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波岡淑子さん:ダンサー

 
ノースウエストで活動するグループや活躍している人にフォーカスしてお届けするこのコーナー。
今回はダンサーの波岡淑子さんをご紹介します。
エネルギーと魂のダンスで みなぎる気持ちを呼び起こして

▲非常に力強く迫力のあるダンスは世界中で評価されている Photo by Kurt Nevel

一言で言い尽くせないダンス遍歴
6歳でモダンダンスを始めて以来、いろいろなダンスや体操を習い、大学卒業時に「ダンスのほかに進みたい道がない」という結論に達しました。でも、周りには特にお手本としたいダンスがなかったので、当時23歳の私はレッスンに通う代わりに、木や風、雨といったあらゆる自然物を先生としながら、“自然”を表現できるように必死で練習しました。また、ブラジルにサンバを習いに行ったり、NYのダンス教室を見に行ったりしながら感性を研ぎ澄まし、自分が先生で生徒という形で自分流のダンス活動を続けていました。
17年前には、『北の国から』などの作品で知られる倉本聰先生が私のダンスを目にし、すごく気に入ってくださったことから、ダンスのお仕事をずっとご一緒させていただきました。これは本当に素晴らしい経験でしたね。
一方で私には「アメリカでダンスをする」という子供の頃からの夢があって、どうしてもあきらめきれずにいました。結婚して子供もいて、ダンス活動にも仕事にも恵まれていましたが、11年前、ついに主人に「お願いだから3年間だけアメリカに行かせてください」と頼み込んで……。最初は呆れていた主人ですが、承諾してくれて、なんと一緒に来てくれました。今はとても充実した毎日を送っています。

▲シアトルで行われた、アート・フェスティバルでの公演にて Photo by Kurt Nevel

全エネルギーと魂で表現する私流のダンス
「あなたのダンスはどんな種類のダンスですか?」とよく聞かれるのですが、この答えには私も非常に困ります。なぜなら、私のダンスには「これ」というスタイルがないから。モダンダンスもバレエも日本舞踊も、武道や三味線、さらに私の経験、すべてが混ざり合って、今の形に至っている「私流のダンス」とでも言いましょうか。私の求めるダンスは、見た目の美しさではまったくありません。自分の心の奥底にある悲しみ、怒り、喜びなど、すべての感情と知恵と経験、エネルギーをいかに出し切って表現できるか、に重点を置いているからです。ダンスを見てくださった方から「踊っているあなたの背中に宇宙への入り口が見えた」「魂をつかまれて、心が泣いている気がする」といったコメントをいただいたこともあります。非常に光栄なことです。
一度きりの人生でいろいろな物にぶつかりながらも逃げずに向かい合うと、おのずと人それぞれの「答え」が見えてきます。私のダンスを見てもらうことで、エネルギーや忘れかけたみなぎる思いを呼び起こしてもらえれば、うれしいですね。(取材・文/純子バイス)

 佐伯雅佐恵さん
波岡淑子(なみおかとしこ)さん
北海道網走出身。6歳からモダンダンスを習い始め、日本舞踊、バレエ、体操とさまざまなダンスを習う。ダンス歴50年以上。11年前にポートランドに移住、ダンス教室を開く傍ら、ロシアやドイツで公演したり、1年半に1度はポートランドでダンス・コンサートを開く。
公演や教室のお問い合せは503-977-0366まで。