日米では、法律や条例が大きく異なることがあります。また、アメリカ国内でも、連邦法、州法、さらに郡や市の条例などがあり、住む場所によってルールが違うことがしばしば。今回は、アメリカの中でも日本人が多く住む西海岸とハワイにおける、子どもとペットにまつわるルールについて、各州の専門家に話を聞いてみました。
※本特集は、特定の行動を『ライトハウス』が推奨するものではありません。
※お住まいの地域の最新の法律や条例に関しては、ご自身で確認するか専門家にご相談ください。
アメリカにおけるペットに関するルール
Q1:犬にはどのワクチンが必要?怠ると罰則はある?
狂犬病のワクチンに関しては、ほとんどの州で何かしらの法律を設けていますが、対象となる動物は全ての動物(アリゾナ州、ネブラスカ州)、犬のみ(カリフォルニア州)犬・猫・フェレットの3種(オレゴン州、ワシントン州、ニューヨーク州)など、州によってさまざまです。なお、ハワイ州は狂犬病の発症例がないため、ワクチン接種は義務ではありません。これは特殊な例と言えるでしょう。ペットと一緒の旅行や引っ越しの際には注意が必要です。
【ワシントン州】
コア・ワクチンにはジステンパーウイルス、パルボウイルス、アデノウイルス、パラインフルエンザに対する混合ワクチンと狂犬病のワクチンが含まれます。混合ワクチンは子犬時に接種し、その後は1~3年ごとの接種が推奨されています。キング・カウンティーでは、6カ月以上の全ての犬に狂犬病ワクチンの接種が義務付けられています。
ボルデテラ、レプトスピラ、犬ライム病などのワクチン接種は、飼育状況により推奨されています。狂犬病ワクチンが未接種の場合、罰則が科される可能性がありますが、それ以外のワクチンの未接種は罰則の対象外です。
(回答:源本獣医師)
【オレゴン州】
オレゴン州法では、全ての生後3カ月以上の犬は6カ月になるまでに狂犬病ワクチンの摂取を義務付けています。また DAPPと呼ばれるコア・ワクチンや、ボルデテラ、レプトスピラ、犬ライム病に対するワクチンの摂取が推奨されています。
なお、マルトノマ・カウンティーでは、全ての猫にも狂犬病ワクチンの摂取を義務付けています。
(回答:編集部調べ)
【カリフォルニア州】
カリフォルニア州では、生後4カ月以上の全ての犬に狂犬病のワクチン接種と登録を義務付けており、怠ると罰金・刑罰を科される可能性があります。また、ロサンゼルス・カウンティーの法律では、マイクロチップ、去勢・避妊も義務付けられ、去勢・避妊をしていない犬のライセンス料は、している犬よりも割高です。なお、接種しないことが違法になるワクチンは狂犬病のみです。
DAPPという混合ワクチンは法律上義務付けられていませんが、コア・ワクチン(致死的な病気を防ぐため接種すべきワクチン)であり、重篤な病気から愛犬を守るため必ず接種してください。
(回答:アラン獣医師)
【ハワイ州】
犬のワクチンは、早くて生後6週間でスタート。8、12、16週間目に続けて注射し、16週間目以降は1年に1回です。ハワイ州で必要なのは、ジステンパー、パルボ、アデノウイルス、パラインフルエンザで、これらは大体1本の注射に含まれています。
コア・ワクチンに狂犬病ワクチンも含まれますが、ハワイ州では必須でありません。また、ハワイの土地柄、レプトスピラは受けるべきです。 ハワイ州ではワクチンを接種しないことによる罰則はありません。とはいえ、予防はできても、かかったら治らない、命にかかわる病気があることは覚えておきましょう。
(回答:野田獣医師)
Q2:リーシュなしで犬の散歩をしてもいい?
細かくルールを決めている州がある一方、フロリダ州やジョージア州のように、リーシュに関する法律がない州も。リーシュのルールは主に郡や市が細かく定めることが多いようです。まずは、住んでいる地域のルールを確認しましょう。
余談ですが「リトラクタブルのリーシュは犬の制御が困難で、リーシュが伸びきった衝撃で犬がけがをしたりリーシュが絡まったりする恐れから、あまり推奨しません」とAMCのアラン獣医師は話しています。
【ワシントン州】
キング・カウンティーでは基本的に犬のリーシュなしでの散歩は違法としています。ドッグパークなど、リーシュなしでの散歩が可能な区域が公園内に設けられていることがありますが、公園の指定区域以外やハイキングトレイルなどではリーシュを付けての散歩が義務付けられています。
ノーリーシュでの散歩時、飼い犬同士または野生動物による咬傷、異物や毒物の摂取が多々発生していることから、リーシュを付けての散歩が重要です。
(回答:源本獣医師)
【カリフォルニア州】
リーシュなしで公道、公園(ドッグパークを除く)、その他の公共の場での散歩は違法で、飼い主は6フィート以内のリーシュを用いて犬の行動を制御する必要があります。
万が一、リーシュなしの犬が、リーシュにつながれた犬に近付いてけがをした場合、事故の責任はリーシュなしで散歩をさせた飼い主側にあり、怪我をさせたリーシュ付きの犬と飼い主に非は認められません。ペットを守るためにもリーシュを付けて散歩をしましょう。
(回答:アラン獣医師)
【ハワイ州】
州法では、公道、校庭、その他の公共の場所で犬はリーシュにつなぐとしています。私有地に、その土地の所有者の同意なしで入る場合も同じです。サービスドッグ、警察犬などを除き、リーシュは8フィート以下とすること。これらの違反の初犯は50ドルの罰金、再犯は最大1000ドルの罰金または30日の拘留です。多くの公園で犬は入園禁止ですが、一部の公園はリーシュ付きなら可、またはオフリーシュを可としています。公園のサインを確認してください。
(回答:ホノルル警察)
Q3:車にペットが同乗。どこにどうやって乗せれば良い?
法律とは関係なく、安全のため、ペットはエアバッグの近くや車の運転の妨げになる場所に近付けさせないようにしましょう。
また、車にペットを残したまま駐車することも止めましょう。窓を少し開けてもあまり効果はなく、車内の温度はすぐに高温に達します。
例えば、ロサンゼルス・カウンティーでは、ペットを誰もいない車に残すなど、ペットの健康を害することは違法としています。駐車中の車に残された動物が危険な状態になった場合、オレゴン州やカリフォルニア州の法律では、レスキューのために車を壊しても犯罪にならないとしています。
【ワシントン州】
州法では、「動物を危険にさらすような運搬を禁止する」とし、それに反すると罰されることになっています。
ペットがトラックの荷台から転落して受傷、時には死亡する例もあります。おそらく、固定したケージやペットキャリアー内にペットを入れておくことが、最も安全であると思われます。ケージやキャリアーの持ち込みが不可能な場合は、市販のペット用のシートベルトなどを用い、ペットの動きを制限しておくことをお勧めします。
(回答:源本獣医師)
【カリフォルニア州】
運転手が膝の上に犬を乗せて運転すると、不注意運転でチケットを切られる可能性があります。また、ピックアップトラックなど屋根のない荷台に犬を乗せる場合は、荷台にクロス・テザー(荷台の両端にひもを通し、その真ん中に犬用の短い紐を付ける)をするか、トラックのサイド(あおり)が46インチ以上の高さでないと違法とみなされます。クロス・テザーをする際、犬は首輪よりハーネスを付けて、ハーネスに紐をつなぐ方が安全です。首輪では、急カーブや事故で首を絞める可能性があります。
また、California Highway Patrolは、小型犬や猫はクレートに入れることを推奨しています。もしクレートに入れない場合は、犬や猫が窓の外に顔を出せないようにし、ハーネスを付けて後部座席のシートベルトに装着しましょう。
(回答:アラン獣医師)
【ハワイ州】
ハワイ州では、移動中の車内では、犬の動きを抑制しなければなりません。移動中の自動車内で動作を抑制していないと、けがや死亡、または事故を起こす危険があります。犬を膝の上に乗せて運転すると97ドルの罰金、移動中の車内で犬が自由に動いていると57ドルの罰金です。常に動物の安全を第一に考え、自動車内ではケージに入れるか、ハーネスやベルトで留めておきましょう。
(回答:ホノルル警察)
ペットの移動のルールは、検討中や議会で審議中の州も多数。
移動時はクレートの固定も忘れずに!
Q4:猫を登録しないで飼ってもいい?
多くの自治体では登録と併せてマイクロチップを入れておくことを義務付けまたは推奨しています。VCAの野田獣医師は「マイクロチップには必ず現住所と電話番号を登録すること。アダプトした猫のチップの番号が分からなければ、獣医にスキャンしてもらい、チップの会社に電話をすれば、情報をアップデートできます」とアドバイスしています。
【ワシントン州】
キング・カウンティーでは、生後8週齢以上の猫の登録が義務付けられています。違反が発覚すれば、罰則の対象です。登録しておけば、迷子になった際に飼い主の特定につながることもあるでしょう。
(回答:源本獣医師)
【オレゴン州】
オレゴン州法は犬の登録を義務付けていますが、猫には言及していません。猫の登録は、マルトノマ・カウンティーでは必要ですが、ワシントン・カウンティーでは必要ないなど地域によって異なります。
(回答:編集部調べ)
【カリフォルニア州】
ロサンゼルス・カウンティーでは、生後4カ月以上の猫は登録と狂犬病のワクチンの接種を義務付けています。怠ると罰金・刑罰を科せられる可能性があります。また犬と同様、マイクロチップと去勢・避妊も義務付けており、去勢・避妊をしていないと登録料は割高です。
(回答:アラン獣医師)
【ハワイ州】
ハワイ州の法律では、猫はIDが必要です。ただ、IDだけではなく、迷子になったときのために、マイクロチップも入れておいた方が良いでしょう。
(回答:野田獣医師)
【 ペットの虐待を見聞きしたら?】
以下の機関へ電話をしましょう。
● King County Animal Control (キング郡)
TEL : 206-296-7387
● Oregon Humane Society
TEL : 503-285-7722, ext. 214
● The Humane Society of the United States
Web: www.humanesociety.org/forms/contact-animal-rescue-team
【 アメリカのさまざまなルール】
合衆国憲法(Constitution)は国の成り立ちと基礎を示すもの。連邦法(Federal Law)はアメリカ合衆国市民とアメリカ居住者全員に適用される法を定めたもので、州法(State Law)は州内の居住者に適用される法を定めたものです。
合衆国憲法第6条第2節にある最高法規条項によれば「合衆国憲法や連邦法と州の憲法や法律が矛盾する場合には、合衆国憲法や連邦法が優先する」(出典:アメリカンセンタージャパン)が原則ですが、州法が優先されることもあります。州の労働基準法が設定する最低賃金が連邦法よりも高く設定されている場合がその良い例です。州法の下に、郡法(County Law)、市法(Municipal Law)などがあります。
監修:宮本ガン美紀子弁護士
3111 Camino Del Rio N. #400, San Diego
● ワシントン州:
源本泰士獣医師(Animal Emergency & Specialty)
TEL : 425-827-8727
Web: aesvets.com
● カリフォルニア州:
Dr. Alan Schulman(Animal Medical Center of Southern California)
TEL : 310-575-5656
Web: animalmedcenter.com
● ハワイ州:
野田夏奈獣医師(VCA University Animal Hospital) (Q1、4)
TEL : 808-988-2111
Web: vcahospitals.com/university-hi
● ハワイ州取材協力:
Honolulu Police Department(Q1、3)
Web: www.honolulupd.org