シアトルやポートランドで活躍する方々に人生の転機についてインタビュー
■ さまざまなアウトドアブランドがひしめくポートランドで日本のアウトドアメーカー、モンベルが奮闘しています。ポートランド店の店長、富山和宏さんに、これまでの転機をうかがいました。(2015年12月)
1980年、埼玉県生まれ。大学卒業後、富山県のリゾートホテルに就職。2004年から約2年間にわたり、北南米大陸を中心に自転車旅行や登山、登山技術の習得などアウトドア生活に打ち込む。2006年9月、株式会社モンベルに入社。2008年、コロラド州のボルダー店に異動。2013年10月よりポートランド店オープンにつき現職。
高校時代に先生から聞いた北海道のツーリング体験談が面白かったので、大学1年の夏に自転車で北海道旅行をしたんです。そこで自転車旅行にハマり、大学在学中は日本国内外を自転車で走りました。大学卒業後は働いてお金を貯めたら海外旅行に行こうと、富山県の立山黒部アルペンルートのホテルに就職。2年後、予定通り退社すると、自転車で世界一周を目指しアラスカを発ちました。
ヒッチハイクも織り交ぜながら約4カ月でメキシコまで南下。同国最高峰、標高5636メートルのオリサバ山登山が転機になりました。登山の面白さに目覚め、そこで自転車旅行は中止に。道中、カナディアンロッキーで見かけた登山学校に入ろうと思い、ワーキングホリデービザを取得し、カナダに行くことにしました。山の魅力は、頂上からの景色の美しさと達成感、たとえガイドと言葉が通じなくても感動を分かち合えるところです。
登山学校では道のない山や氷河の歩き方などを学びました。修了後は植村直己さんも登頂した南米最高峰アコンカグアを登るなど南米を旅行。当時、日本の友人は皆働いており、自分はいつまでこんなことをしているんだろう?と思うこともありましたが、体力のある今のうちに納得いくまで旅行や登山をしたい思いの方が強かったです。
– 就職のきっかけをくれた モンベルのテント
パタゴニアでまた転機が訪れます。旅程が似ていて各地のキャンプ場で出会ったチリ人から、私の愛用するモンベルのテントを見ては「こんなテントは見たことない。素晴らしい、ぜひ売ってくれ」と言われ続け、まだ旅の途中にもかかわらず根負けして売ったんです。そこで、南米には安く高品質なアウトドア用品が無いと気付きました。日本のテントが世界に広まれば面白いと思ったんです。
ホテルを辞めて約2年。資金も底を尽き始め、将来を考えるように。テントの件が頭にずっとあり、モンベルの入社試験を受けたのです。面接で日本の高品質なアウトドア用品を世界で売りたいと話すと採用になりました。2006年に入社し、08年にコロラド州ボルダーへ異動。自分に海外勤務はまだ早いと不安もありましたが、チャンスは今しかないと、話をもらって数時間後には「行く」と返事をしていました。
– アウトドアグッズを 提供する仕事の魅力
最初の1年は日本人店長の下で働き、それ以降、職場に日本人は私1人だけです。アドバイスをしてくれる人もなく、一つ一つ経験を重ね、模索しながらやってきました。時にはクレームもありますが、何が原因か顧客から聞くことが大切なのは、日米同じです。すぐ返品を受け付けるのではなく、顧客と話をし、メーカーとしてできることを考えながら対応すると、また戻って来られる方もいます。
13年、ポートランドに異動。競合店が多いこの街で新規参入の私たちは、軽量でコンパクトな高品質アウトドア用品を安く提供していることを認知してもらうのが今の課題です。日頃から自社製品を使っています。使わないと分からないことも多いので。仕事が趣味に生き、趣味が仕事に生きるのはこの仕事の魅力です。将来的にシアトル、カナダ、南米と、モンベルが全世界に広がれば面白いですね。
▲ メキシコで最も高い山、オリサバ山の山頂にて。ここで登山に開眼しました
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