シアトルやポートランドで活躍する方々に人生の転機についてインタビュー
■ コンピューターサイエンスの博士号を持ち、ヒューレットパッカードの第一線で働いてきた藤原さんが選んだ第二の人生は、芸能マネージャーです。これまでの転機をうかがいました。(2016年7月)
大阪市出身、西宮市育ち。Texas A&M UniversityでComputer Scienceの博士号を取得後、Hewlett Packardに就職。プリンタやスーパーコンピューターの研究開発部門のマネージャーなどに従事。2014年末に同社を退社。15年3月から邦楽奏者、松浪千壽のマネージャーを開始。同年7月にJapanese Coolを設立。
大学生の時、英会話教室でのアルバイトを機にアメリカを横断しました。そこで見たアメリカの大学生たちの思い切り遊び学ぶ生活に憧れ、日本の大学を中退して渡米。その後、コンピューターサイエンスの博士号を取り、ポートランドのヒューレットパッカード(HP)に就職。プリンタやスーパーコンピューターの研究開発部門で米国内各所や海外部署のマネージメントをしていました。
外国人だから、女性だからと言われないよう、中身で勝負してきたつもりです。できることはやったという自負もあり、2014年に早期退職制度を利用して21年勤めたHPを退社しました。
– 幼なじみとの再会が 思わぬ転職に
退社直前、友人を介して幼なじみで邦楽奏者の松浪千壽と数十年ぶりに再会できたことは転機です。当時、彼女にとっても転機が訪れていて、NHK朝の連続テレビ小説で波瑠さんや玉木宏さん、宮﨑あおいさんや野々すみ花さんなどに琴や三味線の指導をする話や、日本政府から日中韓の大臣が集まるパーティーでの演奏依頼など、単なる公演とは違うタイプの仕事が入るようになってきていたのです。HPを辞めるなら仕事を手伝ってほしいと松浪に請われ、マネージャー業に転ずることにしました。主に契約や交渉が担当で、今は日米を行き来しています。
芸能界には縁もゆかりもありませんから初めは薄氷を踏む思い。でも、彼女は生来の芸術家で、私の長所は論理的思考なので、お互いを補い合い、楽しく働いています。少しずつできることが増え、新しい世界でやっていこうと思うようになりました。
朝ドラでは松浪が指導した俳優さんが演奏し、音は松浪が演奏して収録したものを使います。ある日、収録スタッフたちが「松浪さんの音で鳥肌が立った」と言うのです。もちろん俳優さんたちは熱心に練習されて上手なのですが、松浪の演奏は「これが同じ楽器の同じ曲?」と言いたくなるほど違うのです。私自身も感動し、プロデューサー方が「こういう音を海外の人にも聞いてもらいたいね」と言われるのを耳にし、アメリカでのコンサートを考えるようになりました。
– 日本の素晴らしさを 世界へ発信
また、松浪を通して知った日本の芸能、ハイテク産業の開発者として実感していた日本製品の質の高さや日本人の品質に対するこだわり、一消費者として感じる数時間で終わる人間ドックなどの日本特有の合理的なシステム、日本にはまだ世界から注目されていない素晴らしいものがたくさんあることに気付き、これらをまとめて海外に紹介したいと思うようになっていきました。14年7月にはJapanese Coolという会社を設立。先日、ウェブサイトを立ち上げました。
そしてJapanese Coolの第一弾イベントとして8月にポートランドで松浪のコンサートを開催します。自分が主役の海外公演は初めての松浪と私、二人三脚の運営ですが、幸い多くの方からご支援頂くことができ、順調に準備を進めています。他にもイベントを企画中で、収益が余れば日米両国の災害基金などに寄付を考えています。これが成功したら、次はぜひシアトルでもコンサートを開催したいですね。
▲ ポートランド公演の準備中、日本庭園にて2人で記念撮影(左:藤原さん、右:松浪さん)
コメントを書く