シアトルの生活情報&おすすめ観光情報

【私の転機】自然療法医師 丹治康一さん

最新インタビュー & バックナンバーリスト »

シアトルやポートランドで活躍する方々に人生の転機についてインタビュー

ベルビューで自閉症やゲーム依存症の治療に取り組む丹治先生。なんと、医師になる前はボクサーでした。家族の関係作りをサポートしたいと話す丹治先生に、これまでの転機を伺いました。(2022年7月)

自然療法医師 丹治康一さん
丹治康一(たんじ・こういち)

静岡県静岡市出身。2004年にハワイに渡り、プロボクサーを目指す。2016年にワシントン州に移住し、カウンセリング心理学の修士号と自然療法の博士号を取得。ゲーム依存症更生施設を経て、2021年にSphosh Healthを開業。現在はホームレス支援団体Integrative Care Outreachの役員も務める。好きな食べ物はメキシカンフード。https://www.drtanji.com

中学生でボクシングを始めたのですが、生まれつき右手の指が無いことを理由に、日本の協会から試合出場を認められませんでした。それならアメリカでプロを目指そうとハワイに行ったんです。やがてハワイのボクシング協会から、リングドクターの許可があれば試合に出て良いと言われ、診断をパスして試合に出られるようになりました。このリングドクターとの出会いが転機です。彼は僕のことをいつも支えてくれました。そして、ハワイの大学でスポーツサイエンスと栄養学を学んだ僕に、常々「勉強ができるならボクサーより医者になれ」と言ってきたんです。

– ハワイの少年が導いてくれた医師への道
プロを目指す一方、子どものボクシング指導もしてきました。ハワイでは非行少年の更生プログラムの一環にボクシングがあります。ここに来る少年は皆、先生や大人の言うことなんて聞きません。でも、強い人に憧れるのか、僕を含め、格闘家はリスペクトしてくれて「強くなるにはどうしたらいい?」なんて聞いてくるのです。トレーニングやカウンセリングを通して、彼らの心と体の成長を見るのは面白く、彼らの力になれることがうれしかったです。

プロ入りの切符を手にしたのが30歳。でも、あと数年をプロとして続けるより、ドクターの言う通り医者になり、子どもの治療をする方が魅力的に思えてきました。指導した子たちは家庭環境が悪く、心に問題を抱え、体に不調があることが圧倒的に多く、偏食も多かったんです。心と体と食の関係に興味を持ち、自然療法医の資格を取るため、2016年にワシントン州に来ました。卒業後はゲーム依存症の治療施設に就職。昨年、独立しました。

– 発達障害や依存症で悩む家庭を支えたい
また、ワシントン州に来る前から、自閉症の機能性医学(疾患の原因に着目し、予防と根本治療を目指す医療)の関係団体に属し、全米を飛び回るようになりました。ハワイで指導した少年たちは自閉症を含む発達障害の子も多く、発達障害を治せば彼らの力を伸ばせると気付いたからです。バイオメド治療(自閉症の医学的治療)という治療の視点では、自閉症は治療可能な病気です。例えば、自閉症の人は慢性疾患を抱えていることが多く、症状を和らげるために不自然な姿勢をとったり、ジャンプしたりすることがあります。症状が改善すれば、行動にも改善が見られるんです。つまり、放っておいても良くならないし、彼らの本来持っている可能性を伸ばせません。発達障害は病気でないと言う人もいますが、保護者が知らずと抱えている体の症状があるなら、気付き、正してあげるべきです。

これらはアメリカでは知られた治療ですが、日本ではまだなので、日本の家庭向けにオンラインカウンセリングも始めました。自閉症児が落ち着いて座れるようになったなどの報告を受けています。

これまでの経験から、家族が大事だと痛感しています。家族は生活の基本だから、そこに安心感があれば外で頑張れるんです。家族に発達障害や依存症の人がいると、意思疎通が難しくけんかになったり距離ができたりします。そこに医学的な要因があるなら取り除き、家族の良い関係作りをサポートしていけたらいいなと思っています。

自然療法医師 丹治康一さん
▲ベルビューのクリニックでの様子。丹治先生は、2022年7月27日(水)にバイオメド治療のウェブセミナーを開催予定です。
 
*情報は2022年7月現在のものです

アメリカ生活に関する他のコラム » 
シアトル関連の最新記事などについて »