シアトルやポートランドで活躍する方々に人生の転機についてインタビュー
■ エベレットのBoeingに駐在を置いてから今年で50年を迎えたANA。この節目の年に、Boeingで技術駐在として働くANAの久野さんに、これまでの転機をうかがいました。(2018年8月)
福岡県出身。1987年、飛行機の整備士としてANA入社。93年、Boeing747型機の一等航空整備士の国家試験に合格。その後は主に飛行機の客室に関する部署でキャリアを積む。2009年、整備本部技術部客室技術チームに着任し、航空各付け会社SKYTRAX社からの5つ星獲得や「Cabin Cleanliness」獲得に尽力。2015年より現職(Web: ana.co.jp)
おじが航空会社に勤めていたことから航空会社に興味があり、整備士としてANAに入社しました。航空系専門学校を出た同期たちと大学で情報処理を学んでいた私とでは、入社時点で航空機に関する知識は雲泥の差で、不安だったことを覚えています。しかし、経験と知識を積むうち、航空機の安全安心という使命に働きがいを感じるようになりました。
– 抜本的な改革で、トップ航空会社の仲間入りに
入社以来、長く携わってきたのは客室技術、つまりお客様が過ごすエリアに関する部署です。2006年からは、国際線の運航便の客室を担当。この頃から、飛行中に客室で起きた不具合のデータを集めて分類したり、他社を研究したりしては、客室の快適性のために何かできないか?と考えるようになりました。当時、ANAは航空会社の格付け会社から、長く4つ星を獲得していたのですが、最高の5つ星はなかなか取れなかったのです。定時出発率や到着率では既に世界のトップクラスの仲間入りはしていましたが、客室の品質に改善の余地があることが5つ星に至らない理由の一つでした。
08年頃、社を挙げて5つ星を目指すべく、抜本的に客室を変えるプロジェクトが立ち上がり、そのメンバーになりました。この異動は転機ですね。しかし、いざ自分でやるとなると、本当に大変で…。
航空会社によって客室の仕様は全く異なるので、世界共通の「良い客室」の指標や定義って存在しないんです。そこで、ANA独自の快適な客室のための指標を作ることにしました。数十年前に作られた客室整備プログラムの一つ一つを検証した後、新しいプログラムを作ったり、座席のテーブルが傾くとか、イヤホンの音が鳴らないなどの客室で発生する不具合を見える化して一定率まで下げていったりしたのです。客室のため、組織体制も変えました。社を挙げての取り組みで協力は得やすかったのですが、結果を出さねばならないプレッシャーは相当なものでした。ですが、数値や指標が見えたので、関係部署が一丸となって改善できたと思います。
そしてついに12年、5つ星を獲得。さらに翌年には世界で最も客室のきれいな航空会社に与えられる「Best Cabin Cleanliness」も受賞したのです。今までの努力が認められたと、これまで働いてきて一番うれしかった瞬間でした。
– 駐在50周年に願うこれからの50年
15年、Boeing内に事務所を置く現在の部署に異動しました。ここでは、航空機の新規発注と進捗や納期管理、点検支援などを行います。航空機は車と違い、製造段階からメーカーと航空会社が共に作り上げます。Boeingは機体を作るプロ、我々はお客様や乗務員のニーズを知るサービスのプロとして、共に機体を作ったり、こんな機体が必要であると要望を出したりするわけです。
弊社は、ここに駐在を置いて今年で50周年になります。767、777は共同で技術開発、787はローンチカスタマーとして早い段階から深く開発に関わりました。また、私の着任以来、39機もの機体をBoeingから受領。こうしたことから、両社の関係の深さが分かるかと思います。今は、ANAとBoeingが次の50年も良い関係でいられるようにと心から願っています。
▲ 航空機を受領する際に行われる調印式での一コマ。「ここから安全高品質な機体を日本に届けられるのは技術者冥利に尽きる」と久野さん。
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