

< 回答者|カウンセラー 角谷紀誉子さん>

今回の地震は、アメリカに住む私達にも大きな影響を与えました。日本の家族が被災しなかったとしても、悲惨な映像をTVや インターネットで見ることで、間接的に影響を受けているのです。これらは「二次受傷」と呼ばれ、他人の苦しみを見たり聞いたりすることで受ける精神的影響です。

症状としては、地震の映像が頭の中で繰り返される、悪夢を見る、家族の安全を極度に心配する、何も感じない、無気力、将来に希望が持てない、ピリピリしている、怒りっぽい、睡眠障害、集中できない、人と接したくない、うつ、罪悪感、酒やたばこの量が増える、体調不良(頭痛、胃腸障害、動悸や息切れなど)です。

上記に加え、こちらに住む日本人には「何もしてあげられない」「日本の家族が停電などで不便な生活を強いられているのに、助け合ったり力になったりできない」と無力さを感じたり、「日本の家族に、帰って来なくて良いと言われた」「しばらくこちらに来れば?と呼んでも来てくれない」などでショックを受けている人もいます。また、国際結婚をしている人の中には、「震災後、長く落ち込んだり、神経が過敏になっている自分の状態を相手が理解してくれない」と、配偶者の地震への反応が、自分と大きく違うことに悲しみや憤りを感じている人もいます。

海外生活者にとって、遠く離れた故郷での災害は大変複雑です。平常時は「日本は平和で、家族は元気」という精神的基礎があり、そのうえでこちらの生活や仕事、勉強、家事、子育てが成り立っているのであって、今回の地震は、その基礎が揺らいでしまう出来事です。「もし、自分の家族に何かあったらどうしよう」というのは、誰もが考えたことでしょう。

まず、同じような立場の日本人と気持ちを語り合うことです。落ち込む時は、地震のニュースは避け、気分転換を図りましょう。バランスの良い食事を取り、カフェインや酒は控えること。適度な運動をし、腹式呼吸をして、心と体を落ち着かせてください。日本の家族にやってあげたいことは遠慮せずにやりましょう。地震に関して温度差のある配偶者には、以上の説明をして、自分の状態が「海外生活者が感じる当たり前の反応」であることを理解してもらうことです。

(2011年5月)

カウンセラー 角谷紀誉子さん


ワシントン州認定臨床ソーシャル・ワーカー。サクセス・アブロード・カウンセリング社代表。著書に『在米心理カウンセラーが教える、留学サクセスマニュアル』(アルク社)などがある。オンライン、電話、対面カウンセリングで、駐在、留学、国際結婚、子育てなどの悩みに対応する。

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