琴も大切ですが母・妻の役目はより大事 ▲ハープ奏者と合同で演奏会を開くことも
寂しさから生まれた「琴を教える」アイデア 私が琴を教え始めたきっかけは、渡米以来、主人と子供が会社や学校に行っている間にすることがなく、時間を持て余していたからです。もう日々寂しくて寂しくて……。そこで考えついたのが、自宅での琴の個人レッスンでした。当時は日本文化がまだ珍しく、日本人だけでなく多くのアメリカ人もレッスンに通ってくださいました。 そうしているうちに生徒の数が増えてきたので、琴演奏のグループを結成しようと思い立ちました。1971年のことです。 ポートランドを離れた方も多く、会員数は一時に比べると少なくなりましたが、現在も活動は続けていますし、今後もマイペースに公演を続けていきます。6月20日(日)1:30 p.m.には、札幌市との姉妹都市提携45周年を記念した『友好コンサート』を『パフォーミング・アート・センター』で開きます。約30人の琴と尺八の演奏者がはるばる札幌から来られるんですよ。ぜひ、たくさんの方にお越しいただきたいですね。
数々の思い出深い公演 特に自分達から宣伝した訳でもお願いした訳でもないのですが、会にはポートランドの小学校や中学校、高校、大学、老人ホームなどから「琴を演奏して欲しい」という要請がどんどん来まして、その都度、演奏に行っていました。ある時、小学校の児童の皆さんの前で『さくら』を演奏したのですが、その後、かわいらしいお礼の手紙を一人ひとりからいただいたんですよ。これは今でも私達の宝物です。 アメリカ人のハープ奏者と合同で演奏会を開いたこともありますし、’91年と’01年にそれぞれ開かれた『正派みやび会』結成20周年、30周年記念コンサートでは家元を日本からお呼びし、全米の都市からも多数の楽友が参加して盛大なものになりました。お客さんも約700人が集まってくださいました。これまでに50回以上も公演していますが、それら一つひとつ、すべての公演が思い出深いですね。
私にとって基本は家族を支えること 私は大正の女ですし、非常に封建的な家庭で育ったせいもあると思いますが、やはり妻として家庭を大事にし、夫を陰で支えていくのが私の一番の役目だと思っています。いくらアメリカ生活が長くなっても、心は純日本人のままですから。琴のレッスンや会も大切ですが、それが忙しくなりすぎて家事や家族への注意がなおざりになるということは、一切ありませんでした。今でも朝6時に起きて朝食を作り、主人が帰るまでに夕食も用意します。 私の生徒さんにも、「もし家事などで忙しくて家で練習ができなかったとしても、全然気にしなくてもいいですよ」と常日頃申しております。私の一番弟子のヴェイル愛子さんも「練習して来なくても、先生が怒ったりしなかったから、30年ずっと続けて来られた」と言ってくれています(笑)。(取材・文/純子バイス)
『正派みやび会』 佐伯雅佐恵さん 愛媛県出身。1961年に渡米、1971年に非営利団体『正派みやび会』を結成。琴の大師範の免状を持ち、自宅で琴のレッスンをするかたわら、ボランティアとして各地で日本の伝統楽器である琴を紹介している。
【 正派みやび会 】 1971年に結成された琴演奏グループ。1973年に非営利団体としての認可がおりる。一時は会員数が40人まで増えたが現在は12名で活動。これまでの公演回数は50を超える。 次回公演についてのお問い合わせは電話にて。 2665 SW W. Point Ave., Portland, OR (佐伯さん宅) 503-292-2115
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