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出来杉パパの幸せな子育て

第1回 必須条件・立ち会い

今回K編集長(締切の鬼)の要望により父親の育児エッセーを担当することになりました出来杉パパです(名前からしてふざけているが)。割と社会派、女性の味方(たぶん)、オープン・マインドを三原則に、アメリカでの出産&育児を日本人パパの視点で好き勝手に書かせてもらうという条件で引き受けました。3歳の娘と1歳の息子に恵まれ、他人に何と言われようが自己流の溺愛育児をモットーに日々精進しております。

さて初回のテーマは唐突ですが「立ち会い出産」。「立ち会い出産」ってホントに感動です。アメリカでは当然必須の夫の立ち会いですが、日本で普通のことになってきたのはここ最近。ただ、今でも仕事などを理由に立ち会わない人や、「いや~ちょっとそれは勘弁」とラスト・サムライを地で行く“謙虚”な父親が多数いるのも事実です。

自分は「タチアイはどっしよーかな~」なんて悠長な発言をしたのもつかの間、アメリカでは社会的に立ち会いの選択権はないという事実を知りました。社交の場では当たり前のこととして必ず出産秘話についてあれこれと尋ねられ、とても家族だけのプライベートなことという感じではありません。「あえて立ち会いをしませんでした」なんて発言は、親しい友人達(特に奥様方)を皆敵に回してしまう程、絶対にあり得ないセリフなのです。日本人がついやってしまいそうな「ちょうど出張が入ってしまって……」や「接待が断れなくて……」なんて理由は「子供の出産日がわかっていて仕事を入れるなんて!」と完全白眼状態で睨まれるので注意。これは育児休暇の取得も同じで、アメリカでは最低でも2週間程の父親の育児休暇は当たり前、取らないのは大問題です。こう言う筆者もじつは娘の出産時に仕事の多忙を理由に育児休暇を取らず、それを知った周りのアメリカ人からはこっぴどく責められてしまいました。今でも気分は反省ザル……。アメリカ人の中には1カ月とか半年とか育児休暇を取るアドバンスな夫がいて、社会的にも認められています。

アメリカで妊婦は出産前にベイビー・シャワーなどのパーティーを開き、マタニティー・マッサージやヨガ、出産準備クラスなど、イベントが盛りだくさん。スーパー・マーケットの駐車場最前列には“Mom to be”専用スポットがあるくらい社会に丁重に扱ってもらえます。一方日本で今なお健在なのは、帰宅の遅い夫に愛想を尽かし、妻は実家で出産&育児というパターン。電車でも席を譲ってもらえず、妊婦が社会的にあまり優遇されない日本とは違い、アメリカの妊婦はとてもラッキーな気がします(その分男は仕事が多い?)。

出産を2度立ち会った今では、あの感動の場面にいないなんて絶対にあり得ないと思えますが、初めは“日本人らしく”かなりためらいました。出産立ち会いを棄権できる正当な理由(←言い訳)は何か考えた時もありましたが、「自分が交通事故に遭って入院する」くらいしか思いつきませんでした(そこまでやったらアホだ)。

最後に女性の出産の大変さ&偉大さを讃える機会は多々ありますが、あえて夫の立ち会いの苦労&努力ももっと認知されるべきだとここで言いたいです。立ち会いでは完全黒子の夫ですが、泣きわめき暴れる妻をなだめ、どんな暴言&力みの爪跡にも耐え、超長時間専属マッサージ師となり、馬車馬のように激務した父親こそ真の男性像としてもっと社会的に認知されても良いのでは!?と思う今日このごろです。とはいえお産は人それぞれ。こう思うのは、我が家のように丸24時間レイバーをやった場合のみかも?(←しかも2回とも)。それは中年がフル・マラソンを訓練なしで挑戦し、途中で映画「ロード・オブ・ザ・リング(3部作)」に巻き込まれてしまったかのような疲労&忍耐との戦いでした(汗)。


Mom to be専用駐車スポット
ヤッピー系スーパー・マーケットやモールなどに増殖中。車いすマークのすぐ横にあるコウノトリのマークは見ているだけで和みキャラ。もちろん駐車できるのは妊婦さんのみで、ほかの客から祝辞を浴びながらの買物は、“妊ピー”ブリトニーのようなセレブなひと時を味わえる期間限定アイテム。ただし出産を控えた父親の利用は不可なので要注意。
評価:★★★☆☆
 

第2回 国際人の命名(迷名)ナビ

子供の命名にはとても苦労しました。海外に住む日本人として子供の名前は当然「国際的&日本的」でありたいと思う上、画数や姓名運も多少気にしたりと、出産までの9カ月間は悩みに悩みました。

日米両用の名前の場合、女の子はナオミ、エリカ、アリサなど完全に英語名ながら、日本語でも自然な名前が数多くあります。ベタな日本人でも「梅宮アンナ」っぽいシャレた“ダブル()の芸能人風”の響きになれるのが利点です(←キャシー中島の例は無視)。しかし、男の子となるとケン&ジョージぐらいしか思い浮かばず、ちょっと間違えると“アクション・スター”っぽい響きも。ケンはすでに知り合いに5人ほどいるし、ジョージで思い浮かべるのは山本譲二、ジョージ・ブッシュ、キュリアス・ジョージなどちょっと微妙? ほかに思い付く名前はやっぱり「ショー・コスギ」や「オダギリ・ジョー」のアクション・スター系ばかりでした(知識がないだけか?)。

我が家は夫婦共に日本人なので、「和風で英語でも発音しやすい名前」が絶対条件。ある日、某人気育児雑誌に『命名事典』なる付録が付いていたので即購入しました。最近は個性的な名前を好む親が多いらしく、実際の命名例の一部にちょっと驚き。例:キャラものが好きなので「貴亜来(きゃら)」。京都が好きなので「古都里(ことり)」。自分の愛車から取って「知美亜(シルビア)」。常用漢字なら何でもあり!?という世界でした。

気を取り直して「国際的な“イメージ”の名前」の覧に目をやると、登夢(トム)&真久寿(マックス)、美来乃(ミラノ)など、親のどちらかがアメリカ人なら良いけれど、コテコテ日本人夫婦にはちょっと“ハイカラ”な名前が目白押し(というよりヤンキー入ってる系)。さらに女の子には心愛(ここあ)、百香(もか)、男の子には亜斗夢(あとむ)に藍望(らんぼう)など、「こ、国際的ていうか、単なる外来語!?」と軽い目まいを覚えました。

あと国際人としてミドルネームを付けるかどうかも迷いました。日本の戸籍には当然ミドルネームはないので、戸籍上はファーストネームと一緒になります。例えば姓名が「出来杉・マーガレット・よしこ(仮)」なら、「マーガレットよしこ」が戸籍上のファーストネームとなり、公的書類はすべてその名前で表記されます。つまり日本の保険証にそう表記されていれば、病院の待合室では「次の方、出来杉マーガレットよしこさぁーん!」と呼ばれることに!? じゃ日本の学校はどうなる!? 小心者の自分はそんな小さなことまでも気になってしまい、さらなる不眠の日々が続きました。

娘の時はすんなり決定した名前も、息子の時は最後の最後まで悩みました。気に入った名前があっても、本やウェブサイトで検索した漢字や画数に納得がいかなかったり、アメリカ人が全然発音できなかったりで試行錯誤。結局難産の末「陸玖(りく)」に決定。これなら英語はRickで良いし、和風だし、と出産前にはすっかりその気でした。
しかし、当日まさかの却下。母胎から出て来たばかりの息子を抱いて「お前はリクなんだよ~」と呟いた瞬間、息子の右眉が上がり「それちょっと違うんじゃない?」の表情をした!?ような気がしたのです。動揺した自分は、悩みに悩んで結局妻に相談。

「よしこちゃん、やっぱり名前違うかもー(汗)」、妻:「何をいまさら……(疲)」。結局またひと晩寝ないで、まったく新しい名前を考えたのでありました。

妻:「ひと晩で思い付くなら今まで悩んだ9カ月間はいったい……(呆)」、夫:「命名はインスピレーションも大事ってことです……(多汗)」。

(注)ダブル(double):「日本人と外国人の間に生まれた子供」を指す言葉として使われる。二重のルーツや文化を持つことなどに由来。


21世紀の姓名判断命名navi(http://naming.jp/
画数による姓名判断、音運判断などの名前検索ができるウェブサイト。画数や運勢を気にする人には便利(ただしこの情報が正しいかどうかはあくまでも個人の判断で)。ちなみに時の人・ホリエモンの姓名判断は「総運34×。異質な倫理観を持ち、法や常識を重視しない傾向。地道に。家庭運▲」と出ていたが……。
評価:★★★☆☆
 

第3回 誕生会貧乏

ほぼ毎週末のように子供の誕生会に行っている我が家。1年に約30人としたら、単純計算で約2週間に1度の割合。誕生会を“はしご”する日も珍しくありません。日本では“結婚式貧乏”とよく言いますが、我が家は“誕生会貧乏”。平均約$30のプレゼントだとして、年間約$900の出費? これってどうにか税金控除の対象にでもならないものかと、マジで思う今日このごろです。

アメリカではご丁寧にも、結婚祝いのレジストリーのごとく、欲しい銘柄をリストアップされている場合もあって、いかにも合理主義的(かえって楽ではあるが)。ヒッピー系が多いシアトルでは、キャラクター品はダメ、天然素材でできたエコ・フレンドリーな玩具、または本やアート画材など創造性を高めるもの希望、というように結構面倒くさい指定もあり、頭痛のタネ。中には「子供のプレゼントはいらないので、XXに寄付してください」といった家族ぐるみの慈善事業一家もいて、これには頭が下がります。

アメリカ人主催の誕生会となると、「スポンジ・ボブ」や「ドーラといっしょに大冒険(Dora the Explorer)」などのキャラクターが“スプレー・ペイント”された原色(減食?)系のケーキに加え、クッキー、アイス、キャンディーなどのオンパレード。全米シュガー選手権に出場するかのように、親子共々気合を入れて参加する必要があります。子供達は舌も唇も赤・青・緑で帰宅し、就寝時間になっても完全スーパー・シュガー・ハイ(大人だったら完全致死量)。パーティーで暴れまくって疲れているのに、糖質過多で眠れない状態が続き、カウチの上でのたうち回って撃沈という最悪のフィナーレが我が家のパターンです(どっかの酔っぱらいよりタチが悪いぜ←自分)。

それにも増して困るのが、テーマ設定のある誕生会。招待状に「テーマはカリブの海賊だよ!」と書かれていた日にゃ、家族で眼帯を付け、目の下に隈を入れて、肩にオウムを付けた衣装を揃えて……とまるで「欽ちゃんの仮装大賞」状態(笑)。プレゼント以外にもお金が掛かるので大変です(ハロウィーンでもあるまいし)。娘のアイシャが“プリンセス誕生会”に呼ばれた時は、「うちはローンがたくさんあるんだから、我慢しなさい!」なんて言えるはずもなく、ドレス、シューズ、ティアラにネックレスとすべて買い揃えました(完全親バカだ)。当日、メイクをしたいと言い出す娘に「そんなもんガキがいるか~」と一喝してパーティーに行ったら、ほかの子供はみんなメイクアップしててビックリ! 「アイシャにもメイクしてあげるね!」と、主役のプリンセス・ケイトは、ウォルマートで買った巨大なジュラルミン・ボックス風化粧箱(もちろん子供用)を開けたものの、3歳のガキんちょにメイクなどできるわけがなく、でき上がった顔はまさに交通事故に遭った美輪明宏と、整形に失敗したメグ・ライアン風。挙げ句の果てに、参加している約20人のちびプリンセス全員にこのメイクが施され、まるでマイケル・ジャクソンの家に呼ばれて“エリザベス・テイラーごっこ”をやらされたような哀れな子供達。そんな不気味な姿にも「あら~あなた、とってもキレイよ~」なんて、自分の娘を褒めそやしているアメリカ人のメンタリティーには付いていけない、小市民な日本人若干2名……(汗)。

でも、当の本人は相当楽しかったらしく、「アイシャのバースデーもプリンセスね!」なんて無邪気に言うので大変困ってます。「アイシャは日本人だから、“ラブandベリー大会”にしようよ」などと、わけのわからぬ説得をし、なんとかあの恐ろしいプリンセス祭りを避けようと努力している次第です。


オシャレ魔女 ラブandベリー
ゲームセンターで遊べる、日本の女の子に大人気の対戦型カード・ゲーム(アメリカには未入荷)。男の子向けの「甲虫王者ムシキング」と同じシステムで、オシャレ・アイテム(カード)を集めて、オシャレ度とダンスを競う。園児から小学生までを虜にし、ちびっ子のトレンドセッターは、今やゲームのCGキャラ、ラブとベリーなのである。
評価:★★☆☆☆
 

第4回 2歳のボーイフレンド

娘のアイシャが2歳の時、引っ越しでデイケアを変えました。突然の変化に泣きじゃくる娘。2週間たっても毎朝足元にしがみ付き、泣いて離れない娘を不憫に思う毎日でした。ある朝、クラスメイトのエイデンがアイシャの所にやって来て「一緒に積み木しようよ」と娘の手を引いて教室の奥へ消えて行きました。「友達ができて良かった~」と胸をなでおろしたのもつかの間、それが悪夢の始まりでした……。

それ以来、彼は入り口で娘が来るのを待ち、2人で遊ぶ日々が続きました。「お~無邪気な2歳児達よ、美しき友情」と微笑みながら見ていましたが、甘かった。あー甘かった、このデキスギ父。ある日先生が「アイシャちゃんはボーイフレンドができて良かったわね。エイデンととってもキュートなカップルだわ~」と不意の先制パンチ! 「はぁ!? な、何のことでしょう!?」と動揺する父に「2人はいつも一緒なのよ。今日はエイデンがアイシャの口にパイを持って行って食べさせてあげてたし、お昼寝の時はチューしていたわ~(笑)」とダメ押しの爆弾ブロー。「ぬ、ぬ、ぬゎんだぁとぉ~~*#@!?!」

たがが2歳半のガキとなめていた父は完全にノックアウト。2歳で恋心なんて芽生えるわけ? まだオムツも取れちゃいないガキんちょでしょ?(この後永遠に愚痴が続く)。妻に助けを求めても「かわいいじゃなーい。アイシャがデイケアに慣れたのも彼のおかげよ」といたってお気楽。もはや娘を守れるのは我ひとり(←もう何も見えない)と、その日からシークレットサービスのごとく娘をエスコート。毎朝車中では「今日はソフィアと遊ぼうね~」を連呼しメンタル面から再考を促進。車から降ろすやいなや女の子のグループに直行し「ガールズと遊ぼうね~」と無理矢理輪に押し込んで、男からの離脱作戦を開始。日中はデイケアに設置されているウェブカムを四六時中監視(←ストーカー気味)。

しかしその男撃退キャンペーン真っ最中にさらなる追い打ちが。ある日の帰りにエイデンの母に遭遇。彼女は満面の笑顔で「エイデンはね、アイシャに夢中なの。家に帰ってもアイ・ラブ・アイシャってずーっと言ってるし、寝る前もオー・マイ・ラブって写真を見てるわ。ほほほぉぉ~!」と暴言。これこそまさに泣きっ面に蜂! 子も子なら親も親! ティーンになるまでこんな心配は無用と思っていたのに、たった“2年”で父と娘のイノセントな日々は終焉!!(大泣)。

自分が子供の時は「ふん! 女子なんかと遊んでられるかい!」って鼻水垂らして「ウルトラマンごっこ」したもんだが、時代の変化か、文化の違いか、オヤジが古いだけか!? アメリカでは子供に彼氏彼女ができることを奨励し、親も子も恋人がいることを自慢するのが大好き。自分の写真をあげたり、早くからデートをこなしたり、人前でいちゃいちゃしたりと既に大人並み。なんせ子供人生最大のイベントがプロム・パーティーで締めくくられる文化。異性関係の英才教育はすでに幼児期に始まっているのです(父親の皆さん要注意)!

その約2カ月後、今度はエイデン一家が引っ越し。少し寂しそうなアイシャを尻目にほっと胸をなで下ろす父……が、その安堵も一瞬、数週間後には新ボーイフレンドが出現! なんと今度はアイシャ自ら「エリックが好きなの」と言い始める始末。「じゃ誕生会にはエリックも呼ぼうね」と助長する妻にも完全失望。これじゃティーンエージャーまでに何人彼氏ができることか!(怒)。もう父の望みは息子(1歳)のみと失意体前屈_| ̄|○する姿に「先が思いやられるわ~」と呆れ顔の妻。こんな気持ちをわかってくれるのは、愛娘を持つ父親だけです(励ましのお便り待ってます)。


ウェブカム
各部屋にウェブ用カメラが設置されているデイケアがおすすめ。インターネット接続さえできれば、いつでもどこからでも子供の様子が見られる。「あ、うちの子今泣いてる」とか「ごはんちゃんと食べてる」とか、その時の様子が良くわかるので安心して子供を預けられる。溺愛気味の親には仕事の妨げにもなりかねないので注意(←自分)。
評価:★★★★☆
 

第5回 変な日本語シャベリング!?

食事中に3歳の娘、アイシャが突然「アイム・タベリング・ナットー!」と絶叫。「はぁ? タベリング@?#?」と目が点になる両親でしたが、よくよく聞いてみると「I’m 食べる+ing 納豆」という意味で「タベリング」。これには夫婦で大爆笑。日本語と英語が混ざっていても、ちゃんと文法が理論上合っている点に改めて「子供ってすごい!」と感心もしました。が、「アイム・アソビング」「アルキング」など、日々変な現在進行形をしゃべる娘に、始めは面白がっていた両親も「これひょっとしてマズいかも?」と思うように……。

ある日、友人が子供を連れて我が家に遊びに来た時のこと。同い年のマリナちゃんがしゃべる言葉は、「アイシャちゃん、おままごとして遊ぼうよ~」「アイシャちゃんはこのニンジンを料理してね~」などと、きれいな日本語。それに対してうちの子は、「オッケー! アイム・キリング・ニンジン(切る+ing)だぜ~」「ユー・キャン・タベル・このタマゴよ、オッケー?」。両親共に日本人だから、まあ日本語は大丈夫でしょうと思っていたのが甘かったか!? よく考えると、自分達も在米年数を重ね、気付かないうちに変な日本語英語をしゃべっているし、アイシャの行く託児所は日本人がひとりもいないから、英語をしゃべる量が圧倒的に多い……。

その日から我が家では、“日本語強化キャンペーン”を直ちに開始し「英語一切使用禁止」を発令。「両親自ら、きれいな日本語をしゃべろう!」をモットーに、体育会系の我が家は違反した者は腕立て伏せ10回の罰則も導入(大人のみ)。しかし、やたらとジェスチャーが多くなったり、堅苦しい日本語を連発したりと、まるでイマイチ噛み合っていない木村太郎&安藤優子コンビの会話風で、夫婦の会話もわびしい感じに(シーン)。そして、少しでも子供の口から英語が出ようものなら「日本語で言いなさい!」と一喝。そういう自分も、ついつい英語が出てしまった時は、直後に日本語に翻訳訂正。そんな“ひとり同時通訳者”みたいなことをやっていたら、今度は子供まで「英語で言って、直後に日本語で翻訳」で話すようになり、日英両語を同時通訳し合う親子の会話は、ますます混乱状態に……。

ある日友人から、「毎年夏休みに子供を実家に連れて帰って、夏の間だけ地元の保育園に入れてもらうの。日本語もうまくなるよ」と言われ、なるほどと納得。日々の努力も大事だが特効薬は何と言っても、「日本語漬け環境でネイティブから学ぶのが一番!」だと思い、夏休み1カ月間、妻の実家に子供を送り込む“逆ホームステイ大作戦”を実施しました。アイシャの日本滞在も、始めのころはお店に行って「アイ・ワン・このヘロキティ!」と巻き舌で叫んだり、「アイ・ドン・ワン・タベル・このヌードー(←麺のこと)」などと発狂したり、周りからはかなり不思議な目で見られていました(汗)。しかもあまりに「ダディー、ダディー」を連発するので、赤の他人から「いいわねー、あなたのパパはヒロミ・ゴーで(笑)」とからかわれる始末。

しかし、さすが脳の柔らかい子供。みるみるうちに英語は消えて、日本語をどんどんしゃべるようになりました。自分は仕事があったので、最後はほとんど実家にまかせっきりになっていたものの、アイシャがアメリカに戻り、出てくる言葉はすべて日本語だけになり、かなり満足。だがよく聞いてみると、何だかアクセントがおかしい!? 「ほーよほーよ、これ食べんさい」「それは○○じゃけんねー」。なんと、○島弁の応酬だったのでした!(苦笑)。「なるほど、英語もオーストラリアに行けば発音も単語も違ってくるし……。アメリカで○島弁しゃべる3歳児っていうのもかわいいかも!?(汗)」と自分に言い聞かせ、日本語教育の苦悩は続くのでした。


日本の保育園&幼稚園
超短期間でも入園させてくれる所もあるので帰国の際に調べてみよう。日本のおいしい給食やお弁当を食べて、童謡を歌い、みんなお揃いのポーズでお遊戯する姿は、日本チックで新鮮かも。お決まりの制服や割烹着(?)みたいなエプロンに丸いカバン、白い上履き。うーん、日本の幼稚園が懐かしい。
評価:★★★★☆
 

第6回 0.5歳のビーガンとその仲間達

息子が約6カ月のころ、顔や全身の肌がヤケドを負ったかのようにただれて真っ赤に腫れ上がり、慌てて病院に連れて行きました。突然のことに青ざめる両親。そして、診断の結果はなんと“食物アレルギー”。主要品目30種類のパッチ・テストの末、牛乳、卵、肉、魚、小麦に反応アリの結果が……。ドクターいわく「この品目の食べ物をすべて除去してみてください」。

「そ、それってほとんどの食べ物じゃん! まだ食べ物も食べてないのに」。そう、母乳で授乳中だったため、結局は妻がそのアレルギー群を全部除去しないといけないということ。残るは野菜、大豆、米ぐらい。「肉は食べないけど、チーズは食べます」とか「クッキー(卵入り)だけはオッケー」とかいう“なんちゃってベジタリアン”じゃない、卵も牛乳もダメ、さらには小麦も食べない正真正銘の絶対菜食主義者“ビーガン”の誕生でした。

しかし、「やっぱり家族の協力なくして、この偉業は達成できず!」と、“家族全員がビーガン教に改宗”の辞令が発動!(ノー・チョイス)。気合を入れて始めたのはいいが、日々食卓に並ぶのは野菜(汗)。食っても、食っても野菜オンリー。朝から晩までヤ・サ・イ。そんな毎日に段々と「オレって祖先はウサギ?」と自問自答を繰り返し、娘も「なんじゃこりゃ~~!」と発狂寸前の松田優作気味でちっとも食べず、家族のストレスは最高潮。それまでCATVの「フード・チャンネル」が大好きだった一家なのに、BBQなんてテーマで放映する日には、飢えたハイエナのように釘付けになってしまい、あえなく鑑賞禁止に。このウン十年間、「肉なくしてメイン・コースあらず」的な生活を送ってきた人間にとって、これはストレスどころかまさに拷問。しかも、しょう油には大豆だけでなく小麦も入っているということが発覚してからは完全ノック・アウト(日本人として終わりだ!)。

しかし、そんな家族一丸の努力もむなしく、息子のアレルギーはあまり改善せず、結局ドクターからは「これ以上続けると家族が栄養失調になる可能性がある……」との判断で中止令が。これで食生活が普通に戻る!(バンザイ!)と喜んだのも束の間、今度は息子に「超特別アレルギー除去粉ミルク」なるものを授乳することになり、なんとそれが普通の粉ミルクの約5倍(!)の値段という代物だったのでした。しかも、男の子ゆえか消費量が半端なく多く、月々の家族3人の食費よりもその粉ミルク代のほうが高いという、ものすごいエンゲル係数だった約1年(涙)。1歳を過ぎてから離乳食を始めましたが、食料品店では買う全部の食材の成分表示とにらめっこの毎日。幸いシアトルにはナチュラル系ストアが多く、いろいろなアレルギー対応食品が比較的手に入りやすいのが救い。豆腐でできた偽のチーズや肉など“なんちゃって食品”がいろいろあって、食べると「お、結構本物みたい!」とか「ぐぇ! まずい!」など、ちょっとしたゲーム感覚で楽しく(?)試しています(豆腐ソーセージはかなりマズいゾ)。

この食べ物アレルギーの一件で、苦労は山ほどありますが、これも貴重な知識&経験。家族のスピリットまで変えられた感じで、とても前向き(というか一番変わったのは自分かも)。そして、うれしい誤算(?)は、なんと自分の体重が10キロ以上減! 大学生以来20キロ増の巨顔&ビール腹&ラブ・ハンドル(腰周りのぜい肉)の定番3点セットがスッキリ消え、より健康に!(ってどっかのダイエット広告風)。そう考えると、アレルギー対策のために“マルコメ坊主刈り”にした息子の顔が、なんだかまるでチベット僧のように思えてきて、後光が差しているように見える……かも!?


ビーガンのお菓子
シアトルのビーガン御用達ベーカリー「フライング・エプロン」(www.flyingapron.net)。小麦、卵、牛乳を含まない完全ビーガンのペイストリーが揃う。玄米粉、豆乳、ココナッツなどを原料にクッキー、マフィン、ケーキができてしまうのは感動のひと言。直営2店舗ほか、「PCC」などナチュラル系ストアでも手に入る。
評価:★★★☆☆
 

第7回 日本の幼児番組に逆カルチャー・ショック!

日本の幼児番組の“歌のおにいさん”って、かなりヤバくないですか? 表情豊かに喜怒哀楽を見せるオーバー・リアクション気味のおにいさんが、いいトシして自分を「おにいさんはね~~」と呼び、オーバーオールにハイソックス姿で踊り狂う姿は、正気の人間だったら絶対におかしいと思います。近ごろはアイドル扱いされる“新種族なおにいさん”達も登場。元体操選手で、宙返りにバック転、玉乗りができるというだけで、ルックスはどこがかっこいいのかサッパリ理解できない、さわやか系体操のおにいさんは、本やCDも出し、コンサートはいつも大盛況。元サーファー(?)なのかドーラン塗り過ぎなのかわからない、かなりガングロ入っている歌のおにいさん(絶対50歳は近いはず!)は、黒の革ズボンに茶髪で、どう見てもヤンママの受けを狙っているとしか思えません。満面の笑顔に振り付けは往年の聖子ちゃん風サイドステップ、声を裏返して高らかに歌い上げるガングロおにいさんを見て、この人の人生、どこで狂ったのだろうと考えずにはいられません。

アメリカ生活が長いせいか、日本との幼児文化の違いに驚くこともあります。日本の子供に大人気と言われている「トラのトラゴロウ(仮名)」のビデオをもらい、娘と一緒に見ていたら、3歳ぐらいの女の子とその番組の“おにいさん”が一緒にお風呂に入り、手遊び歌を始めたのでした。もちろん、ふたりとも裸で……。最初は開いた口が塞がらないというか、驚きの光景にただ呆然。せめて設定が“親子”だったら良かったのに、冒頭で「○○おにいさんとお風呂で遊ぼー! イエーイ!」と高らかに叫んでいるからどうしようもない(苦笑)。その後も、パジャマに着替えたふたりが、布団の上でトンネルごっこやコチョコチョ遊びをしながら楽しそうに遊ぶシーンが延々続くので、もう耐えられずにビデオ停止(途中でビデオを止められた子供達は発狂!)。実の親子ですら一緒にお風呂に入ることがタブー視されているこのアメリカで、これはあり得ない!!(血圧上昇↑)。これって「アン○ンマン」のバ○子さんとジャ○おじさんが、一体どういう血縁関係で、なぜゆえあのふたりで一緒に暮らしているのか?という疑問と同じぐらいタブーなネタだと思います(真実を知っている人、教えてください)。

日本で絶大なる人気を誇るその「アン○ンマン」も、アメリカ人に言わせるとちょっと問題らしい。主人公が頭を食われ、挙げ句の果てに首から上が吹っ飛び新しい顔に入れ替わるというシーンが、アメリカ人にとっては“バイオレント”らしいのです(確かに)。和製アニメ・ブームの中、海外に進出できない理由は、「Azuki Bean Bread Man」というオリエンタル過ぎる設定に問題があるのではなく、このキャラの描写&行動が世界の橋を渡れない問題だったようで……。

またある日、手遊び歌にハマっている娘のアイシャに、喜ぶだろうと思って見せた日本の某幼児番組の一部に手遊びコーナーがあり、「ぞうさん」の手遊びを教えていました。テーブルの上で5本指を丸めて立てて、中指をぞうの鼻のように持ち上げて「ぱお~ん!」と言いながらぞうさんのマネをする手遊びです。「こ、これは何か嫌な予感が」と思っていたら、案の定アイシャのぞうさんは空中を飛び、中指が高く空へ……(ヤバいっすよ、これ)。まあ、家の中だったらいいかと思っていたら、後日、病院の待合室で暇を持て余してしまったアイシャは、唐突に「ダディー、ぞうさんするね! ぱっおおぉぉ~~ん」と大声で叫び、中指を突き出してしまったのです(しかも両手)。あ然とする待合室内の約20人……。皆さん、子供に見せる番組はちゃんとスクリーニングしてから見せましょう(汗)。


いないいないばぁっ!
うちの子のお気に入り番組がコレ。ふうか、ワンワン&うーたんによる歌、踊り、ショート・コントに子供達は釘付け。たまに絶対大人にしかわからないギャグ&オチもあり、変な“おにいさん”も出て来ないので、大人でも観賞に耐え得る番組。対象年齢0~2歳だが(低過ぎないか?)、4歳ぐらいまで楽しめる。
ウェブサイト:www.nhk.or.jp/kids/program/inaiinai.html
評価:★★★★☆
 

第8回 ゲロの傾向と対策

「寝る子は育つ」と言いますが、ウチの子達は娘も息子も寝ることが大嫌いです。お昼寝が嫌いで、とにかく起きて遊んでいたいタイプ(←誰かに似ている)。家では元より託児所でも、周りのちびっ子達がスヤスヤ寝ている中、目を開けて2時間じっと寝転がっている強者。たとえ眠たくなっても自分の頭をグーで叩き、「寝るな! 寝るんじゃない!」と、ひとりカツを入れ、まるで雪山の遭難者のごとく寝ることを拒みます(そこまでするか)。

とにかく、ベビー・ベッドに入れられることは人生最大のピンチ。“柵”に入れられた瞬間から、まるで自由の権利を奪われたことに抗議するデモ隊のごとく大暴れ。泣きわめくだけならまだしも、このチビ達の必殺技は“ゲロ発射”。昼夜にお召し上がりになられた大量の穀物&ミルクを吐いて大暴れすることで、不自由の身から解放されることを知っている……(ああ恐ろし)。しかも、仁王立ちのまま歌舞伎のフィナーレのごとく“吹き上げる”のだから、ウチのヤツラはただ者じゃない。真夜中にゲロをやられた日には、まさにそこは地獄絵。眠いフラフラの脳ミソ分裂状態での“ゲロの始末”ほど、人生辛いものはない。チビの体をきれいに拭き、着替えさせ、その場ですぐにシーツを取り替え&掃除。そして、またイチから寝かしつけの再開。子供がおとなしく寝静まったところで再び起きて、今度はシーツの洗濯(もちろん手洗いから☆)。そのまま放置して寝てしまうと、早朝にガス中毒で一家死亡しそうなほどの激臭になるので注意が必要です(食べ物によって濃度は異なる)。

ゆっくり寝たい朝もトドメを刺すかのごとく、チビ達は早朝6時にはきっちり起床してくれます(涙)。心身共に疲れ果てこれ以上動けないというところに、日本のジジババからもらった「ド○えもん太鼓」(大山のぶ○の声入り)をガンガン叩きながら、「夏祭りだよ! ド○えもん音頭!」の音楽と共に家中を“勝利マーチ”する、ああ愛おしい我が子達よ~(←枕に顔を沈め、ぷるぷる震えている)。そして「しゃべるバイキ○マン人形」が「はぁ~ひふ~へほぉ~!」と絶叫し、「ハローキ○ィの携帯電話」が「ハロハロ~! また一緒に遊んでネ~!」と10回以上連呼した瞬間、ゾンビとなった某父は再び目覚め、この家から“音の出る玩具”をすべて破壊消滅させるのでした……m(_ _)m。

そんなデビルな悪行をやっておきながら、まるで呪縛から解き放たれ羽をばたつかせている天使のようにつぶらな瞳で、「ダデ、マミ、オッハヨだよ!」と、青ざめやせこけた両親の元で無邪気にケラケラ笑う子供達……。この“笑顔”だけですべてを帳消しにしてしまうのだから、子供ってなんてすごい(ズルイ)生き物なんだろうと思わずにはいられません。こんなことが年中無休で続いたって許せてしまうから、親も不思議(←アホ)な生き物です(または親バカとも言う)。

そして、わが家では“ゲロ対策”の研究を繰り返す毎日。ご飯やミルクをたくさん食べ&飲むとよく寝るという某友人M氏からの助言は逆効果ということがわかり、食事の量は毎回厳密にチェックします。温度が高めの粉ミルクはむせ酔いし、吐きやすさを助長するので温度にも敏感です。オレンジ・ジュースとミルクの飲み合わせは悪く、アップル・ジュースはゲ○ピーを招きやすいなどの研究成果も出ています。最近では泣き過ぎてせき込み始めると“ゲロ警報”が発令され、子供は速やかにバスルームに避難させられるようになっています。しかし、そんな日々の研究もむなしく、今日もわが家の地下室の洗濯機は夜な夜な音を立てて回っているのでした……(しーん)。


日本の夜泣き薬
オババからもらった夜泣き、かんの虫に効くと言われる「○○丸」なども試してみたが効果は……???。成分はジャコウ、オウレン、カンゾウって、一体ナンダ?「乳吐き」にも効果があるらしいが「効果が出るまでに1カ月ほど掛かる場合も」って、薬が効くのが先か体力が持つのが先か……。大正時代風なパッケージ・デザインが大変気になります。
ウェブサイト:www.nhk.or.jp/kids/program/inaiinai.html
評価:★☆☆☆☆
 

第9回 最強2歳児 「Terrible 2」

2歳児はアメリカで「Terrible 2」と呼ばれるように、子供史上で最悪。いたずら大好き&言葉がまだ完全にわからない上に悪気がないというところに、そのタチの悪さがうかがえます。

ポテチを箸で食べるほど潔癖性な出父(出来杉パパ)にとって、2歳児の食事法はあり得ないのひと言です。手で食べるのはまだしも、ミルクの中にご飯やおかずを入れてかき混ぜた後にごくごく飲むというその行為はまともな人間では考えられません。そしてその味が気に入らなかった場合は、「オッオー!」と叫びながらコップを空高く持ち上げ、逆さまに。そしてお約束のごとく「オーーノーー!!」と叫びながらテーブルの上でその特製ミックスを素早く広げ、事態が尋常じゃないことを知らせてくれます(汗)。そして「あ~あ」とため息までつき、これがあくまでもアクシデントであることを強調。「何やっとんじゃー!」と怒鳴られた瞬間、そのつぶらな瞳が三流少女漫画の瞳のように黒目が5倍に拡大し、瞬時に大粒の涙で覆われます(この間3秒停止)。そして「ダディー、ノーーサンキューダヨ!」とテーブルの上にうなだれ(特製ミックスの上に寝て)、この世の終わりかのように泣き叫ぶ姿は、まるで昔の大映ドラマを見ているかのようです(しーん)。

そしてある時は、トマトのパスタを自らの頭に掛けてシャンプーを始めたり、マカロニの穴に指を突っ込んで指人形遊びをしたり、うどんをネックレスとして首に掛け始めたりと、自虐ギャグはとどまるところを知りません。こんなのウチの子だけかと思いきや、某友人M宅ではビデオ・デッキの中に食パンが入っていたり、CDプレーヤーでアンパンが回っていたりと、かなりクリエイティブなお子様方もいらっしゃるようで少し安心しました。

トイレも常に“危険”と隣り合わせ。安全ロックを付けてフタをしていないと、ボートが浮かんでいたり、マイ・リトル・ポニーが泳いでいたりするので注意が必要です。そして、子供はトイレット・ペーパーが大好き。うっかりドアを閉め忘れていると、トイレット・ペーパーは全ロール伸ばされて便器の中にモリモリになっていたり、シルクロードのごとく寝室まで白い帯が続いていたりすることがあります。また、手の届くところに歯磨き粉や口紅などを放置しておくと、殺人事件の後のような恐ろしい事態になるので皆さん注意しましょう。

ひとりでおとなしく遊んでいる時ほど要注意。90%以上の確率でとんでもないことをやっています。リビングでお絵描きをしていると思っていたら、紙からカーペットに移り、そしてソファーから壁へと静かに進行。15分も放っておくと、ヘタウマ水森亜土風アボリジニー民族の壁画が完成しているのに驚かされます。極めつけは、裏庭で静かに遊んでいると思ったら「ガコン! ガコン!」と音が響いてきた時。小石を拾い、買ったばかりの愛車目掛けて投球練習しているではありませんか! きっと“チチロー”なら静観していたのかもしれませんが、出父は思わず失神してしまいそうになりました。

ある日、ソファーの上でついウトウトお昼寝をしてしまった日のこと。目覚めた出父がスーパーに買い物に行くと、周りの人達がなんだかフレンドリーに「You look cute!」「You are funny」など、いつもと違うご挨拶。「ん? 何かがおかしい?」。スーパーの窓ガラスに映る自分の姿を見て、やられた!と思った時にはすでに遅し。恐る恐る自分の額を触り手にしたものは、サンバを踊るお姉さんが描かれた“チキータ・バナナ”のシール1枚……(完全に固まる)。そんな“カワイイいたずら”をする子供達を今日も愛さずにはいられません(汗)。


「チャイルド・プルーフ」
子供がハイハイを始めたら、いたずら対策(チャイルド・プルーフ)を施しましょう。ビデオ・デッキやテレビ(うちのビデオは2台破壊されました)、コンセント(知人の子供が爆発させ、ドリフのカミナリ様のようになったとか)もすべてカバー。ちなみにトイレ・カバーのロックは、開け方を知らないと大人でも開くことはできないので訓練が必要。
ウェブサイト:www.nhk.or.jp/kids/program/inaiinai.html
評価:★★★☆☆
 

第10回 トドラーズと飛行機

この世で最も避けたいのは、“小悪魔トドラーズ”と一緒に飛行機に乗ること。しかし、ついにその日がやって来てしまったのです……。楽しいはずのバケーションは計画段階からすでに憂鬱&緊張気味。親族の結婚式ということで断ることもできず、「フィア・ファクター」※1収録前日の出場挑戦者のように武者震いの日々が続きました。綿密に計画を練り、子供の大好きな絵本&DVDを厳正に吟味し、塗り絵、シールなども大量購入。当日の機内持ち込み手荷物は、まるで知育教材セールスマンの鞄のようにパンパンに。

最初の難関はセキュリティー・チェック。長蛇の列で、迷路のように仕切られた黒帯テープの誘導路を何度もターンすること約1時間。乳母車に縛り付けられ、まったく自由が利かない子供達は、サーカス団の空中曲芸者のように乳母車から中吊り気味に身を伸ばし、エビ反りで発狂寸前です。チェック・ポイントでは、子持ちだから甘くしてくれるだろうという安易な期待は一瞬にして消滅。靴は脱がされ、乳母車は子供を下ろしてからセキュリティーの機械へ。子供を抱っこしながらも、パソコンなど電子機器類のすべての電源を入切するように命じられ、さらに荷物&全身の隅々に容赦なく入念なチェックが入ります。予想以上の事態に、まるでお手玉に失敗したピエロが慌てふためいてボール拾いしているかのような、サーカス団長の某父D。ほ乳瓶に入っているミルクも飲んで見せろと言われた時には、「そこまでやらせるか」と思いつつ、唇を噛みしめながら自分でほ乳瓶からひと口……。「いや、あんたじゃなくてベイビーのほうで良かったんだが」と言われ、絶句。「あ、そっか!」と明るく笑ってごまかす余裕もなく、額に青い線が走ったD父がそこにしばらく静止していました(しーん)。

そんな親の苦労も知ったこっちゃないチビどもは、初めての飛行機に「いっえ~~い! えあぷれーん!!」と、いつも以上にハイ・テンション。ドリンク&機内食サービス時には、「こんな狭いブタ箱でどうやって食えって言うんじゃい!」と、キレる子供達を抑えるのに必死で、自分の分までたどり着かない(泣)。満を持して持ち込んだエンタメ・グッズを順次投入すると、好きな絵本を3冊熟読、DVDは2本観賞、そしてシールに塗り絵遊びと、予定通り順風満帆に約5時間が経過。そしてネタ切れ……。完全に切れた……。日本までのフライトは残り5時間弱……(しーん)。子供達は、DVDを見過ぎて目はギンギン。黙らせるためにお菓子をやり過ぎて、シュガー・ハイ。「もうエンタメがねーじゃねーかー」と言わんばかりに、子供達ふたりは同時にエビ反りの発狂。前席のおっさんのシート背面に容赦なく蹴りを入れる弟&テーブルをドラムのように叩く姉の“若きチンピラ”2名。隣に座るおばちゃんにオレンジ・ジュースをぶちまけ、エコノミー・クラスのど真ん中で“アクシデント”※2(合掌)。「申し訳ありません~~!」と慌てふためき、アリンコのように小さくなっているD父。そんな中、某母Yは「わたし達家族と一緒になってしまった、今日の乗客達はアンラッキー」と、すでにサジを投げ、開き直って映画観賞に没頭できるかなりの強者……。そして残りの5時間、この素敵なDファミリーが機内でどう過ごしたかは、その同乗者のみぞ知る良い思い出となったのでした(思い出したくもない)。

最近、出張などでひとりで飛行機に乗る時には、似たような境遇の“哀れな子連れファミリー”に、素敵な微笑み返しでフレンドリーに接せずにはいられないD父です。

※1 NBCで放映されている視聴者参加型番組。賞金を狙う挑戦者達が、ゴキブリの一気食いなど過酷な我慢比べをする。
※2 英語では“おもらし”のことをアクシデントと言う。


「空港でDVDレンタル」
アメリカ国内の旅行なら、空港内でDVDプレーヤー&映画がレンタルできる。お店でピックアップし、到着空港の同じお店で、または郵送で返却が可能。子供向けのDVDも充実しているので、子連れファミリーは要チェック。
「インモーション・エンターテインメント」のウェブサイト:www.inmotionpictures.com
評価:★★★☆☆
 

最終回 プライスレス:チビとサンタの写真

ホリデー・シーズンになると頭をよぎるのは、デパートやモールにできるサンタの家(別名:写真屋)。憧れのサンタと一緒に写真を撮るため、親子の長い行列がモール内を巡り、“ただいま2時間待ち”の看板を見ただけで頭がクラクラしたのを思い出します。うちの子にもいつかは「サンタさんと写真が撮りたーい!」なんてせがまれ、このギョーレツに並ぶ日が来るのだろうな~などと、昔はよく想像したものでした。まだ生後数カ月のベイビーやバブバブ・ヨチヨチ系のオチビちゃん達が、サンタと一緒に写真を撮っているのをたまに見掛けますが、この当事者達(子供)はまだサンタの存在を知らないのでは?と、つい親に突っ込みを入れたくなるのは私だけ? そう、サンタと楽しんでいるのはご両親。子供のいない世俗では、これを公式に“親バカ”と呼んでいるのをご存知でしょうか?(笑)。「子供がサンタの存在を理解できるのは4歳ぐらいからですヨー」と、毎回教えてあげたくなったりします(新米パパママ、しばしお待ちを)。

娘が3歳の時のクリスマス。もうサンタを理解できるだろうと、絵本やビデオを見せて説明。「サンタさんに会いたい?」と、モールに連行。「イェーイ! サンタさぁ~~ん!」とはしゃぐ娘に、娘と父の思い出モーメントだと胸が高鳴る父・D。開店早々に行ったものの、サンタ邸の前にはすでに行列。年に1度のぼったくりと言いたくなる料金を払い、順番を待つこと数十分。が、サンタが近くになるにつれ、娘のテンションが下がって行くような気がして、ちょっと嫌な予感……。

D父:「ほ~ら、サンタさんがいるよ~」
娘:「ネ、ダレあれぇ~?」
D父:「絵本で見たでしょ、サ・ン・タ・さ・んダヨ」
娘:「ノー、こわいのー。ルック・スケアリーダヨ」
D父:「……」

そして、順番間近になっても、半径3メートル圏内に近づこうとしない娘。D父の指を、切れそうなほどぎゅっと握りしめ、足の陰に隠れて絶対に1ミリたりとも動こうとしない……。

娘:「アイシャ、かえりたいのー。シャシン、いや。ノーダヨ!」
D父:「……(ーー;)」

目をウルウルさせ、“これ以上近づいたら発狂しますヨ”状態になったので、泣く泣くそこで撤収! あぁ~、そうだった。前に日本に帰省した時もそうだった。デパートの「アン○ンマン・ショー」に連れて行き、「わーいわーい、あんまんまん!」と最初は喜んでいたが、ショーが始まり、手足のひょろ長い2メートル近いアン○ンマンとその仲間達が舞台に飛び出て来たとたん、「ギャァ~~! あんまんまんチガーう~!!!」と大発狂したあの日のデジャブ!(そりゃ大人が見ても実物とあまりにも違うとは思ったが……)。

でもサンタは着ぐるみじゃないし、優しそうだし、それに“サンタさん”だし!という、安易な発想が甘かった。そうだね、冷静に見ると、単なる酒酔いした近所のスティーブおじさんにも見えるかもネ。自分も幼稚園で“白い綿”を顔に付けた園長先生をサンタだと言われ、周りのガキんちょは「わーいわーい、サンタさーん!」とはしゃいでいたが、自分は「ねーねー、あれ園長先生ダヨ」「せんせーい、あれは園長先生です!」と、間違っていることを報告するのに一生懸命だったのを思い出す……。この経験から、こっちのモールのサンタはかなり上出来だと思っているのはD父だけ!?(経験がチープ過ぎ)。

来るホリデー・シーズン、「今年こそは?」と、うちの子が喜んでサンタと記念撮影してくれるモーメントを密かに期待している、親バカD父なのでした。


「ナットクラッカー」
今年のもうひとつの目標は、娘を「くるみ割り人形(Nutcracker)」でバレエ鑑賞デビューさせること。ダンスやバレリーナが好きだと自称する娘が、発狂することなく鑑賞できるか乞うご期待。ちなみに、D父が数年前にナットクラッカー・デビューした時は、ほとんど爆睡鑑賞(汗)。
パシフィック・ノースウエスト・バレエ団(PNB)のウェブサイト:
www.pnb.org/season/nutcracker/
評価:★★★★☆
 

出来杉パパ:
某ゲーム会社に勤めるシアトル初(?)の自称・男性育児アドバイザー&アナリスト(顧客ゼロ)。3歳の娘・アイシャと1歳の息子・アキラの育児に日本人妻・ヨシコ(自称27歳)と奮闘中。出産育児に関する質問受付中。