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アメリカでの子育てで、子供の言語発達について……

さまざまな分野の専門家が読者の皆さんの質問にお答えします。

アメリカでの子育てで、子供の言語発達について気を付けることは?

< 回答者|言語聴覚士 鈴木美佐子さん>

子供の言葉は、「本人が持って生まれた力」と「環境要因」が組み合わさって発達します。「環境要因」には、家庭、地域、言語環境など、その子を取り巻くすべての環境が含まれます。海外で育つ子供達と日本で育つ子供達の大きな違いは、この「環境要因」にあると言えます。つまり、基本的にひとつの言語環境下で育つ日本の子供達に対し、海外で育つ子供達は、日常的に複数の言語環境下に置かれており、それぞれの言語が干渉し合うことによる言語の混乱や、ひとつの言語の絶対量が不足するリスクがあります。具体的には、日本語と英語を混ぜて話す、発音の誤りがある、語彙数が不足する、といった症状です。

多くの親が、我が子にはふたつの言語を自由に操れるバイリンガルに育って欲しいと望むところですが、「どちらの言語も不十分」という状態は避けたいものです。と言うのも、柱になる言葉がないと、思考力が育たず、新しい知識を吸収することが困難になるからです。
では、もしお子さんの言葉の発達に心配がある場合、それが「障害」なのか「バイリンガル環境による言語の遅れ」なのか、という判断は容易ではありません。正確な診断をするためには、その子が日常触れているすべての言語を検査し、それぞれの言語での発達の様子を知る必要があります。例えば、日本語は年齢相応の発達をしているが、英語の文法の使い方に誤りがある場合、あるいは、日本語の発音は正しくできるが、英語のRが発音できない。こういった場合は、バイリンガル環境のため、ひとつの言語・発音の発達が遅れていると言えます。しかしお子さんが、ほかの子供に比べて日本語・英語共に言語発達が遅れている、英語・日本語共に発音の誤りがある、ほかの子供と遊びたがらない、本人なりに頑張っているのに授業についていけない、などの心配がある場合は、「環境要因」のみでなく、前述の「本人の持って生まれた力」に何らかの障害がある可能性があります。

環境要因による言葉の遅れの場合、言語発達障害が疑われる場合、いずれにしても、お子さんの発達につまずきが見つかった場合は、できるだけ早く専門家に相談し、解決の糸口を見つけましょう。

(2009年8月)

言語聴覚士 鈴木美佐子さん


言語聴覚士国家資格を取得後、乳児から小学生を中心に言語聴覚士として勤務。2003年渡米。ポートランド州立大学言語聴覚科大学院課程修了。アメリカ言語聴覚士学会及びオレゴン州認定Speech-Language Pathologist。現在、オレゴン州ニューバーグの学校に勤務する傍ら、タイガードにて「Suzuki Speech Therapy」を開業。

Suzuki Speech Therapy TEL: 503-756-1708 www.suzukispeechtherapy.com