特別な日のディナーの主役と言えばやっぱり肉。とりわけステーキは人気の料理だけれども、シンプルゆえに難しいのも事実。今回は、自宅で作る絶品ステーキの焼き方やソースに加え、こだわりの精肉店や肉の選び方、グッズまで、奥深くステキなステーキの世界をご案内します。今年のホリデーディナーは、おいしいステーキを極め、ゲストを驚かせましょう。(ライトハウス2023年4月号 特集「今宵のディナーを格上げ ステキなステーキ」より)
アメリカの牛肉の部位の特徴や見分け方 ~ おいしいステーキは肉を知るところから
ステーキを焼く前に、おいしい牛肉について学びましょう。今回は牛肉のスペシャリストであるATM Internationalの渡邉さんに解説していただきました。
アメリカ産牛肉の各部位の特徴を教えてください
【牛肉の部位】アメリカの牛肉の基本の大きな分け方は肩(Chuck)、ロイン(Loin:背中)、モモ(Round)、バラ(Brisket、Short Plate、Flank など)の4種類。一方、日本はもっと分け方が細分化され複雑です。例えば肩(Chuck)は、日本ではザブトン、ハネシタ、クラシタと分けられます。
ロイン (Tenderloin, Rib Eye, Striploin)
背中側( ロイン:Tenderloin, Rib Eye, Striploin)はステーキによく使われる部位で、赤身のおいしさが重要です。Tenderloinは名前の通り柔らく、Rib Eyeは脂がジューシー。その中間でサッパリとミディアムレアで食べるならStrip Loinが良いでしょう。ちなみにStrip Loinのステーキを、アメリカではNY Steak、日本ではサーロインステーキと呼びます。
肩(Chuck)
肩(Chuck)は味わいが深い部分。しゃぶしゃぶやすき焼きでよく使われます。少々硬いため、薄切りがちょうど良いのです。ロインパーツよりリーズナブルでおいしいので、最近はアメリカのステーキ店でもChuck Roll Steakを見かけることが増えてきました。ChuckのRib Eye側はRib Eyeによく似た筋肉で、Rib Eyeと同じくらい柔らかくておいしい部分です。
モモ(Round)
モモ(Round)は切り落としやシチューによく使われる部位。Tri Tipもモモの一部で、サシが入って赤身もおいしいので、ミディアムレアにしてローストビーフやタタキでよく食べられます。また、モモの中で特別な部位がCoulotte。ブラジリアンBBQではPicanha、日本で「イチボ」と呼ばれる希少部位です。脂がジューシーで、ステーキにしてもイケる通な部位だと個人的には思います。
Brisket、Short Plate
日本で「バラ」と呼ばれるお腹にはBrisket、Short Plateなどがあり、コリアンBBQでよく出てくるのはこの部位です。また、Shor Ribsは日本の「カルビ」に当たり、1頭から5、6ポンドしか取れない希少部位になります。
おいしい牛肉の見分け方、選び方
牛肉は切って数分後に赤く発色しますから、発色の良いものを選びましょう。なお、店頭でラップがくっついた部分は黒くなりますが、品質に問題はありません。そして、できるだけドリップが少ないものを選んでください。
また、きれいに成形された肉を選びましょう。パッと見てきれいな肉は、肉をよく分かっている人がカットしている可能性が高く、そのような人が働いてる店は、提供する肉にも期待が持てます。また、肉は重さによって金額が変わりますから、脂身や硬いスジなどを除いて成形してある方がリーズナブルだとも言えます。
アメリカの牛肉のグレード(等級) 表記で見かける「USDA Prime, Choice, Select」とは?
アメリカの牛肉のグレード分け(等級)の一つである「USDA Prime、Choice、Select」は、肉のマーブリングスコア(サシの入り具合)を示します。赤身の質、サシの入り方、脂肪の色などのデータを搭載したUSDA(アメリカ合衆国農務省)の専用カメラを使い、牛の解体時にRibEyeとStriploinを撮影し、Prime、Choice、Selectの三段階に自動で振り分けるのです。つまり、同じ農場で同じように育てても、Primeになる牛もいればSelectになる牛もいるわけです。Primeの発生率は低いため、価格も上がります。
Prime、Choice、Select それぞれ味は違う?
PrimeやSelectは味の違いではなく、脂肪の付き方の違いを指します。肉の味や香りは餌に左右されるので、気になる方は餌を確認してみてください。例えばGrass FedやCorn Fed、Grain Fedなどがあります。とはいえ、やはりPrimeは美しいサシが入っていますから、脂の香り、ジューシーさ、柔らかさはChoiceに勝ります。高級感もあるので、ステーキを食べるときや、見た目の良い肉をゲストに出したいときはPrimeの出番です。煮込み料理ならChoiceで十分でしょう。
【取材協力】ATM International USA, INC. 長きにわたりシェフとして活躍し、数々のレストランの立ち上げに関わる。その後、American Wagyu の奥深さに引かれ、American Wagyu「和州牛」の生産販売を行うATM International USA, INC. に入社。現在は全米のレストランへのコンサルテーションなども行なう。 TEL : 424-246-2892 |
【特集「今宵のディナーを格上げ ステキなステーキ」の掲載内容】
- 1ページ|アメリカ産牛肉の部位やグレード 〜 おいしい牛肉の見分け方、選び方 »
- 2ページ|アメリカ産和牛、American Wagyuとは?日本の和牛との違い »
- 3ページ|アメリカの牛肉で焼く!ステーキ・レシピ、おすすめグッズ、精肉店 »
参考記事:アメリカの牛肉(アメリカン・ビーフ)~ 種類、部位、焼き方
知っているようで知らない牛肉の知識。日本のステーキ店や焼き肉屋で経験を積んだ牛肉のエキスパートであるシェフ、中川さんに解説してもらった。(2011年9月の特集「おいしい牛肉が食べたい!」より。情報は執筆当時のもの)
アメリカの牛肉のランクと種類
アメリカ合衆国農務省(USDA)によって霜降り具合などからランク付けされ、上からプライム、チョイス、セレクト、その下にノーロールがある。アンガス種が最もポピュラーで、ヘレフォード種、ショートホーン種と並び、世界の3大牛とされる。
牛肉の選び方
牛肉を買う際は、色はきれいか、日付が古くないか、余分な脂肪がないかをチェック。また、ホルモン剤使用の肉を摂取し過ぎると体の発育だけが年齢以上に進むという問題が指摘されているので注意を。
牛肉の部位(英語と日本語)と調理方法
牛肉の部位(日本語) | 牛肉の部位(英語) | 適した調理方法 |
---|---|---|
肩ロース | Chuck | 煮込み・シチューステーキ、ロースト、焼肉(ひき肉によく使われる) |
胸肉 | Brisket | 煮込み |
リブロース | Rib Eye | 煮込み・シチューステーキ、ロースト、焼肉 |
カルビ | Short Rib | ステーキ、ロースト、焼肉 |
バラ・ハラミ | Plate | 煮込み・シチューステーキ、ロースト、焼肉 |
ショートロイン | Strip Loin / New York | ステーキ、ロースト、焼肉 |
フランク | Flank | 煮込み・ステーキ、ロースト、焼肉 |
サーロイン | Sirloin | ステーキ、ロースト、焼肉 |
ヒレ | Tenderloin | ステーキ、ロースト、焼肉 |
上ロース | Top Sirloin | ステーキ、ロースト、焼肉 |
ロース | Bottom Sirloin | ステーキ、ロースト、焼肉 |
ランプ | Round | 煮込み・シチュー(ひき肉によく使われる) |
もも | Shank | 煮込み・シチュー |
牛肉を焼いて食べる時の5つのポイント
その1 熱したフライパンに少量の油を引き、強火で表面を焼いて肉汁を閉じ込めてから、少し火を落としてじっくり焼くこと。
その2 フライパンを前後に動かして肉をずらしながら焼くと全体にうまく火が通る。
その3 上質の肉の牛脂を油の代わりにして焼くとさらにおいしくなる。
その4 目安として、肉の中心温度が120~130°Fでレア、140~150°Fでミディアム、160°F以上でウェルダン。
その5 肉の筋に対して垂直に切ることで、噛んだ時に軟らかく感じる。
<情報提供>
■ Café Soleil
9999 Harbour Pl., #105, Mukilteo, WA 98275
※同店は2018年までに閉店しています。