シアトルやポートランドで活躍する方々に人生の転機についてインタビュー
■ オレゴン州で家庭法の弁護士として活躍する、田辺かおりさん。日本人の両親の下、南米コロンビアで育ち、アメリカで法律を学んだというかおりさんに、これまでの転機を伺いました。(2020年7月)
東京都出身。コロンビア育ち。University of Portlandを卒業後、The Lewis and Clark Law Schoolへ。修了後はSt. Andrew Legal Clinicで家族法を担当する。2011年、Stephens & Margolin LLPに入社し、離婚や親権など家族法分野を中心に活躍。現在に至る。プライベートでは2児の母。(Web: stephensmargolin.com)
東京で生まれ、2歳の時に父の仕事の都合で、南米コロンビアに移住しました。お喋りの好きな頑固な子どもで、周りに日本人はおらず、よくいじめられて、そのたびに言い返していたんです。12歳の時に友達から「かおりは口げんかが強いから弁護士になればいい」と言われ、弁護士を目指すようになりました。
高校卒業後は、アメリカの大学に進学。4歳で始めたテニスは、ジュニアになるとコロンビア国内で2~5位くらいの常連で、アメリカの大学から奨学金を得られたのです。最初はルイジアナに行き、その後、カトリックの私立大、ポートランド大学に編入しました。それまで1度もポートランドに行ったことがなかったのですが、国民の98%がカトリック教徒のコロンビアにある、小規模な学校で育ってきた私には、ここが合っていそうだと思ったのです。それに、大学のウェブサイトがカッコよかったですし(笑)。
卒業後は雨のない所に行こうとフロリダのロースクールに進学。でも、すぐに緑豊かで良いレストランがたくさんあるポートランドが恋しくなり、ポートランドのロー・スクールに編入しました。以来、ポートランドにいます。
– 企業法から家庭法に方向転換
今は家庭法を中心とした弁護士ですが、初めは主に企業法を勉強しました。本格的に法律の勉強を始める前、学校のアドバイザーから「犯罪法と家庭法の仕事はストレスが多く、とても大変だから止めたほうがいい」と言われ、素直に従って、企業法を選んだのです。
ところが、とある会社で社内弁護士のインターンシップをしてみると「この仕事、つまらないな」と違和感を感じて…。さらに、法廷のジャッジのアシスタントの面接では「どうして、君はずっとデスクに向かってリサーチして書くような仕事がしたいの?」と言われたのです。私は読んでいないのですが、どうやら、友人が書いてくれたこの面接の推薦文には「カオリは社交的で人と話すことが好き」とあったようなのです。それを転機に、前から気になっていた家庭法の分野でボランティアを始めてみると、こちらの方が合っていると感じ、家庭法に方向転換しました。困っている人を助けられるのがうれしいんです。
例えば、ある時、ずっと外に働きに出ず、家で夫の両親の面倒を見続けてきた女性の離婚の弁護をしました。いろいろと不利な状況が重なり、彼女にはお金も住むところもありません。でも、最終的に彼女は死ぬまで住める家を手に入れることができました。こんな風に、裁判が終わった時に、クライアントがスタート地点よりも少し良い場所に立てるようになる、そんなところに家庭法の弁護士のやりがいを感じます。弁護士は人の人生を良い方向に変えられる仕事です。
– 誰かの人生をより良くできることがやりがい
今の夢は、自分の子どもたちに尊敬されるような親であり、弁護士でいることです。
クライアントは、仲のいい友達にも話せないようなことを私に話してくれます。信用されていないと、そんなことはできません。そういう人間としての付き合いができるのがこの仕事の醍醐味です。いつもクライアントの立場に立ち、信頼される弁護士でありたいと思っています。
▲ 離婚や親権などの案件が多いものの、家庭の状況によって企業法や犯罪法などさまざまな法律が複雑にからみます。
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