シアトルやポートランドで活躍する方々に人生の転機についてインタビュー
■ シアトルのインテリア・デザイナー、キッシス木綿子さん。主に歯科医院の内装を手がけるという木綿子さんに、インテリア・デザインの仕事や、これまでの転機を伺いました。(2023年7月)
東京都出身。慶應大学法学部政治学科卒業後、ベルビューカレッジに入学。インテリア・デザインを専攻し、2002年に卒業。その後、いくつかの会社を経て、歯科医院専門のインテリア・デザイン会社に9年間勤務。2013年に起業し、Modernista Interior Designを設立。好きな食べ物はボンゴレビアンコ。http://www.studio-modernista.com/
日本の大学では法学部を出ています。高校時代、深く考えずに学部を選んでしまい、大学入学後に法学に興味がないと気付きました。もし、このまま同級生と同じように就活をしたら、大学選びと同じように、なんとなく就職して、なんとなく人生が進んでしまいそうな気がして。これではダメだと、大学卒業後に留学をすることにしました。
ベルビューカレッジで英語のクラスを修了後、インテリア・デザインを専攻することに。祖父が橋を作る仕事をしていて、建築方面になんとなく興味があったからです。授業は最初から面白く「これだ!」と思いました。これまで周囲の空気を察し、期待から外れないようにしてきた私に夢中になれるものが見付かったことがうれしく、また、学ぶ楽しさを知りました。インテリア・デザインとの出会いは私の転機です。
– クラスメイトがくれた新しいチャンス
アメリカで就職をしたかったのですが、外国人の就職活動は難しい上、当時はアメリカ同時多発テロ事件後で建築業界は景気が悪く、帰国も考えました。ところが卒業直前に永住権の抽選に当選。慌てず就活を続けられました。
しかし、やっと就職できたのはリクライニングチェアの販売店。しかも完全歩合制。ここで、自らお客さんに英語で話し掛け、椅子を買ってもらうことはとても良い勉強になりました。その後、いくつか職場を変えるうち、ベルビューカレッジ時代のクラスメイトが「私の会社で働かない?」と声をかけてくれたんです。彼女はもともと歯科医院のマネージャーで、キャリアチェンジのためにベルビューカレッジでインテリア・デザインを学び、歯科医院専門のインテリアデザイン会社を起こしていました。
アメリカのインテリア・デザイナーの仕事は日本よりも幅広く、例えば現存のものを壊し、新しい商業用のレイアウトを決めるところから、配管配電図、仕上げ材選びまで内装工事に必要な図面をほぼ全て手掛けます。ここで約9年、経験を積みました。在職中に仕事で知り合った歯科医師と結婚し、長女の出産を機に退職。それまで多忙だった生活を、一度リセットしたかったんです。
– 自宅の内装、2人体勢、仕事は次の段階へ
ところが、長女が4カ月の時、以前のお客さんから仕事の依頼が舞い込み、夫の後押しもあって引き受けることに。こうして起業し、その後も少しずつ仕事が増えていきました。また、自宅を建てる際は内装だけでなく、建ぺい率、外観、灌漑システムの計算までも手掛け、工事許可の取得に苦労しましたが、商業施設と住宅デザインの違いも学べ、仕事の幅が広がったように思います。
ただ、起業以来、ずっと一人で仕事をしてきたので、マンネリ化というか、自分の得意なやり方や固定観念に流され、新しいアイデアが湧きにくいと思うことも出てきました。そんな中、昨年より、元同僚が仕事のパートナーに加わりました。2人体勢は心強く、彼女はたくさんの刺激やアイデアを私にくれます。
手掛けた歯科医院に友人が行き、感想が聞けるとうれしいです。今後は歯科医院にとどまらず、住宅の内装などさまざまな仕事にチャレンジしたいと思います。自分のこれからの仕事が楽しみです。
▲木綿子さんが手がけた歯科医院。「歯科医院は、一般、小児、矯正、口腔外科など、それぞれニーズが違い、そこがこの仕事の面白いところ」と木綿子さん。