シアトルやポートランドで活躍する方々に人生の転機についてインタビュー
■ ポートランド州立大学の准教授で学部長を務める西芝さん。日本に、ポートランドの自治システムを紹介するプログラムにも中心人物として携わっています。これまでの転機を伺いました。(2018年5月)
滋賀県出身。大阪大学卒業後、関西経済連合国際部に勤務。その後、日英会議通訳者に転身。91年に渡米。98年、PSUコミュニケーション学修士号、03年、行政・公共管理学で博士号を取得。現在はパブリック・サービス研究・実践センター副所長、JaLoGoMaプログラムディレクターとして、地方自治、市民参加、多文化共生などのプログラムに携わる。
小学生時代をマレーシアで過ごしたこともあり、将来は、英語を使って、国際交流の仕事をしたいと思っていました。大学卒業後は関西経済連合会国際部を経て、通訳になったんです。ジミー・カーター元大統領、ビル・ゲイツ氏、フィル・ナイト氏の通訳など、大きな仕事がくることもありました。
– 通訳から行政学の専門家へ
渡米のきっかけは、夫の転勤です。いつか通訳の役に立つだろうと、ポートランド州立大学(以下、PSU)のコミュニケーション学の修士過程に入ったのですが、いつしか学問そのものが面白くなってきました。
修了後、副領域に「コミュニケーション」とあったので、PSUの行政学部博士課程に進学。入ってみたものの、アメリカの行政の仕組みも何もかも知らなかったので、1年目は大変でした。
でも、やってみたら面白いんです。抽象論が多いコミュニケーション学と違い、行政学は、どこにどんな悩みを持つ人がいると具体的な現場があり、それをどのように解決するかというプロセスが目に見えます。行政学は、組織内でダイバーシティーをどう作るか、文化的にも多様な人々のニーズにどう対応すべきかなど、今まで学んだ異文化コミュニケーションが生きる分野なのだと発見しました。
博士論文を書いていた年、私の所属する研究センターに、東京財団から日本の自治体職員向けのトレーニングをしてくれないか?と打診がきたんです。当時のセンター長が「雅美がやればいい」と話をつけ、アシスタント・プロフェッサーになりました。博士論文の最終試験の翌日には東京財団とPSUが提携を交わすという、すごいタイミングの転機です。
– 行政学が、真の異文化コミュニケーションに
自治体職員向けのプログラムを白紙から立ち上げ、参加者が抱える課題に対してポートランドの事例を紹介したり、プロジェクトマネジメントの手法を教えたり、地元ビジネスが街の活性化にどのように関わったか関係者に話をしてもらったりするなど、少しずつ形を変えながら続けてきました。16年を最後に同財団がプログラムを止めることになり、昨年からは我々が主催で「ポートランドの住民参加」をテーマに日本の自治体職員以外も参加できるプログラムを行っています。
日本から来る人は、日本の視点で物事を見がちです。でも、アメリカで見たものを「これは日本でいう〇〇」と単に置き換えるのは少し違います。そこに至るプロセスを見てほしいのですが、上手く伝えるのは難しく、行政と言いつつ、まさに異文化コミュニケーションの世界です。日本の人にアメリカ流のプロセスを理解してもらえたときや、話をするアメリカ人側が日本の参加者から学ぶことがあると、本当の意味で異文化交流の仕掛け人になったという気持ちになります。国際交流って、こういうことではないかと思うんです。
一方、PSUでは、昨年から学生を東北に連れて行き、震災から何を学ぶか?という授業をしています。日本の人もアメリカの学生も、実際に現場を見て、体で感じることって大事です。これからも、いろんな視点を持った人たちが学べるプログラムをうまく作り上げてみたいですね。
▲ 学部やセンターの運営、授業、地元行政と共に活動する自分自身のプロジェクト、日本向けのプログラムなど、日々、忙しい西芝さん。
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