シアトルやポートランドで活躍する方々に人生の転機についてインタビュー
■ 今にも動き出しそうなほどリアルな犬や猫のフィギュアをニードルフェルトで作る寿奈美さん。世界中に顧客がいる寿奈美さんに、愛犬がもたらしてくれた転機を伺いました。(2021年7月)
すなみ・ビョーンソン◎広島県出身。シカゴの大学院でメンタルヘルス・エデュケーションの学位を取得し、1998年からワシントン郡のカウンセラーとして勤務。2006年、Side by Side Adult Care Homesを設立。11年からニードルフェルトでフィギュアを作り始め、現在はEtsyなどで販売中。好きな食べ物はお好み焼き。(www.etsy.com/shop/minipupcreations)。
日本では商社のOLでしたが、義父と同居するため、シカゴに引っ越しました。その道中、精神疾患のある夫の友人に会い、当時の日本なら閉鎖病棟にいるであろう人が、普通に生活していたことから、アメリカのメンタルヘルスやセラピーに興味を持ちました。そこで、カウンセリング・エデュケーションやメンタルヘルスを大学院で学ぶことにしたのです。
義父が亡くなり、学位も取れたので、オレゴンに引っ越し、ワシントン郡でメンタルヘルス・エージェンシーのカウンセラーとして就職。仕事を通じ、Adult Care Homeと呼ばれるサポートの必要な人が5人以下で生活をする施設の存在を知りました。高齢者や障害者が自宅に近い環境で暮らしているのを見て、素晴らしい仕組みだと感心。2006年にAdult Care Homeを開業しました。最初は高齢者向けを想定していましたが、それまでの私の経歴もあって、現在は精神疾患のある人たちが自立を目指して暮らす家となっています。
– 転機をくれたハスキーの兄妹
そんな私を公私共に支えてくれたのが犬と猫です。特に01年に夫が友人から譲り受けたシベリアンハスキーの兄妹2匹はかけがえのない存在で、当時は職場にも、よく連れて行き、独立時も内心は「犬と一緒の時間が増える」と思っていたほどです(笑)。
しかし、13年に2匹のうち、兄が他界。かなり落ち込みました。悲しみの中、思い出を形に残すため、羊毛を針で刺して固めて好きな形を作るニードルフェルトで、彼の毛を混ぜて彼のフィギュアを作ることを思いついたんです。後日、そのフィギュアを、ペットロスのサポートグループに持っていきました。するとグループの参加者から「私の子も作って」と頼まれ、それで作るようになったんです。
最初の頃は勉強も兼ねていたので、代金の代わりに寄付金を預かり、お客様の選んだ動物関連団体に、フィギュアの写真と共に寄付金を送っていました。すると、徐々に作品が口コミで広がり、16年にはオンラインで受注を開始。世界中から注文がくるようになりました。今も売り上げの10%は動物関係の団体に寄付しています。愛犬の死が私の転機になったのです。
– 送り出した300体、一匹一匹に愛情を込めて
これまで300体以上を送り出しました。私が始めた頃、ニードルフェルトはマニュアルがあまりなかった上、動物は毛並みも顔つきもそれぞれ違うので、今でも毎回が試行錯誤です。私のことを「芸術家」「すごい才能」と言う方もいますが、私にはそういう自覚はなく、頂いた愛犬や愛猫の写真をフェルトで再現しているだけです。でも、お客様から一匹一匹の個性を聞き、愛情を込めて、その子らしさを引き出すようにしているので、その思いは飼い主様たちに伝わっていると思います。
また、お客様の多くがペットを亡くされた方であることや自分の経験から、ペットロスに関心を持ち、カウンセラーの経験もあるので、19年から動物病院のペットロス・サポートグループでボランティアを始めました。アートセラピーとして、ニードルフェルトでペットの顔の作り方を教えていたのですが、コロナで休止になっています。また近いうちに再開できたらと思っているところです。
▲ 「『この子の好きな遊びは?』『好きな食べ物は?』と、飼い主たちと心を通わせる時間が楽しく、今後も長く活動を続けていきたい」と寿奈美さん。
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