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【私の転機】ガラス作家 くるみコンリーさん

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シアトルやポートランドで活躍する方々に人生の転機についてインタビュー

ポートランド在住のガラス作家、くるみコンリーさん。1つの作品の中で、さまざまな色や模様が重なり合うのが特徴です。この美しく繊細な作品が生まれるまでの転機をうかがいました。(2015年4月)

ガラス作家 くるみコンリーさん
くるみコンリー
1971年生まれ。京都府出身。94年女子美術大学工芸科ガラス専攻卒業、卒業制作賞受賞。同年、日本現代ガラス展入選。95年ポートランドへ移住。2004、06年Bullseye社国際コンペティションファイナリスト。

英語ウェブサイト
www.kurumiconley.com
日本語ブログ
http://kurumiconley.jugem.jp

小さな頃からものを作ることが大好きで、ものを作る仕事がしたかったんです。美大の工芸科で織物や陶芸など幅広く学び、ガラスを専攻しました。ガラスが魅力的なのは、色がきれいなことと、光が透けて通ること。私たちが生きている温度領域では個体ですが、熱くなると液体になり、冷えてまた個体に戻るところが面白い素材です。
 
アメリカ人の夫と出会ったのも美大時代。イベント関係のアルバイト先で出会いました。彼はサックス奏者で、日本に仕事で来ていたんです。このアルバイトもある意味転機ですね。卒業翌年に結婚し、ポートランドへ引っ越しました。

– 発想を変え手に入れた 新しい表現方法  
ポートランドに来てから試行錯誤がありました。日本にいた時と同様にガラスの塊を型に入れて焼いたり、吹きガラスで作品を作りたかったのですが、そのための素材や道具が手に入りにくかったんです。当時は頭が固かったから、あれがない、これが違う、やりにくいって勝手に思って苦しくなっていました。
 
でも、それを放り出し、今ここでできることをしようと視野を広げたら、どんどん可能性が広がり、作りやすくなったんです。ポートランドには、複数枚の板状のガラスを切り、窯で溶かして融合させる技法「フュージング」で使うガラスで有名な会社が2社あります。これなら手に入ると気が付きました。作品作りの転機です。地元産ガラスを使い、今までの技法を変え、ポートランド仕立てにしようと発想を変えました。
 
ですが、日本では板ガラスで作品を作ることはほとんど広まっていない時代。今までと違う素材だし、当時は焼き方などの情報や、教えてくれる方もいなかったので、いろいろなことが手探りでした。毎日毎日、何をしたらどんな風に仕上がるかコツコツ記録を取り続け、8年くらいかけて、板ガラスのことがバッチリ分かるようになりました。

表現の変化もありましたね。日本にいたときは何かに影響を受けるというより、与えられた課題をこなしたり、賞のために人と違うものを作ろうとしていました。こちらに来てからは、自然の風景の色合いなどから影響を受けた作品を作っています。ポートランドは木々に囲まれているので、普通に生活しているだけで自然の変化が伝わってくるんです。作業場の窓から見える景色、空の色の違い、葉っぱの色の変化、そういった自然の移ろいに意識が向くようになりました。

– 作品作りの 今までとこれから
幸い、挫折を感じたことは今まで一度もありません。夫は、どんな環境でもどんなに忙しくても、アートを続けることが大事と、精神的・物理的にサポートしてくれます。それに、ここはのびのび暮らせて、ものを作りたくなるような土地。あまり人がごみごみしておらず雑音が入りにくい。だから自分と人を比較することもなく、ストイックに制作ができるのです。
 
今、ポートランドは再開発で、古い家は解体されて新しい家が建ち、木は切り倒され、環境が大きく変わってきています。たぶん私の見る色合いも作品も環境の変化に合わせて変わっていくでしょう。でも、そこは自分のインスピレーションに任せようと思っています。

ガラス作家 くるみコンリーさん
▲ くるみさんの作品は、ポートランド日本庭園や Alberta St.のGuardino Galleryで購入できます
 
*情報は2015年4月現在のものです