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【私の転機】Voice Library in Japanese 会長 岡野伊予子さん

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シアトルやポートランドで活躍する方々に人生の転機についてインタビュー

高齢者や目の悪い方、外へ出ることが難しい人のために、日本語の本の訪問朗読「声の出前」を行うVoice Library in Japanese。昨年、結成から20周年を迎え、まだまだ訪問先を募集中です。そんな同会で会長を務める岡野さんに転機を伺いました。(2025年4月)

Voice Library in Japanese 会長 岡野伊予子さん
岡野伊予子(おかの・いよこ)

東京都出身。大学卒業後に結婚し、2女をもうける。1987年に渡米。90年よりシアトルの法律事務所Perkins Coieで通訳・翻訳を行う。1992年より、エドモンズ姉妹都市委員会委員。2004年、Voice Library in Japaneseの立ち上げに携わる。2020年より現職。好きな食べ物はお寿司(特にウニ)。
https://www.facebook.com/VoiceLibraryInJapanese/

ー渡米の経緯を教えてください。
1987年、夫の仕事の都合で、家族でエドモンズに来ました。主婦として子育てをしながら、コミュニティーカレッジで英語を勉強。すると、移住から3年ほど経ったある日、数軒先に住み、いろいろと良くしてくれた親日家の弁護士の方が家に来て「うちの会社に日本語翻訳者募集の張り紙があったから、伊予子がやればいい」と言ったのです。「仕事もしたことないし、英語もできないし無理」と断ったのですが「無理かどうかは会社が決めること」と言われ、シンプルな履歴書を出すと通ってしまいました。次女が大きくなったこともあり、その法律事務所で学びながら翻訳や事務の仕事を始め、先日勤続34年を迎えてリタイアしました。

– エドモンズと愛知県碧南市の姉妹都市委員も務めています。こちらの経緯は?
あるとき、第二次世界大戦中の日本兵の日記を所有する保護者がいると娘の学校から連絡が来たんです。その保護者の亡父が戦時中に手に入れた品で、遺族に返したいとのこと。解読を手伝うと、その人から「碧南市の一行がエドモンズに来るから、日記の件で会う約束をした。通訳してほしい」と頼まれたんです。碧南市のミーティングに参加すると、翌日のワイナリー見学に誘われました。ボランティアで通訳をしていた学生さんがワイナリーで「fermentation」の訳で詰まった時、とっさに手伝ったことを機に、エドモンズの姉妹都市委員の人から「委員にならないか」と誘われました。引き受けたのは、右も左も言葉も分からなかった私が、エドモンズに住んできて、日本人であることを理由に嫌な思いをしたことがなかったからです。地域の皆にしてもらってきたことを、今度は私が還元できるのでは?と思いました。以来、エドモンズ姉妹都市委員会委員を務めて30年以上になります。通訳以外に、両市の交換留学プログラムの運営や、エドモンズ市内での日本紹介イベント、日本への派遣団の同行もし、数年前には碧南市から感謝状をいただきました。ちなみに、後年、日本のテレビ局が日記の持ち主の遺族を見つけてくださったのですが、ご遺族には思うところがあったのか、受け取りを断られたそうです。

– Voice Library in Japaneseとの出会いは?
中学に優しい国語の先生がいて、その先生が教科書を朗読するとまるで歌うようにきれいだったので、朗読がずっと好きだったんです。高校でもユニークな国語の先生に教わり、古文や漢文の響きが好きで、私も国語の先生になりたいと、大学は国文科に進みました。結局、大学卒業後すぐに結婚、地方への引っ越し、出産や子育てがあり、教師になることはなかったのですが、子どもに本を読んであげることは好きでした。そこで、シアトルに日本語の朗読グループがあると聞き、参加することにしたのです。当時、グループの中心になっていた吉田直さんから「在米歴が長くて英語に困らなかった人でも、年を取ったり、病気になったりすると残るのは母国語。でも、家族に日本語が通じない人もいる。そういう人に寄り添える朗読のサービスを始めたい」という話を聞きました。アメリカに来たことが第一の大きな転機としたら、この話を聞いたことが二つ目の転機だったかもしれません。私が参加し始めたのは、吉田さんの話に賛同する人たちが設立に向けて動き出す頃でした。自分の好きなことがどなたかの役に立つかもしれない。真のボランティアとはそういうことだと思い、私もVoice Library in Japaneseの設立に携わりました。

– Voice Library in Japaneseの活動はどのようなものですか?
2004年にNPO法人を立ち上げて以来、日本人のいるナーシングホームや病院などに出向いて朗読「声の出前」をしています。日系マナーへは活動初期から今も定期的に行っています。対象は高齢者が多いですが、病気で学校に行けないお子さんに読んだことも。異国で年を重ねる中で、日本語で雑談したり、朗読を聞いたり、それで少しでも心が軽くなればと思っています。オンラインでの朗読もしますが、訪問してライブで朗読するのが楽しいですね。人が集まると会話が生まれますから。

– これまで印象に残ったことは?
施設にいる高齢者と会う機会が多いので、お会いしていた方が亡くなることもあります。病気で亡くなった若い方もいました。そんなこともあるんですが、それでも朗読に行くとエネルギーをもらえるんです。急に昔を思い出して歌い出す方がいたり、戦時中の話をしたり、そういう皆さんの姿から教えられることや学ぶことは本当に多くあります。聞き手の良い刺激になったらうれしいですね。読む本は毎回いろいろですが、必ず季節を感じられる本を入れるようにしています。「ひな祭りの季節ですね」「外は桜が咲いているんですよ」と、これからも、なかなか外に出られない人のために、朗読で外の風を運び続けたいと思っています。

Voice Library in Japanese 会長 岡野伊予子さん
▲2024年、ベルビューカレッジの秋祭りに出展。Voice Library in Japaneseでは、主催者と共同でプラネタリウムでの朗読を行いました。
 
*情報は2025年4月現在のものです

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