シアトルやポートランドで活躍する方々に人生の転機についてインタビュー
■ 2018年3月、在ポートランド領事事務所に寺岡総領事が着任しました。ヨーロッパを中心に、さまざまな国や部門で活躍されてきた総領事にこれまでの転機をうかがいました。(2018年6月)
岡山県出身。1979年、大阪市立大学卒業後、外務省に入省。在ミュンヘン総領事館(1982〜85年、2002〜05年)、在ガーナ大使館(90〜93年)、外務省国連局(97〜99年)、在ドイツ大使館(05〜09)、などの仕事を歴任。外務省欧州局(09〜12年)、在スイス大使館(12〜15年)、在オーストリア大使館(15〜18年)を経て、2018年4月、現職に着任。
大学時代に西洋史を専攻し、大学3年の夏にドイツで2カ月ほどホームステイをしました。これが転機となり、海外と関わる仕事に就きたいと思うようになったんです。外務省なら、さまざまな国に関われる上、仕事も多岐にわたると思い、入省しました。
– 正しい日本の情報を伝えることの大切さ
今までのキャリアではドイツ語圏の国に長く駐在し、仕事内容ではプレス関係の仕事に携わることも多かったですね。ヨーロッパでG7やG20があったり、総理大臣や外務大臣がドイツを訪問したりする際に、日本のプレスの取材を手伝ったり、逆に外国のプレスに、会議における日本の発言や対応を正しく情報発信するというような仕事もしました。
日本から要人が来ると、現地の新聞がいろいろ書きますが、記事には正確なものもあれば、間違ったものあります。また、外交とは、政府同士の交渉だけでは進まず、特に民主主義の国同士が付き合うには世論が大事です。仕事をする中で、正しく報道してもらうためには、日頃から私たちが正しい情報発信をして、海外の皆さんに日本の理解を深めてもらう必要があると思うようになりました。
また、印象に残っている仕事に、東日本大震災に関するものがあります。震災直後は、スイスとドイツのレスキューチームに付き、日本の消防や警察との間に入っての連絡係や出入国の手続き支援などもしました。さらにその後、原発の事故調査委員会の事務局に出向となり、政府や東電の対応の評価をしたり、調査のためにアメリカなど5カ国の原発の専門家に来ていただく手配をしたりしたのです。
政府として、きちんと事故対応しなければならないのはもちろん、世界中から大きく注目されていた事案で、非常に緊張感のある仕事でした。しかるべき調査をして海外に正しい情報を出すことが、今後の日本だけでなく各国の原発への教訓となるとの思いで取り組みました。実際、ドイツのように福島を機に、原発から撤退する決定をした国もあったわけですし、国際的に影響力が高く、やりがいのある仕事に従事させていただいたと思っています。
– ポートランドと日本の親密な関係を日々実感
そして、それからスイスやオーストリアでの勤務を経て、今年、ポートランドに着任しました。実際に暮らしてみると、ヨーロッパと比べてアメリカ西海岸と日本の関係の親密さは、格段に違うと実感しています。例えば、この地域のほとんどの大学には日本語の学科やコースがあり、このような現象はヨーロッパの大学ではあまり見られない光景です。在留邦人の数も企業の数も、観光客も増え、これからますます在留邦人や日本企業を支援していく仕事が増えるでしょう。
また、現在、オレゴン州と富山県は姉妹州・県関係に、さらにオレゴン州と日本との間には23の姉妹都市関係があります。コミュニティー同士の関係がより深まる手伝いもしていきたいですね。特に来年はポートランドと札幌が姉妹都市関係60周年を迎え、さまざまなイベントがあります。そしてさらに、オレゴン州の人に日本への理解を深めてもらうため、地元メディアへ働きかけていきたいとも思っています。
▲ 着任早々のイベント、観桜会の様子。一つ一つの仕事が、この地の人々の日本への理解につながっていきます。
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