さまざまな分野の専門家が読者の皆さんの質問にお答えします。
女性でも剣道や居合道が上達できますか? |
< 回答者|日本美術刀剣店経営 今野龍彦さん>
一般に剣道や居合道は男性のスポーツや武道と考えられがちですが、今では多くの女性が武道を嗜むようになりました。柔道やボクシングのような階級別ではなく、老若男女問わず6歳の子供から、驚くことに90歳の高齢者まで一緒になって稽古を行います。昨年日本で、年に数人しか合格しない難関の昇段審査に、居合道で8段に合格した女性がいました。18歳から始めて現在61歳(某病院副院長兼総看護師長)、女性の8段取得は11年ぶりのふたり目、彼女にとっては12回目の挑戦で得た快挙でした。特に女性は素直なせいか、剣道、居合道共に早く上達するようです。また、東京のある大学では居合道部員の半数を女性が占め、男性よりも勢力を伸ばしてきているといいます。
ちなみに、剣道は小学生の時に母親に付き添われて始める子供が多いですが、その後、母親も一緒になって剣道を始め、後に有段者になったケースもあります。日本では全国家庭婦人剣道大会など女性の剣道大会も多く、近年その人口は増えてきています。武道の人気は単なる歴女ブームというわけではなく、健康志向が武道の魅力を後押しし、特に肩こり、フラストレーション、ストレス解消に効き目があると言われている点などが受けているようです。
言うまでもなく、剣道には先人の知恵がぎっしり詰まっています。日々新しい発見の連続で、肉体面だけでなく精神教育の面でも得るものがあります。今年から日本の中学では武道が必修科目になりましたが、礼に始まり礼に終わると言われるように、礼儀、節度、人格の鍛錬に深く関与して、健全な肉体と精神を鍛えていくことでしょう。
第1回日本少年剣道錬成大会の際、当時の首相は祝辞で「剣道は激しいものです。それは不屈の闘志、強固な体力を要します。剣道は静かなものです。それは美しい姿勢、清い心を要します」と述べました。短文ながら要を得た言葉です。武道の武は戈を止めると書き、古来より争いを治めることに主眼を置き、人と闘うことよりも「活人剣」という人を生かす正しい剣の使い方が大切なのです。アメリカ北西部でも優秀な先生方から指導を受けることができるので、性別や年齢を気にせずに、興味のある方はぜひ挑戦してください。
(2012年5月)
日本美術刀剣店経営 今野龍彦さん
国士舘大学で剣道、居合道を学ぶ。1972年渡米、(財)日本美術刀剣保存協会で
3年間の刀剣研磨研修終了。ベルビュー美術館、WSU美術館他、日本刀剣美術展、企画展示をする。現在日本美術の振興、保存に努めると共に、剣道,居合道の普及に専念。毎週金曜7:00 p.m.よりギャラリーに併設されたスペースで剣道、居合道を教えている。
Japanese Art Swords
TEL : 206-356-3181 www.japaneseartswords.com
コメントを書く