シアトルやポートランドで活躍する方々に人生の転機についてインタビュー
■ ワシントン州在住のアーティストでデザイナーの太田翔伍さん。スターバックスのカップにイラストが採用され、一躍アメリカ中に名前が知れ渡った太田さんに、これまでの転機を伺いました。(2020年4月)
高校卒業後、アイダホ大学でアートを学ぶ。2005年、同大学卒業。Modern Dog Design Co.の就職を機にシアトルに引っ越す。2012年に独立。以後、ポスター、パッケージ、ロゴなど、幅広く活躍。これまでにStarbucksの期間限定カップのイラスト(2016年アメリカ、2018年日本)や店舗内の壁画など手がける。Web: www.tiremanstudio.com
もともと海外に出たい気持ちはさほど強くなかったのですが、大学受験の失敗を機に、母のすすめで留学をすることにしました。留学経験のある母は三人息子のうち一人くらいは海外に出てほしかったようで、一番体が丈夫な次男の僕にアメリカはどうかと白羽の矢が立ったわけです。
知り合いのいるアイダホ大学に入学し、経済を専攻しました。ところがある日「君はグラフィックデザインとかやっていそうな感じ」と友人に言われ「それってなんかカッコいいかも」と、アートの学部に転向し、グラフィックデザインを専攻することに。子どもの頃から手先が器用だったこともあってか、この分野に飛び込んでみると、とてもしっくりきました。
卒業前、就職に向けて数十社にレジュメを送ったものの全滅。大学受験で全滅して悔しかったことを思い出しました。アメリカで受験の二の舞になるまいと、最後の1社、シアトルにあるデザイン会社Modern Dog Design Co.のために、自己紹介のためのウェブサイトを一から作り直して挑んだところ、なんとインターンとして採用。ここが一番行きたい会社だったので、うれしかったです。その後、晴れて正社員になりました。
ここでの経験は全てが勉強になりました。初めて手がけた大きな仕事はシアトル水族館の建物の外に掲示する広告で、実物を見た時の喜びは今でも覚えています。水族館のお土産グッズ、シルクスクリーンで作る音楽系のポスター、パッケージ、紙媒体、ウェブ、この会社ではさまざまなものを手掛けました。
– 一枚のポスターが全米で使うスターバックスのカップに
約7年後の2012年、自分の事務所を立ち上げることにしました。1人でやっていくなんて、最初はもちろん怖かったです。独立2年目、スターバックスのポスター制作は転機になりました。本社で働いている友人が、社内の担当者に僕を紹介してくれて、ある店舗に飾るためのポスターを数枚作ったのです。
そして風向きが変わったのが16年。スターバックスが大統領選で割れる世論に対し、皆で仲良くというメッセージを込めたカップを限定で出し、その図柄に、僕の絵が採用されたのです。聞いた話によると、2年前に作ったポスターのうちの1枚を偶然見た幹部の人が、「カップの図柄にどうか?」と何十種もある候補の中に入れ、最終的に採用されたそうです。人生、本当に何が起こるか分かりません。この仕事のおかげで僕の名前や仕事を知ってくださる方は増え、このカップは僕の代表作の一つになりました。
– 広がる仕事と将来手掛けたいこと
仕事でいつも意識しているのは、作品を見た人を驚かせたいということ。「え?」って二度見するほどびっくりしてくれたらうれしいですね。ありきたりのものを作るのは面白くないですから。
6月にオープンするポートランドのスノーピークでは、店内壁画を手掛ける予定です。ポスター、商品や会社のブランディング、これまで幅広く、さまざまな作風で仕事をしてきましたが、まだやっていないのがスニーカーのデザイン。大手ブランドから声をかけていただくには、名前と作品をもっと多くの人に知ってもらわないといけないので、まだまだ頑張らないといけないですね。
▲ Sea-Tac空港内、コンコースBにあるStarbucksの壁画。太田翔伍さん:畑の豆がシアトルでコーヒーになるまでに関わる人々を、ひと筆で描いています。
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