シアトルの生活情報&おすすめ観光情報

【私の転機】Café Juanita ペイストリー・シェフ 峰 順子さん

最新インタビュー & バックナンバーリスト »

シアトルやポートランドで活躍する方々に人生の転機についてインタビュー

料理界のアカデミー賞とも言われるジェームス・ビアード賞。今年、同賞のセミ・ファイナリストにノミネートされた、Café Juanitaのペイストリーシェフ、峰さんに転機をうかがいました。(2016年11月)

Café Juanita ペイストリー・シェフ 峰 順子さん
峰 順子(みね・じゅんこ)
徳島県出身。シアトルでの語学留学を経て、サンディエゴの大学で心理学・アートを専攻。大学卒業後、サンディエゴとロサンゼルスの会員制クラブやホテルでペイストリー・シェフ、クックとして勤務。2015年からカークランドの人気レストランCafé Juanitaのペイストリー・シェフ(パティシエ)を務める。 www.cafejuanita.com
www.junkomine.com
写真:Rika Manabe Photography

渡米のきっかけはシアトルでの語学留学です。3年ほど滞在し、帰国して地元で就職。でも、大好きなアメリカでもう一度挑戦してみたくなり、サンディエゴの大学に進学することにしました。
 
パンやお菓子を本格的に作るようになったのはこの頃から。友人の紹介で、大学とは別に社会人向けのクラスでパンやお菓子作りを学ぶようになり、のめり込んでいったんです。大学を卒業する頃には知り合いのレストランでお菓子作りを手伝うように。卒業後は、ペイストリーシェフとして会員制クラブに就職しました。
 
その後、ビバリーヒルズのホテルに転職。これら2つの職場で感じたのは、私自身は仕事で作る着色料たっぷりのケーキを食べたくないし、もっと自然で、できるだけ地元の食材を使いたいということ。昔住んだシアトルならそれができそうだし、恋しい気持ちもあったので、引っ越すことにしました。

– 手作り酵母のヒントを得たラミ島
ラミ島のレストランに就職すると、ここのシェフたちの、自らの農場で採った野菜や、地元漁師から仕入れた魚介類を使うという、地産地消かつ、サステイナブルな姿勢に刺激を受けました。そんな環境の中、自分には何ができるか?と考え、思い付いたのが、地元の野草から酵母を作り、パン作りに使うというアイデアです。そして、埼玉県のとあるパン屋で酵母について学ぶため、修行に行きました。転機でしたね。でも、手作り酵母でパンを作る話はレストランの都合でなくなってしまったんです。
 
それでも私は、酵母にますます熱中し、ついにはシアトルの酵母の研究所に通うほどになりました。この研究所は糖尿病の研究機関に属し、父が患う糖尿病に、私の作る酵母が役立つのではとの思いもあったんです。研究所で酵母のDNAなどを調べているうち、私もここで働きたいと思うように。ただ、いち料理人の私が、研究所で正式に働くには、莫大な時間と労力が必要で、非現実的でした。
 
レストランでは自分のパンを作れないし、研究所でも働けない。将来を悩んでいるときに見つけたのが、Café Juanitaのペイストリーシェフの求人です。今までは誰かに手作り酵母を使ったパンの話をしても「面白そう」で終わっていましたが、オーナーシェフのホーリーは「ぜひやろう」と言ってくれたんです。やっと手作り酵母のパンや、自然な素材を使ったデザートなど自分の作りたいものが作れるようになりました。

– 賞の受賞と、 これから作りたいもの
働き始めて数カ月後、料理専門誌から取材を受けたり、ホーリーからアドバイスを得て酵母パンを使ったデザートを作ってメニューに加えたり、イベントでも披露したりもしました。そして、今年2月にジェームス・ビアード賞のセミファイナリストにノミネートの一報が…。受賞には至りませんでしたが、自分のやってきたことが認めて頂けてうれしく、お世話になった人たちに恩返しできたかなと思います。
 
今後は、自分なりに野草などを研究し、それらを使って何か作りたいですね。また、もっと地元食材を使って農家をサポートするとか、地域にも体にもやさしくて、おいしいものが作りたいです。

Café Juanita ペイストリー・シェフ 峰 順子さん
▲ Café Juanitaでは、ペイストリーシェフとして全てのパン、デザートを手掛けています。
 
*情報は2016年11月現在のものです