春、夏、秋、冬……ノースウエストの四季に応じた健康法をマクロビオティックの観点でつづる歳時記…文/森保夫 |
第1回温める冬 |
身土不二 = マクロビオティック 「身土不二」とは、簡単に言うと“人間(身)と、生まれ育った環境(土地)は一体(不二)である”という意味で、マクロビオティックの考え方と一致しています。その土地の新鮮な空気を吸い、自然の水を飲み、塩、水、火を使って旬の食材を調理し、よく噛んで食べる。そしてその土地の文化や慣習に従って生活すると、健康で平和な日々が送れます。体調や情緒のバランスが崩れても、それを実践していれば自分で体調を調整できます。これは、伝統的な東洋独特の考え方ですが実用的な生活法です。 アメリカと日本の環境の差は大きいので、アメリカに来たばかりの人が新しい環境に慣れるまでは、心身に負担が掛かります。それをうまく調整するのが食物と、その採り方です。「身土不二」をマスターして環境への順応性を高め、異国での生活を楽しみましょう。 体を冷やさないための手当て ノースウエストには四季があります。冬の寒さは厳しく、臓器に影響を及ぼすこともあります。特に腎臓には負担が掛かりやすく、体が冷えがちになります。体の血行を良くして気の流れを整え、体の内と外から温めて新陳代謝を促しましょう。そうすることで病気に対する抵抗力も高まります。 手当てとしては、腎臓のツボがある足の裏をもみほぐすのが効果的です。足首をグルグル回したり、足踏み健康器やふたつに割った竹を踏むと、腎臓も含め内臓の働きが活発になります。冷え性の人は、足首やひざ、背中の腎臓の裏あたりをショウガ湯(ショウガを擦って布袋に入れ、熱湯に浸けてエキスを抽出する。そのお湯にタオルなどの布を浸し、絞ったもの)で湿布すると、体が温まり血行も良くなります。 体を温める食事 次に食事ですが、体を温める効果のある根菜類を、いつものワカメと豆腐のみそ汁や鍋物に加えてはいかがでしょう。小豆入りの玄米ご飯やヒジキ入りのきんぴらごぼうなども冬場に合います。この時期、熱帯地方から来る食材や料理法は体を冷やすので、できるだけ避けたいものです。また、砂糖や添加物、防腐剤の入った加工品も、体に支障をきたす原因になるので控えましょう。ノースウエストは、70年代から自然農法が盛んで、ベジタリアンも多いです。そのせいか、天然のにがりを使った豆腐や地産の野菜、マクロビオティックの観点に基づいた食材なども手軽に入手できます。 最近、日本の穀菜食を中心とした食事法は、世界の食のモデルとして「身土不二」の法則の下、全世界に静かに根をおろし始めました。世界は正に“クール・シンドフジ”です。皆さんも研究、実践してはいかがですか? (次回は4月号に掲載予定です。) 体 冬は腎臓に負担が掛かりがち。 足の裏をじっくり揉みほぐすと、内臓の働きが活発になり、血行も良くなるので効果的。 食事 |
春、夏、秋、冬……ノースウエストの四季に応じた健康法をマクロビオティックの観点でつづる歳時記…文/森保夫 |
第2回春の“気”を取り込もう |
一物全体 = マクロビオティック 体(健)と心(康)の調和を、食事・呼吸・運動(噛むことも含む)で整えると、人は皆元気を取り戻し、生き方、仕事、家庭、社会全体が自然に見えてきます。マクロビオティックは古代陰陽のものの見方を応用した、現代にも通じる実用的な生活法です。その応用が、身土不二(1月号で紹介)と、旬の食材を一物全体まるごと食べること。例えばダイコンだと皮を剥かずに葉の部分も、ゴボウなら皮ごとアクを抜かずに調理します。だしは入れず、油、みそ、しょう油の量を最小限にして調理すれば、栄養満点でバランスも取れます(アトピー皮膚炎などにも効果的)。 冬の“静”から春の“動”へ。 草木も芽吹き始め、大地の表面が息づいてきました。でもノースウエストの春は、日本に比べると立春を過ぎてもかなり寒く、日中と夜の気温差も激しいです。筋肉の痛みや、体の冷え、生理による不調、アレルギー症状などもこの季節特有で、それらはすべて冬の間のアンバランスな食事やストレスなどが原因です。ジョギング、散歩、自転車、ヨガ、太極拳など、体を動かして深呼吸し、春の“気”を大いに取り込みましょう。…春は、胆のうと肝臓の養生が必要。主なツボ療法としては、「三陰交」(足の内側のくるぶしから親指を除く4本の指を当ててすぐ上にあるすねの骨の縁のツボ)、「丘墟」(足の第4指から外くるぶしに向かって上がった所のくぼみ)に、お灸、指圧、ショウガ湯の湿布(1月号で紹介)を施し、ひざから下を温めましょう。お風呂に入って「曲泉」(ひざ関節の内側のくぼみの中でひざを曲げてできる横ジワの先端)を指圧するのも効果的です。 旬のものを基本に従って調理 ノースウエストは、日本に比べて土地自体が冷えています。それでも地産の根菜類はたくさん収穫されるので、それらの食材(海産物も含む)をみそ汁にたっぷり入れて体を温めることが大切です。春とはいえ夜はまだ冷え込むので、体を冷やすビールや熱帯から来る果物、砂糖、アイスクリームなどは、寒い夜は控えたほうが良いでしょう。 5、6月に入ると、サーモンを始めとした魚介類が出回ります。大量に常食しないことが大切ですが、ほかの温帯、亜熱帯の地域のものよりは割合を多くしても良いでしょう。野菜やイチゴなどのベリー類を併用するとバランスが取れます。食事の50~60%を玄米や雑穀類にすることがマクロビオティックの基本です。 簡単なことですが、毎日の天候と気温に気配りし、その日に合った食事を用意することが、家族の健康維持と予防の秘訣です。食材は必ずその土地でその季節にできるもの、できればオーガニックのものを使いましょう。スーパーなどでは店員さんに産地の確認を。備えあれば憂いなし。“身土不二”をお忘れなく。 春のお手当て 体 食事 |
春、夏、秋、冬……ノースウエストの四季に応じた健康法をマクロビオティックの観点でつづる歳時記…文/森保夫 |
第3回夏の太陽を存分に浴びよう |
ひと口30回以上噛むこと 健康が優れない主な原因は、人と自然の調和が崩れているからです。季節外れの食材、添加物や防腐剤などの化学合成物が入った食品、農薬を大量に使用して作った農産物、その飼料を食べて育った牛や鶏の肉、汚染された海で採れた海産物などが、体の気の流れをブロックして機能を退化させます。そして、それらが原因で体調を崩し、薬の乱用も含めた現代病を次々と生み出すのです。 魚介類を謳歌! 夏本番!地球から宇宙へ上昇していくエネルギーが強まる季節です。ノースウエストの夏はとびきり素晴らしく、平均気温24℃と、日本に比べて湿気も少なくしのぎやすいです。 小腸と心臓に注意 夏は、小腸と心臓を養生することが大切です。腕の内側にある少界(ひじの内側の骨のきわ、ひじを曲げた時にできる横じわの内側)を指圧したり、ショウガ湯で温めると効き目があります。また、「腕骨」(手の甲側の小指と薬指の間を手首に向かってなで、行き止まるところのくぼみ)、「少衝」(小指の先、爪際の内側)、「労宮」(手のひらの中央)を指圧したり、手のひら、手の指をまんべんなく揉むのも良いでしょう。 (次回は10月号に掲載予定です。) 体 食事 |
春、夏、秋、冬……ノースウエストの四季に応じた健康法をマクロビオティックの観点でつづる歳時記…文/森保夫 |
第4回身土不二=感謝のこころ(本能) |
人生の原点に返る 現代人は本能が鈍っています。これを取り戻すには自然と一体になる“身土不二の法則”を理解し実践することが、何よりも効果的です。 体を温めよう さて、いよいよ朝夕は肌寒くなってきました。秋を告げる風が吹き始め、昼夜の気温差も激しく、雨の降る日も増えてきます。体には、特に胃、脾臓、肺、大腸に負担が掛かる季節です。合わせて足腰の痛み、風邪、咳、鼻づまり、下痢、便秘、高熱、アレルギーに苦しむ人も多くなるでしょう。 健康を握るかぎ 秋は食物のおいしい季節です。夏の疲れを癒して大地の恵みをしっかりよく噛んで食べ、食事を大いに楽しみたいものです。野菜、根菜、海産物など、ノースウエストはオーガニックの宝庫です。農家から直接購入できる、ファーマーズ・マーケットなどもにぎわいを見せています。 体 食事 |
森保夫:1978年にシアトルで森指圧クリニックを開業。大学やマッサージ・スクールなどで指圧講師として活躍するほか、日本伝統の食事を基にしたマクロビオティックを指導して、健康で楽しく生きるための生活法を実践している。マクロビオティックについての無料相談も実施しているので、質問などある方は気軽に下記まで連絡を。 |
コメントを書く