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【私の転機】書道アーティスト 恵里ルーマンさん

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シアトルやポートランドで活躍する方々に人生の転機についてインタビュー

ポートランドを拠点に書道アーティストや書道の先生として活動する恵里ルーマンさん。ただ手本を写すだけでない、楽しんで癒される「瞑想書道」を提唱する恵里さんに転機を伺いました。(2016年6月)

書道アーティスト 恵里ルーマンさん
恵里ルーマン(えり・ルーマン)
鹿児島県出身。短大卒業後、渡米。コロラド州立大学コロラド・スプリングス校卒業。その後、日本に戻り、結婚後、2007年よりポートランド在住。同年より書道教室、アート制作、瞑想書道クラスやアートショーなどで活動を始める。16年オンラインショップVIDAで衣類とのコラボ作品を販売開始。VIDA

書道を始めたのは7歳の頃です。高校では書道部、短大在学中は親戚の書道の先生の助手を務めましたが、どれも誰かに誘われて始めたもので、書道は自分の意志と言うより、周りの環境にあったんです。短大卒業後は留学の夢が諦められず、就職の内定を断って渡米しました。
 
コロラドにいた頃、大工をしていた友人の父から不要な木切れをもらい、それに書を書いたのが書道アートの始まりです。それから石に書いたり、書道と油彩画やパステル画を組み合わせた作品も作るようになっていきました。大学のアートの先生からも素晴らしい発想と期待されていたのですが…。ある時から、全くアイデアが出なくなったんです。自分の中に超えられない柵があるようでした。
 
当時は人生においても葛藤しており、あらゆる分野の本を読み漁りました。するとある日「無を悟れし時、時と空間を超えん」という言葉がポーンと自分の中に浮かんできたんです。これを転機に、執着が無くなると真に自由になれる、と感じられるようになってきました。
 
とはいえ、それで急に自分の満足できるアートや書道ができるわけではありません。その後、仕事をしたり、日本へ戻ったり、日々の生活に手いっぱいで、書道から10年ほど離れてしまいます。でも心にずっと書道はあって、どこにいても道具は自分のそばに置いていました。

– 書道の新たな魅力を ポートランドで発見  
結婚を経て07年にポートランドへ移住。その年、日本庭園のイベントで書道をする人を探していると知り、私が書くことになりました。これも転機です。デモンストレーションをすると、お客さんからクラスを開講してほしいとのリクエストを多くいただき、思いがけず書道を再開することになりました。
 
書道を教えるうち、だんだんと自分の心の書道が何か分かってきたんです。ある時、筆を走らせていると気持ち良く無になれ、筆との一体感を感じました。それで、書道は瞑想だと気付いたんです。私の中で書道とは、字をきれいに書くだけではなく、楽しくリラックスして癒されるもの。それが分かり、書道が心から好きになりました。大学時代にアイデアが浮かばなかったのは、リラックスできず、頭が凝り固まっていたからです。そんなことではアートは作れません。今やっと自分の表現ができるようになってきました。

– 恵里ルーマン流の 書道とは?
今年に入り、アートを題材にした服を制作販売するオンラインショップからお声がけいただき、私の作品と衣類のコラボレーションが始まりました。あとは子どものクラスと瞑想書道のワークショップを中心に活動しています。
 
私のクラスでは、ただ手本を写すことはさせません。伝えたいのは書道の楽しさと、瞑想的な無になる心地よさ。気持ち良ければ、自然と字も良くなります。書道は紙に書く前の筆が空中にある状態から始まり、筆が紙から離れて空中で終わる。このプロセスを大切にし、のびのび書けばいいと伝えています。
 
「私は字が下手」と言わず、多くの方に書道で楽しく癒されてほしいですね。書道が生徒たちの癒しになっていると思うと幸せで、それがまた私の癒しになっています。

書道アーティスト 恵里ルーマンさん
▲ 静かに座ることができれば何歳からでも受講可。書で人と心がつながったときがうれしいと恵里さん
 
*情報は2016年6月現在のものです